神戸学院大学

現代社会学部

現代社会学会主催講演会「のせて はこぶ おんなたち-頭上運搬を追って-」を開催しました

2025/02/07

講演する三砂名誉教授
講演する三砂名誉教授
和装の似合う三砂名誉教授
和装の似合う三砂名誉教授
講演会の案内チラシ
講演会の案内チラシ

現代社会学部の教員と学生で構成する現代社会学会主催の講演会を昨年11月29日、ポートアイランド第1キャンパスにて開催しました。毎年一般の皆さんと学生を対象に実施しており、今年度は津田塾大学の三砂ちづる名誉教授(女性民族文化研究所主宰)を講師に招き、「のせて はこぶ おんなたち-頭上運搬を追って-」の演題で講演いただきました。

三砂名誉教授による、女性たちが頭に物を載せて運ぶ「頭上運搬」についての研究成果は以下の通りでした。

≪「頭上運搬」とは、文字通り頭の上にものを載せて運ぶことである。自分ではやらなくても、映像で見たことがあるのではないだろうか。流れる映像から考えて、アフリカの人がやっているもの、というイメージがあるかもしれない。なぜあんなことができるのか、と驚くかもしれないが、実は元々人類が世界各地で行っていたもののようだ。今、それが残っているところがある、ということだ。

アフリカのみでなく、日本の各地でも頭上運搬が行われていたことはすでに1950年代に民俗学者によって地図(分布図)にされている。北限は宮城県女川町江島(えのしま)。伊豆諸島、瀬戸内海などを経て、南は、琉球弧まで。最後まで「頭上運搬」が残っていたのは、「坂や高低のある小さな島」であり、たとえば伊豆諸島の神津島や琉球弧の沖永良部島などでは2020年代に60代の女性は、見てきたこと、自らの体験としての「頭上運搬」を語ることができるのである。

実際に聞き取りをしてみると、みな、異口同音に「これは、誰にでもできること」だという。コツはなんですか、と聞いてもなんだかはっきりしない。姿勢を良くして顎を引いて、体の力は抜いて…という程度である。子どもの時からやっていなくても、いざとなれば、大人になってからでも、できるようである。「手で持つ荷物は、重力に逆らって持つから大変だけど、頭に乗せると体重が増えるだけだから…」などという至言も出てきたりする。一世代前、沖縄の糸満漁港から魚を那覇の街に売りに行った女性は30キロを超える荷物を頭上に乗せて両手をヒラヒラと振ってリズムをとりながら10キロ以上を小走りに移動していた、というのだ≫

世界各地で見られる「頭上運搬」についてのフィールドワークを元に、「研究するとは」、「研究テーマを選ぶとは」など、研究の方法やアプローチにも関わる分かりやすい内容でした。約230人の参加者の大半が現代社会学部の1年次生で、これからの大学での「学び」についてメモを取りながら真剣に聴いていました。