2008年度 神戸学院大学学位記授与式 学長告辞
2009/03/26
卒業おめでとう―社会への飛躍―
神戸学院大学
学長 岡田芳男
本日ここにご来賓の皆様や保護者の皆さまにご列席いただき「2008年度神戸学院大学学位記授与式」を挙行できますことを共に喜びたいと思います。
ただいま学士の学位記、修士の学位記、法務博士の学位記、博士の学位記を授与された皆様、それぞれの分野で研鑽をつまれ、今日を迎えられましたことを心からお祝い申しあげます。また、満開の桜の花の下、手を繋いでの入園式から今日までお子様の成長を見守り、支援してこられました保護者の皆さまには堂々としたお子様を目にし、安堵感に加えて眩しさと誇らしさを感じておられるのではないかとお察し申し上げます。
本学は1966年に日本人の体質改善と健康増進を目的にして栄養学部が設置されました。当時伊川谷の畑の中にある学舎は堂々と聳えるものではありませんでしたが、創設者である森茂樹博士が掲げた建学の精神「真理愛好・個性尊重」は確固としてぶれることなく、理想の大学像は「学問を通じて深い人生観・世界観を培い、もって国家最高の教育機関としての使命を果たす」という高邁なものでした。その後社会の要請に応えて、法学部、経済学部、薬学部、人文学部、経営学部、総合リハビリテーション学部さらに法科大学院が順次設置され1万名の学生を擁する総合大学へと発展を続けています。その間、建学の精神は脈々と受け継がれ、理想の大学像を追い求めて来ました。2007年4月には神戸ポートアイランドに素晴らしいキャンパス(KPC)を開設しました。立地条件の異なる有瀬キャンパス(KAC)と長田キャンパス(KNC)の3つのキャンパスで教育・研究を展開し社会に貢献する「新生神戸学院大学」がスタートして2年になります。皆さんは新しい神戸学院大学を創りだした主役であることに自信と誇りを持って下さい。薬学部卒業生は4年制薬学部の最後の卒業生であり、総合リハビリテーション学部卒業生は最初の卒業生となる記念すべき学位記授与式となりました。
本学はすでに6万名の卒業生を輩出し、全国に16の同窓会支部を有しております。皆さんの先輩は国内のみならず国外でも活躍しています。皆さんも先輩に続きそれ以上に頑張ってくださると信じております。
ただいま、各学部において優秀な成績を挙げた学生と、課外活動において全国的な活躍をした学生に対し神戸学院大学学長賞を贈りました。また、課外活動を通じて多くの成果を挙げた学生に対しても、教育後援会会長と同窓会会長から賞が贈られました。受賞された皆様の継続的で地道な努力に対し敬意を表します。他の卒業生も他人の個性を尊重しながら日々努力されたことと思います。聴覚に障害を持ちながら、それを克服して今日を迎えた学生がおります。その勇気と努力に敬意を表します。それを支えて日常生活を共にされました周囲の学生の友情に神戸学院大学の伝統としての明るさを感じますと共にそのような大学文化を誇りに感じております。留学生の皆さんにもエールを送ります。神戸学院大学で青春を送られ、多くの友人ができたことでしょう。言葉の壁の他に円高などによる経済的な困難にも遭遇され外国人ならではの苦労も多かったことと思いますが、それを見事に克服して日本文化の吸収にも力を注がれた皆さんは、今後日本との懸け橋として重要な存在です。活躍を期待しています。
さて、ここで入学時の自分と今学位記を授与された自分を比べてみてください。入学時には到底思い描けなかった自分の大きな成長に気づき、大学での生活が走馬灯のように思い出されているのではないでしょうか。多くの友人が出来ました。定期試験を前にして友人と徹夜したこともあったでしょう。ゼミでは熱心な討論を繰り返したでしょう。卒業論文作成のため文献を探し、研究活動に邁進した学生もいることでしょう。課外活動では先輩や後輩と共に自分の限界まで厳しい修練を続けたことでしょう。自分のクラブが3部から2部へあるいは2部から1部への昇格に際し、共に嬉し涙を流したこともあったと思います。そのような学生生活があなた方の人間性を豊かにしてきました。自信を持って社会に雄飛してください。修士、博士の学位記を授与された方は文献を読み研究に没頭したことを思い出すでしょう。この経験を活かし社会で活躍してください。2008年度に行われた新司法試験では18名が受験して6名の合格者を輩出しました。合格者の中には本学法学部出身者がいます。今日学位記を授与された法務博士の皆さんも司法試験に向かっての猪突猛進を期待します。
社会は皆さんの力に期待しています。社会に何かを期待するのではなく、皆さんの力を十二分に発揮して社会の発展に貢献してください。昨年の金融危機に端を発した世界的な大不況の中にあり、日本も厳しい社会情勢にあります。1929年の世界大恐慌も金融危機に端を発しています。金融危機が実体経済に大きな影響を与えて経済不況をもたらした点で今回とよく似た現象です。このような社会に船出するのは皆さんにとって大きな試練と考えてください。人生は与えられるものではなく自分で開拓し作り上げていくものです。「艱難汝を玉にす」という言葉があるように、どんな困難があろうとも常に最善を尽くすとの信念を持って事にあたってください。人間は単なるモノではなく、それぞれが精神を持っています。その精神はどこまでも高めていくことができます。高い志を持って日々精進して下さい。そんな中から「働く価値」がおのずから明らかになってくるでしょう。何事も最初から成功が約束されていることはありません。皆さんが成功を思い描き努力を続けることにより展望が開けてきます。
西郷隆盛は「日常生活において人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして全力を尽くし、失敗などを他人のせいにせず、自分の努力が足らないことを反省せよ」と述べています。皆さんのこれからの生活にこのことばを紹介しておきます。
社会の現実に目を向けますと雇用問題、家族の崩壊、心の病、自殺などが目につきます。食品の偽装問題も後を絶ちません。紛争により多くの人命が失われています。海賊対策としてソマリア沖に自衛艦が派遣されました。地球温暖化が進み真夏日の到来も更新されました。環境対策には一刻の猶予も許されない状況です。日本国と国民の安全について真剣な議論を行うはずの国会議員に対する企業からの違法な政治献金についてのニュースが新聞やテレビを賑わしています。問題が発生するたびに新法を作って対処することでその場を取り繕ってきているのが現状です。法律を作る人が立派な人間でなければ何をやっても効果が上がらないことを示しています。重厚で思いやりのある日本を構築するため皆さんの力が求められていることを忘れないでください。
最近私たちに大きな衝撃を与えた出来事は、アメリカ国民が若き黒人大統領を選出したことです。オバマ新大統領はその就任演説で「なぜ約60年前には地元のレストランで食事を出してもらえなかったかもしれない父親の息子が、この上なく神聖な大統領就任の宣誓をするために今皆さんの前に立つことができるのか」とアメリカ国民あるいは世界の人々の自由を求める信念とその強さを述べています。そして彼は世界平和に向かっての柔軟な戦略、地球温暖化の脅威に立ち向かう姿勢、アメリカや世界の経済立て直しの固い決意などを表明しています。そのためChange(変革)を強調し、やれば出来る“Yes, We can.”と訴えています。皆さんには若い無限の力があります。オバマ大統領に負けないような正義の力を発揮してください。
今日、皆さんは大学とも多くの友人とも別れ社会人として出発します。健康に留意してください。「新しい神戸学院大学」の様子を見に来てください。大学は皆さんを歓迎します。嬉しい便りはもちろんのこと建設的な意見が寄せられることを待っています。皆さんの若い力が日本と世界の平和に寄与されんことを願って意を尽くせませんが告辞といたします。