佐藤学長と「ヴィッセル神戸」の徳山社長が特別対談――良きパートナーとして神戸を盛り上げるために
2021/07/28
長年、本学とパートナーシップを結んでいるプロサッカーチーム「ヴィッセル神戸」の徳山大樹代表取締役社長と佐藤雅美学長がこのほど、本学ポートアイランドキャンパスで対談しました。徳山社長は高校までサッカー部のゴールキーパー。佐藤学長は中学から大学まで野球を続けました。スポーツをプレーするのも観戦するのも大好きという2人がスポーツ愛からコロナ禍への対応、学生や子どもたちへのエール、パートナーシップの意義まで自由に語り合いました。
■厳しい練習に耐えたプライドがベース
――スポーツの魅力は何ですか。
佐藤学長 中学で軟式、高校で硬式、大学で準硬式野球部でした。ポジションはショート。当時は練習中に水も飲めず、炎天下で練習していました。自分がプレーしていたから、この局面を選手はどんな気持ちで迎え、どんなプレッシャーを感じているかが想像でき、野球観戦しても深く楽しめます。選手を離れても、グラウンドに近い所で関わりたいと思い、本学の硬式野球部の部長と顧問も約20年間続けました。厳しい練習に耐えた経験によるプライドがベースにあり、それがさまざまな逆境を乗り越える上での原動力の一つとなりました。
徳山社長 日々厳しい練習をしていましたので、今も忘れ難い思い出があります。あの頃の情熱や苦しさはスポーツを通してしか味わえなかったと思います。私は小学校6年生から高校までサッカーをやっていました。ポジションはゴールキーパー。ゴールキーパーのミスは失点に直結しますので、責任も大きいです。観戦していてもキーパーの心理がよく分かります。ヴィッセル神戸を任されて2年ほどですが、ゲームの観戦は楽しく、もうのめり込んでしまいます。
■コロナ禍に迅速に対応し、コロナ後も見据えて取り組む
――昨年以来、新型コロナウイルスの感染拡大で大学もクラブチームも厳しい事態となりました。コロナ禍に対応するために、どのような工夫をしましたか。
佐藤学長 キャンパスに来てもらって学生同士や教職員と交流して学びを深め、貴重な経験を積み重ねるというのが大学の本来の存在価値でした。それが、突然不気味で先が見えない状況となり、感染防止のため授業はオンライン化を一気に進める必要性に迫られました。困ったのは国際都市神戸で国際交流ができなくなり、留学制度もストップしたことです。そんな中で国際交流センターはオンラインで「グローバルセミナー」を開催し、フランス、ロシア、韓国、日本など8カ国・地域から予想を超える50人以上が参加してくれました。何かを始めることが次につながります。逆説的ですが、オンライン化によって、それまで意識しなかった対面、顔を合わせることの重要性が逆に見えてきたという面もあります。
徳山社長 スポーツ界も同じ状況です。昨シーズンから無観客試合が長く続き、厳しい規制が現在も続いています。サッカーはスタジアムに足を運んでもらってこそ、本当の魅力を感じていただけます。さまざまな制約がある中で選手や競技の魅力、感動をどのように伝えることができるかを考えました。SNSやYouTubeチャンネルを活用し、動画でファンの皆さんに練習風景を見てもらい、選手の内面を知ってもらえるような情報を発信するように努力しました。現時点では感染防止のため約2万9,000人収容のスタジアムに入場制限を設けており、経営面では決して楽ではないのは事実ですが、皆さんに希望を与え続ける存在でありたいと考えています。
佐藤学長 コロナ禍が収束し、通常の状態に戻ったら、前よりファンが増える工夫ですね。スポーツと真剣に向き合い、マイナスをプラスに変えていく発想は素晴らしいです。
徳山社長 Jリーグも以前の状態に戻るには時間がかかると思いますが、スタジアムに行けるようになった時に、応援していただけるようにとの思いです。今回、キャンパスをご案内いただき、素晴らしい環境、施設面だけでなく、ボランティアや英語の実用的な学習など、卒業したら必要になることを実践する場を与えておられるのは御校の優れた点ですね。
佐藤学長 専門以外の学びも大切で、私は「プラスアルファ・チャレンジ」という言い方をしていますが、学生の個性に応じた多種多様なチャレンジの場を提供していきたいです。
■ボランティアに参加し、児童に夢語り、地域とつながる
――いずれも地域貢献やホームタウンでの活動を重視されていますが、地域とのつながりをどう考えていますか。
佐藤学長 本学は1966年に神戸市西区で創立されましたが、学校法人神戸学院の歴史は1912年にさかのぼり、神戸を拠点に100年以上にわたり教育に取り組んできました。これからも地域から必要とされる存在であり続けたいと思います。地域貢献のため、現代社会学部では複数のゼミが共同で兵庫県の過疎地に入り、学生の発想を地元の政策に反映していただくプロジェクトを実施しています。神戸市や市内の他大学と連携しての「大学都市KOBE!発信プロジェクト」では大学の魅力をグランフロント大阪で開催する連続ワークショップなどで皆さんにお伝えしています。地域のボランティア活動には学生が積極的に参加し、神戸マラソンの運営や応援、救護のボランティアには毎年、学生約700人が参加します。学生にはキャンパスにとどまらず、どんどん地域に出て活動してもらっています。
徳山社長 Jリーグは地域ごとにチームの拠点を置いています。私たちのホームタウン神戸と周辺では、チームの初練習を予定していた1995年1月17日の明け方に阪神・淡路大震災が起きました。あの震災を地域の皆さんと乗り越えてきた経験がチームのアイデンティティーとなり、「一致団結」という言葉と行動を大切にしています。「GOAL for SMILE
プロジェクト」はヴィッセルの公式戦での1ゴールにつき、サッカーボール4球を神戸市立の小学校に寄贈する取り組みです。選手たちが小学校を訪問してプレゼントすることで、喜ばれています。「夢で逢えたら」は選手が小学校を訪れ、夢の大切さについて児童に語る授業です。以前、在籍していた三浦知良選手(横浜FC)が2003年に始めた夢について語る授業がきっかけで、今も続けています。
■良きパートナーとして互いに若い人をしっかり育てる
――改めてパートナーシップのメリットはどこにありますか。
佐藤学長 一体感を高め、地域を活性化させることです。大学名やチーム名に「神戸」を冠していることが重要な意味を持っています。スポーツなどの課外活動で本学のチームや選手が活躍することで神戸や兵庫の人たちが勇気づけられます。パートナーシップによって大学とクラブチームが一体となり、地域のために取り組むことができます。若い人のアイデアや創造性を生かし、若い人が地域を変えるチャンスを作っていけたらと思います。
徳山社長 学生の皆さんのインターンシップを受け入れています。スポーツビジネスについて知ってもらうきっかけになったらと思います。一方、我々は学生ならではのアイデアや視点を運営に役立てる貴重な機会になっています。若い人に神戸やヴィッセルをより好きになってもらうためにも、御校との関係は重要です。私たちはヴィッセル神戸アカデミーを通じて若い選手を育てていますが、サッカーだけではなく人間としての育成も重要です。パートナーシップは、人間育成の面でも役立っています。
■若者にとって魅力ある大学・クラブチームに
――最後に、それぞれの未来像をどう描いていますか。
佐藤学長 パートナーシップをより深め、大学とプロサッカーチームがここまで連携できる神戸はうらやましいと感じてほしいです。神戸は若者の流出が多いのが課題です。若者にとって魅力ある地域にしなければなりません。ヴィッセル神戸は、イニエスタ選手の獲得など、ある時点でのギアチェンジが成功しました。本学も2007年にポートアイランドキャンパスを開設したことがギアチェンジとなり、自治体や企業との連携を大きく推進する契機となりました。
徳山社長 アジアナンバーワンのクラブチームを目指しています。アジアサッカー連盟のAFCチャンピオンズリーグで優勝するというだけでなく、アジアで一番地域の皆さんに愛されるチームになるという目標です。神戸や兵庫県の皆さんとの関係は重要です。イニエスタ選手にも神戸の街を愛してもらっています。パートナーシップにおいては学生の皆さんの声を聴き、寄り添い、距離を近くするために、さまざまな取り組みを進めていきます。
ヴィッセル神戸の公式ホームページに掲載された対談記事はこちら