グリーンフェスティバル第464回「観世流 能 『忠度』」を開催しました
2024/07/10
神戸学院大学有瀬キャンパスメモリアルホールにおいて6月22日、「観世流 能 『忠度』」を開催しました。今回は東京を中心に活躍する観世流・観世喜正氏(重要無形文化財保持者(総合認定))をシテに招き、充実した舞台が展開されました。グリーンフェスティバルで能を上演するのは2022年以来2年ぶりで約500人が公演を楽しみました。
冒頭、人文学部の中村健史准教授が『忠度』について解説しました。解説では、平忠度(たいらのただのり)とはどんな人物か、能『忠度』のストーリーや注目すべきポイントを伝えました。
『忠度』は、平安時代の終わりに活躍した平家の武将、平忠度にまつわる作品です。忠度は武術に秀でながらも、若いころから藤原俊成のもとで和歌を学び、高い教養を身につけていました。
ストーリーは2人の旅の僧が都を出て須磨のあたりにさしかかる場面から始まります。僧は須磨の浦にて木こりの老人に出会います。老人は平家の武将・平忠度の墓標である桜の木を紹介し、弔いを頼んで姿を消します。老人が普通の人ではないことを不思議に思った僧は、須磨の里の者に話を聞き、老人が忠度の亡霊であったことを知ります。
夜になると、僧のもとに忠度の亡霊が生前の姿で現れます。忠度は、生前、和歌に心をかけ、合戦のさなかに師・藤原俊成に託した歌が『千載集』に作品が選ばれたものの、朝敵の身ゆえ〝よみ人知らず〟とされたことを嘆きます。そして、一ノ谷の合戦で岡部六弥太に討たれた際のありさまを語ります。忠度は、名前を告げぬまま討ち死にしましたが、死後に箙(矢を背負う道具)の中にあった「行き暮れて 木の下蔭を宿とせば 花や今宵の主ならまし 忠度」という短冊が評判になったと話し、勇壮な舞姿を見せて消えていきました。六弥太との戦いの場面は、笛や鼓の音に息を合わせた迫力ある舞で表現され、会場は能の世界に引き込まれました。
公演のあと、来場者からは惜しみない拍手と共に「生の舞台は迫力がありました」「住んでいる地域の物語を能という形で見せていただきありがとうございました」など感想が寄せられ、日本の伝統文化を身近に感じていただける時間を提供することができました。
また、関連企画として、6月14日に三宮サテライトキャンパスで、15日に有瀬キャンパスで「能の世界に触れてみよう」と題したミニレクチャーを開催しました。ここでは、能『忠度』のあらすじや背景知識を学び、実際に『忠度』の一節を謡ってみるなど、能の楽しみ方を解説しました。参加者は、能の魅力について理解を深めることができました。