「楽天ヴィッセル神戸」のチケット販売担当、芝さんが経済学部で特別講義しました
2020/12/17
本学と連携協定を結んでいる「楽天ヴィッセル神戸」のチケット販売担当、芝正幸さんが12月11日、経済学部の3年次生約100人にZoomで特別講義しました。
同社はサッカーJ1リーグの人気チーム「ヴィッセル神戸」を運営しています。芝さんは需給に合わせて入場料金を変動させる「ダイナミック・プライシング(以下はDPと表記)」を導入していることを中心に話しました。講義に先立ち、林ゼミ生9人でこの変動料金制について調べたことを発表しました。「市場の需給によって価格を変動させ、利益の最大化を図る価格戦略」だと定義付け、映画館のレイトショーやテーマパークの入場料金やホテルの宿泊料に導入されていることを紹介しました。
◆DP導入でチケット単価はリーグ1位
芝さんによると、昨年の同社の売上は114億円でJ1リーグの18チームの中で1位、このうちチケットの売上は12憶6,000万円あり、3位でしたが、平均チケット単価の4,359円は「断トツ1位」でした。DPを導入した2017年はチケットの売上は5憶1,400万円で、2019年までに2倍以上に伸びたことになります。2017年はイニエスタ選手の加入があり、その影響も大きいとは言え、変動料金制の効果がうかがわれる数字です。
芝さんは、詳細を語る前に商品とその値段には、①こだわりがないので安いほうを購入するもの②こだわりがあるので高いほうを購入するもの③これを買うしかないもの――の三つがあり、ヴィッセルのチケットはいずれが該当するかとクイズを出しました。
◆チケット売上を最大にするために価格を変えることが可能に
ヴィッセル神戸がDPを導入する前は、チケット売上を増やすには販売数を増やすしかなく、開催日、対戦相手などによる「(チケットが)売れる試合」を勝手には増やせないことが悩みの種だったといいます。導入後はチケット売上を最大にするために、価格を下げてたくさん売ったり、場合によれば価格を上げてでも完売させたりすることが可能になりました。
◆チケット価格上昇しても客の反発は少なく
DPが導入前には最上の客席「ヴィッセルシート」は6,000円でしたが、導入された7月にはイニエスタ選手の加入もあって8,000円を超え、8月には12,000円になり、最近では15,000円になることもあるようです。1試合あたりのチケットの売上、平均チケット単価も大幅に上昇しました。1試合あたりのチケットの平均売上はメインスタンドでDP導入前は2,000万円だったのが、導入後は4,000万円に倍増、1試合のチケット売上も以前6,000万円だったのが以後は最大1億2,000万円に上るとの報告でした。気になる客の反応ですが、「世の中の流れなので仕方ない」「本当に買いたい人が買えるようになった」「年間席を買っていて良かった」と、あまり反発は」ないようです。
話の終わりに商品の値段についてのクイズの回答があり、「以上の話からすると、どの答えも正しいと言えます」と正解を明かしました。
◆売れないチケットもファンづくりに活用
学生からは「売れないチケットを売る工夫は」と質問があり、芝さんは「無理して売るというより、チケットの使い方を工夫しています。ファンクラブの特典としてプレゼントするとか、ファンづくりに活用しています」と回答しました。司会を担当した林隆一准教授は「極めて興味深い内容で、聴いておられた先生方にとっても論文のネタがたくさんあったのでないでしょうか」とまとめました。
◆発表を終え、特別講義を聴いての学生の感想
最初に発表した溝田萌さんは「ダイナミック・プライシングという用語を初めて知り、当初はどんなものか全く想像がつきませんでした。(発表のために詳しく調べて)例えば旅行に行く時の飛行機やホテルの値段など身近なところに導入されていることがわかりました」とコメントしています。
次に発表した大下紗和さんは「新たに二つの点を知ることができました。一つは、AIに全て任せるのではなく、最終的にはサポーター感情を考慮して人が判断して価格を決めていることです。どれだけAIの技術が進化していても人の感情は人が一番理解しているため、最終的な判断には人の目が欠かせないと改めてわかりました。もう一つは、チケットが安ければ各試合の利益が見込めるわけではなく、売れる試合で利益を最大化することが重要だということです」とコメントしています。