土曜公開講座「痛み止め(鎮痛剤)のトリセツ!-慢性痛からがんの痛みまで-」 を開催しました
2024/07/23
薬学部の中川左理教授による土曜公開講座「痛み止め(鎮痛剤)のトリセツ!-慢性痛からがんの痛みまで-」を6月29日に有瀬キャンパスで開催し、176人が参加しました。今春の土曜公開講座は第87回となり、各研究分野の教員が「私たちのくらしと文化」という統一テーマに基づき、全5回の講義を行い、今回が最終回となります。
中川教授はまず講義の導入として、厚生労働省の調査データをもとに、年代別の有訴率を示し、乳幼児の痛みに関する認識や小児期における成長痛など、年代特有に起こる典型的な痛みについて解説し、痛みとは生涯を通して経験するものであると説明しました。
続いて、「痛みとは何か」をテーマに、その原因となる要素や性質、日常生活への影響など「痛み」という事象について説明し、痛みそのものへの理解を促しました。その上で、痛みは大きく分けて急性痛と慢性痛に分かれることを紹介し、痛みを感じるメカニズムや治療薬の特徴や使い方などを切り口に、慢性痛への治療アプローチについて解説しました。次いで、がん患者が感じる痛みについて、さまざまな原因があることや持続痛や突出痛など痛みに応じてそれぞれの薬がもつ特性を使い分けた処方が必要であると説明しました。
後半では、中川教授の専門でもある緩和ケアについて、ACP(Advanced Care Planning-今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス-)と呼ばれるプログラムなど現場での取り組み事例を交えて説明しました。
緩和ケアは、これまでは終末期に行うケアのように認知されていましたが、WHOによる定義を引用し、患者とその家族に対する痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処を行うことで、苦しみを予防し和らげ、QOL(生活の質)を改善する全人的なアプローチであると説明しました。
最後に中川教授は、医療用麻薬の使用における誤解もまだまだ沢山あると述べ、乱用薬物と混同されていること、依存症のリスクや終末期の治療段階で使用するといった思い込みに対して、「医療者の指示のもと、適切に使用することで、まったくそのような問題はない」とデータを示しながら解説しました。そして、「これらの複雑な痛みの背景を知った上で、対処すべき痛みがあれば、真摯に向き合い適切なサポートを行う医療を受けて、痛みに対応していきましょう」と講演を締めくくりました。
聴講者からは「痛みや緩和ケアの進歩の重要性を感じた」「これまで間違って理解していたこともあり大変助かりました」と感想が聞かれるなど、疼痛管理の重要性と、適切な対処方法について、聴衆に広く理解を促す講演となりました。
今回の講義をもちまして、2024年度春季土曜公開講座全5回の講義が終了しました。
次回は2024年秋季 第88回 土曜公開講座をポートアイランドキャンパスで実施予定です。