経済学部の木暮ゼミ「神戸市にある企業・組織のブランド研究」後半2回のインタビューです
2021/12/24
経済学部の木暮衣里講師の3年次生ゼミが「神戸市にある企業・組織のブランド研究」の一環として取り組んでいた4回のインタビューが終了しました。後半の2回はスポーツウエアやシューズのメーカー、「株式会社アシックス」マーケティング統括部ブランド戦略部の王賢治部長、「株式会社大丸松坂屋百貨店」が経営する大丸神戸店営業推進部の岡原良隆部長です。前半2回と同様、経済学部のゼミの協力で3年次生224人から回収したアンケート調査の結果を共有し、両部長にゼミ生がそれぞれZoomで質問し、自由な質疑応答で意見交換しました。
【アシックス】
王部長は2010年10月入社、アジア地域、グローバルマーケティング統括部等を経て、2020年から現職です。今回は秘書室渉外チームマネージャーの岩田さんにも同席してもらいました。アシックスを「知っている」が93%と圧倒的な認知度ですが、神戸の企業であることは意外に知られていません。クラブ活動などで同社の製品を使った学生は多く、アシックスの製品を「購入したことがある」は175人に上りました。主なやりとりは以下の通りです。
学生 会社のイメージとしては「スポーツ用品の会社」「スポーツシューズの会社」が多く、スポーツ大会やクラブ活動を通じてアシックスを知る学生が多くいました。そうした消費者に対して一番力を入れて取り組んでいることは何ですか。
王部長 製品を使ってくださる選手や消費者の方々からのフィードバックをしっかり受け止め、使い心地を製品開発に生かすことです。使う人のことを徹底的に考えてものづくりを行う、ということを、創業以来行ってきました。データを大切にしていることも一つの特徴です。例えば、靴を作る時に用いる足型は、世界中から集めた足形データから作っています。集めたデータを元に、アジア人の足は欧米人より幅が広い、といった傾向を理解し、より顧客の足にフィットするシューズを作っていることも海外のメーカーとは違う当社の強みだと思っています。お客様からのフィードバックをもとに、東京マラソンでもランナーがゴールまで走り終わってから退場するまでの導線のノウハウを提供したこともありますが、参加者の満足度は高かったようです。
学生 アシックスのビジョンを知っている学生も11人いました。
王部長 1949年に鬼塚喜八郎氏がスポーツを通して青少年の健全育成に貢献したいという思いで鬼塚株式会社を設立して以来、創業哲学である「Sound Mind, Sound Body」という言葉をずっと社員全員で心に刻み、大切にしてきました。「健全な精神は健全な身体にあれかし」ということです。
学生 神戸の企業だと知っている学生は34%。神戸の企業だという印象が薄いという点はどう考えますか。また神戸の企業だという強みはどうとらえていますか。
王部長 神戸は創業の地で、長く本社を置く地ですので、とても大切に思っています。現在、当社のグローバルでの売上のうち、海外売上が70%を超えているのですが、海外メディアに発信するプレスリリースにも「KOBE, JAPAN」と入れるようにしています。欧米ではアメリカのシューズメーカーだと勘違いされることが多く、神戸というより日本のメーカーであることを強く打ち出したいです。日本には世界に誇るクラフトマンシップ、ものづくりの職人技があることが知られているからです。
学生 どのような社会貢献活動をしていますか。
王部長 神戸マラソンは第1回から協賛しており、マラソン文化の醸成に努めています。神戸市中央区の小野浜公園には神戸市と一緒にランニングコースを整備しました。また、本社に隣接する企業博物館「アシックススポーツミュージアム」は無料で開放し、多くの方々にお越しいただいています。
【大丸神戸店】
岡原部長は1997年に株式会社大丸入社、大丸京都店、銀座新店計画室GINZA SIX リーシング担当、大丸須磨店店長等を経て、2021年から現職です。インタビューには販売促進担当の吉本有希さんも参加してくれました。「知っている」が75%と認知度は高く、知ったきっかけは「店の前を通りかかって」が最も多く、次が「家族・友人などを通じて」でした。「利用したことがある」は「知っている」人の77%でした。以下は主なやりとりです。
学生 主要顧客はどのような層で、その人たちに提供したい価値は何でしょうか。
岡原部長 主要顧客層を一くくりにするのは困難ですが、女性のお客様が多いことは間違いありません。ライフスタイルで言えば、生活文化度が高く、感度が高い方々です。「潤いのある暮らし」「貴重な体験」「初めての体験」を提供していくことが重要と思っています。
学生 SNSを通じて知った学生は少ないですが、SNSの活用についてどう考えますか。
岡原部長 SNSはあまりターゲットを特化しすぎないようにしなければなりません。一部の人にとって有用な情報でも、主要な顧客層にとって必要のない情報になりかねないからです。多くのお客様から共感される情報の発信を目指しています。
学生 若者層はどのくらい重視していますか。
岡原部長 ご来店いただいている若い世代は購買力が高く、情報発信力も高い「デジタル・ネイティブ」、「SDGsネイティブ」などと呼ばれます。ラグジュアリーなブランドへの嗜好が強く、ストリート系のデザイナーの商品にも関心の高い人が多く、こうしたお客様にも何度も来ていただく流れを作ることが大切だと考えています。購買行動も変化しており、検索エンジンで価格を比較検討してから購入するかどうか考える傾向があります。オンラインの買い物サイトだけでは味わえない体験や空気を感じてもらいたいと思います。
学生 持続可能な参加型プロジェクト「Think GREEN」と地域共生を考えた社会貢献活動「Think LOCAL」の取り組みは若者にあまり浸透していません。どう考えますか。
岡原部長 どちらも大事な取り組みです。「Think GREEN」に関して言えば、神戸店に飾っているクリスマスツリーには六甲山の間伐材を使いました。衣類のリサイクルイベントでクーポン券を発行しています。貴校との協働企画「もとまちこども大学」「もとまちこどもマルシェ」も継続したいと思っています。
木暮ゼミでは2022年1月7日に学生アンケート、インタビュー結果をまとめた研発表会を行う予定です。
併せてお読みください。
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「経済学部の木暮ゼミで、神戸市にある企業・組織のブランドに関する学生アンケートを実施しています」こちら