グリーンフェスティバル「林裕美子 ソプラノ・リサイタル ~旋法の音楽を巡って、グレゴリオ聖歌から日本歌曲まで~」を開催しました
2024/07/26
神戸学院大学有瀬キャンパスメモリアルホールにおいて7月6日にグリーンフェスティバル「林裕美子 ソプラノ・リサイタル ~旋法の音楽を巡って、グレゴリオ聖歌から日本歌曲まで~」を開催し、約350人が公演を楽しみました。
林裕美子氏は、武蔵野音楽大学声楽科を卒業後、フランスにてパリ・エコール・ノルマル音楽院演奏家課程を首席で修了し、カトリック大学宗教音楽研究所でグレゴリオ聖歌を学びました。現在はさまざまなコンサートに数多く出演しており、本学のグリーンフェスティバルは、2015年5月、2019年11月に続いて、3回目の出演です。
第一部では、音階の誕生やグレゴリオ聖歌と旋法について、解説を交えながら実演しました。グレゴリオ聖歌とは、西洋音楽の源流とされるキリスト教儀式の宗教音楽です。グレゴリオ聖歌の音楽的な特徴の一つとして、旋法(modo) があげられます。通常の音階は、「ド」を起点とする長音階(ドレミファソラシド)と、「ラ」を起点とする短音階(ラシドレミファソラ)の2種類に分けられますが、「レ」や「ミ」が起点とならなかったのは、調性が確立された際に、音楽表現の方法を「ド」と「ラ」を起点とする2種類に限定してしまったためです。旋法の音楽とは、「ド」と「ラ」以外の音も起点とする音階の組織と考えられます。旋法という考え方は、通常の音楽にも多く取り入れられ、クラシック音楽が徐々に変容し衰退していく1900年前後には、多くの作曲家が旋法を取り入れたと説明しました。
グレゴリオ聖歌の実演では、音階を解説しながら来場者と共に「Puer natus est(今日私たちのために救い主が生まれた)」を歌い、さらに林氏の透き通るような歌声で「Ave Maria(アヴェ・マリア)」を独唱。会場からは温かい拍手が送られました。
また、林氏が学生時代にパリの古本屋で購入した、聖歌隊長が使用していたとされるグレゴリオ聖歌集の1ページと、イタリアの修道院で保存されていたカレンダーを披露し、このカレンダーには実演した「Puer natus est」の譜面が記載されていることを紹介しました。
第二部では、旋法という点で関連を持つ平井康三郎、橋本國彦などの日本の歌曲11曲と、フォーレ、ラヴェルなどのヨーロッパの近現代の歌曲9曲を、山中歩夢氏(ピアノ)、初田章子氏(フルート)、高岡奈美氏(チェロ)の3人とともに披露しました。中でも全員で合奏したラヴェルの「マダガスカル島民の歌」は、異国情緒溢れる音楽で、聴衆たちは特に強い興味を持ったようでした。
各楽曲が終わるたびに、来場者からは大きな拍手が上がり、講演終了後には「優しい語り口と美しい歌声、とても癒されました」「音楽の歴史を講演いただき興味深く勉強になった」などの感想が寄せられました。
2024年度、春季グリーンフェスティバルは本公演を持って全て終了しました。
秋季グリーンフェスティバルは10月より開催予定です。詳細が決まり次第、HPでお知らせします。