2022年度学位記授与式 学長式辞
2023/03/23
2020年、多くの人にとっては2年次に進級しようとする矢先に突然始まった新型コロナ感染症の拡大。それも、ようやく収束段階に入ろうとしている中、本日卒業の日を迎えた学部卒業生・大学院修了生の皆さんに対して、神戸学院大学を代表して、心からの「おめでとう」をささげたいと思います。
同時に、この日を迎えられたご家族ならびに関係者の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。本日に至るまで学生の皆さんを支え続けてくださったこと、また大学への変わらぬご支援を賜りましたこと、深く感謝並びに御礼の意を表したいと思います。
歴史の教科書にも残らんとする出来事であった新型コロナ禍。それさえなければ、もっと違った学生生活を送ることができたのに。そう思う人は多いと思います。しかし、過去の時間は取り戻すことができません。あなたたちの目の前にあるのは未来という時間だけです。未来に広がる歴史だけを見つめ、どうか過去の歴史には負けないでください。
このメッセージとともに、皆さんの社会への旅立ちにあたって、4つのことを伝えたいと思います。
一つ目。「3年」がんばる。
3年という長さには不思議な意味があることを知ってください。どんな仕事だったとしても、一つの仕事について、1年目は手探りです。2年目、少し慣れてきます。そして3年目に入ると、2年間の経験や知識をベースにして自らの工夫もできるようになってきます。それでようやく一つの仕事をマスターしたかなと思えるようになります。
もちろん、どうしても仕事がつらく、あるいは自分に合っていないと考えたときは、1年目、2年目でもやめて構いません。でも、その時でも、3年続けていなければ一つの仕事をマスターしていないということは意識しておいてほしいと思います。
二つ目。『「面倒くさい」と思ったら、重要だと思え』。
皆さんが、これから人生や職場で出会う様々な問題には、必ずしも答えが用意されているわけではありません。そうした問題を考えるとき、「面倒くさいな」と感じる問題ほど大事な問題だと思ってください。
大学における学びは必ず役に立ちます。ただそれが、目に見える形で現れる場合もあれば、そうではなく問題にぶつかった時にいろいろ考えるときの「目に見えない風」として役に立つこともあるのです。面倒くさいと感じるときほど、目を閉じ、風を聞いて、しっかり考えてください。
三つ目。『自分の中に「もう一人の自分」を持て』。
問題の解決のためには、しばしば「説得」という作業が必要になります。出す答えが自分一人だけではなく、家族や職場の同僚など他人にも影響することが多いからです。自分の思いのみを声高に主張することが説得なのではありません。
その時、自分を疑う「もう一人の自分」をどこかに常に置いておいてください。「説得」とは、自分と「自分の中にいる他人」との何往復もの対話が生み出すということを覚えておいてください。
四つ目。あなたたちの中にある最もピュアな心、魂を大切に。
時代は変わるといいます。社会に出てからも、学ぶことは多くあり、新たな知識も身に着けていき、「考え方」も変わっていきます。むしろ、変わる方が健全です。でも、君たちの中にある心や魂は、それがピュアであればあるほど変わらないものです。いや、変えずに持ち続けてほしいと思います。
あなたたちの人生の旅に参考にすべき地図はありますが、その地図は目的地への経路を教えてはくれません。道のりは自分で決めてください。そしてその道で「偶然」という名の町に出会える準備をし続けてください。「人生で一番素敵なことは偶然起きる」。覚えておいてください。
最後におねがいです。今日からは同窓生として、神戸学院大学を応援してください。そして、社会に出て少し余裕ができたら、気が向いた時にぜひキャンパスを訪ねてください。私たち教職員にとっては、あなたたちの成長した姿を見ることほど幸せなことはないのです。
改めて卒業おめでとう。君たちが社会で生き生きと活動している姿が見れることを心より期待しています。