血栓症の診断や血栓症を防ぐ食品の探索に有用な測定法の開発について栄養学部の山本名誉教授らがまとめた論文がオンライン英科学誌に掲載されました
2022/02/03
山本順一郎栄養学部名誉教授らの研究グループは、脳卒中、心筋梗塞(こうそく)、運動時に起こる突然死、がん患者で頻発する血栓症の診断などに最適と考えられる「評価装置」を使った血栓のできやすさの傾向を評価する方法と、この「評価装置」を使って血栓症を防ぐ上で有用な食品を評価した研究内容をまとめた論文をオンラインの英科学誌「フューチャー・サイエンスOA」(※OA=オープンアクセス)に発表しました。
この「評価装置」は血小板反応性・内在性血栓溶解能測定装置Global Thrombosis Test (GTT)。GTT測定法の特徴は、①装置がベッドサイドで使用できるコンパクト②採取した血液に抗凝固剤を一切加えないで専用のチューブに注入するだけで簡便に評価できる③血栓のできやすさが血栓形成能(=血小板の反応性)と血栓溶解能のどちらが原因となっているかを明らかにできる――の3点です。血栓症を予防するのに有効な食品の探索や開発にも最適だと記述しています。
がん患者では、血栓症に起因する死亡の割合の多いことが臨床的に認められますが、これまでの血液検査の方法では、がん患者の血栓症をうまく予測することができませんでした。GTT測定法では、がん患者における血栓形成の亢(こう)進状態を検出できることが分かりました。最近、新型コロナウイルスの感染患者では血栓症が起こりやすいことが報告されており、GTTは新型コロナウイルス感染症対策にも役立つ可能性にも言及しています。
また、論文の中では、日本人は、英国人と比較して血栓ができにくいものの、できた血栓が溶けにくい傾向にあることが紹介されています。脳卒中や心筋梗塞を予防するためには、血栓を予防する効果のある野菜や果物を摂取し適度な運動をすること、運動時の突然死を防ぐためには、定期的に血栓形成能を測定して各自に適した強さの運動をすることが良いと勧められています。
本論文は、村上正裕・大阪大谷大学薬学部教授▽乙井一典・神戸大学医学部附属病院総合内科助教▽井尻吉信・大阪樟蔭女子大学健康栄養学部教授▽清水宗茂・東海大学海洋学部准教授▽鵤木秀夫・兵庫県立大学国際商経学部教授▽塩山 渉・滋賀医科大学医学部附属病院循環器内科助教▽ケール・S・サカリアッセン博士(元オスロ大学教授、スウェーデン国立生命科学研究所委員)との連名で作成されました。
論文(英文)の掲載サイトはこちら
ラット細動脈における血栓形成過程の動画はこちら
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山本名誉教授が創立した「抗血栓食研究会」のホームページはこちら