人権問題講演会で法学者の谷口真由美さんが講演しました
2023/12/06
人権問題講演会が12月1日、ポートアイランド第1キャンパスで開かれ、国際人権法学会理事で法学者の谷口真由美さんが「アンコンシャス・バイアス」と題して講演しました。人権問題委員会同和問題部会が主催し、経営学部の藤原由紀子准教授が司会しました。
■花園ラグビー場とともに育った
谷口さんは、テレビ番組出演などを通じて広く知られています。初めに、近鉄花園ラグビー場(現在は東大阪市花園ラグビー場)のメインスタンドの下にあった選手寮で、近鉄ラグビー部のコーチだった父、寮母だった母と一緒に約10年間暮らしていたことなどからラグビーに対する比類のない愛情を注ぐようになった自身の紹介から始まりました。しばしば差別的な言葉を投げつけられたり、不当な扱いを受けたりしてきた経験にも触れました。
さらに人権とは何かということをかみ砕いて説明してもらいました。「人権」とは「思いやり」や「優しさ」で解決できるものではないと谷口さんは強調しました。「思いやり」とは強い立場の人から弱い立場の人に一方的に与えられるもので、一方「人権」とは、権力に抗うためのもので、この二つを混同してはいけないということです。
■人権を理解するための最新のキーワード
谷口さんは、人権を理解する最新のキーワードとして四つを挙げました。まずは「特権」で、「自分は差別なんかしていない」と思っているマジョリティ(多数派)側が実は目に見えない下駄をはかせてもらっていること」だとのことです。マイノリティ(少数派)の側にはそのような「特権」はありません。
二つ目が演題にもなった「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」。「知らず知らずの間に個人の意識に刷り込まれる『価値観の偏り』」です。谷口さんは自身が目の不自由な人をラグビー競技場に招待したことを例に挙げ、「目が見えない人がラグビーの試合を楽しめるはずがないというのは『無意識の偏見』であり、目が不自由でも競技場の熱気や観客の歓声を感じることができることを理解しようとしていない」と指摘しました。「金髪で青い目の人は全員英語を話す」というのもかなりひどい偏見で、「日本国籍で日本語を話すのに英語で話しかけられる」という谷口さんの知人の経験も「無意識の偏見」の実例でした。
三つ目は「マイクロアグレッション」(ごく些細な、軽微な攻撃)。「特定の個人に対して、属する集団を貶めるメッセージを発する」などのケースに当たるとしました。
四つ目が「ナイス・レイシズム」。「肌の色は気にしない」という意識の高いリベラルな人たちの善意に潜む無意識の差別意識を暴き、私たちの内に宿るレイシズムをとらえる概念だと説明しました。
では、こうしたバイアスをなくすためには、どうすれば良いのか。谷口さんは、「客観的に自分を振り返る必要がある。あなたはどんな人間なのかをよく分析してみてください」と呼びかけました。
■「気にしないでいいよ」は言わない方がいい?
質疑応答に移り、ある学生は「知り合いから悩みを相談された場合、『気にしないでいいよ』というのは言わないほうがいいのでしょうか」と質問しました。谷口さんは「この場で質問するのは勇気がいります」と学生を褒めたうえで、「当人にとっては重大な問題であるわけです。自身の価値判断に関わらず、相手の言っていることを受け止める。『そんなに気になることかな』などと口には出さず、いったんは自分の中で咀嚼(そしゃく)する。相手はしんどくて、あなたに言ったのですから」と答えました。