男女共同参画推進室が「活躍する卒業生セミナー」を開催しました
2023/12/13
男女共同参画推進室が12月8日、「活躍する卒業生セミナー~第4回『森わさ賞』受賞者をお迎えして~」を有瀬キャンパスとZoomで開催しました。
講師の北海道大学大学院文学研究院の田村容子教授に「神戸学院大学有瀬キャンパスから世界へ、そして日本へ」と題して語っていただきました。田村教授は1998年、本学人文学部を卒業し、中国演劇をジェンダーの視点から専門的に研究し、著書『男旦(おんながた)とモダンガール 二〇世紀中国における京劇の現代化』では日本演劇学会第52回河竹賞奨励賞を受賞しました。
田村教授は本学在学時に上海、天津に短期、長期での留学を3度経験し、特に4年次生で天津の南開大学漢語学院に約10カ月間の派遣留学から帰国後は、さらに研究を進めるため大学院進学を考えたといいます。
京劇をはじめとする中国の伝統劇では俳優が「役柄」という演技の型を通して「役」の人物を表現することをまず理解しました。20世紀に至るまでは、上演環境は男性中心で、女性役は女形(男旦)によって演じられたとの話は日本の歌舞伎を思い起こさせました。伝統的な演目は女性が登場しないか、脇役であるものが多く、女性役「旦」を主役とする演目が大量に作られるようになったのは女性の観客や演者が増える中華民国成立(1912年)以降だという説明もあり、時代とともに中国演劇が変化していることが分かりました。
共産党政権下の中国は京劇における迷信の排除を進め、心霊現象や幽霊の登場する演目を禁止または改作しましたが、毛沢東国家主席の死去で文化大革命が終息に向かった1976年以降は、伝統演目の部分的な復活上演が行われ、幽霊の登場する演目も見られるようになったといいます。その一例として、男に斬られる女の亡霊が登場する京劇「活捉三郎」の映像の一部も鑑賞させていただきました。幽霊なので、足を動かさず歩く演技が特徴的でした。
田村教授は「在学生のみなさんへのメッセージ」として、自身が有瀬キャンパスで学んだことを挙げました。①日本語であれ、外国語であれ、自分の言葉を形成するまでは時間がかかる②好きなもの・ひと・言葉に触れつつ、時には「外部」に出て行くことで、自分の中身を作っていく③大学時代に、その後の「芽」になる刺激をたくさん蓄える――という参考になる3点でした。
学生からは、「日本と中国の演劇の演技の違いは何ですか」と質問が出ました。田村教授は、「中国の伝統演劇では、女性の役は、きゃしゃな人が演じてもすごくアクロバティックな動きを見せる点です。日本では歌舞伎の演技のように女性の役は重い衣装を着て、あまり動きません。戦う女性役があるのも中国演劇の特徴です」と答えました。
また、別の学生は「中国留学時代に最も印象に残ったことは何ですか」と尋ねました。田村教授は「大学4年次の留学で、言葉も十分にできないのに中国社会に飛び込みました。京劇を歌うサークルがあり、歌や楽器の演奏を中国人のおじさん、おばさんが教えてくれました。私は初対面の人に話しかけるのは得意ではないので勇気が必要でしたが、たいへん良くしてもらいました」と、答えました。