ジャーナリストの藤原亮司さんが現代社会学部「開発途上国論Ⅰ」でガザ地区について講演しました
2024/10/23
ジャーナリストの藤原亮司さん(ジャパンプレス)が10月17日、「空の見える監獄 ガザで何が起きている?」をテーマに、現代社会学部の「開発途上国論Ⅰ」で講演し、受講生ら137人が参加しました。社会防災学科の水本有香教授の担当授業で、今年5月に続き、開催されました。
藤原さんは、パレスチナ、シリア、ウクライナ、ドネツク、レバノン、イラク、アフガニスタンなど、イスラム圏諸国を中心に取材し、国内でも在日コリアンの歴史や、原発事故及び震災関連の取材を続けています。
講演の初めに、元々パレスチナに住んでいた多くの人々が土地を奪われ、ユダヤ人の国であるイスラエルが建国された経緯を説明しました。パレスチナはヨルダン川西岸地区とガザ地区に分かれており、ガザ地区は名古屋市と同じぐらいの面積に約222万人が暮らしているとされます。
2023年10月7日、ガザ地区とイスラエルの境界近くで開かれていた音楽イベントをハマスの戦闘員が襲撃したことをきっかけとして、イスラエル軍によるガザ地区への大規模な攻撃が始まって1年がたちました。ガザの人々は昼夜を問わない攻撃と飢餓によって数多くの命と尊厳が奪われている現状を踏まえて、再び講演会を開催しました。
ガザでは、傷病人や避難者がいる病院でさえも「ハマスの幹部が潜んでいる」と国際法違反でありながらイスラエル軍は攻撃し、住民に対して「攻撃対象の地区から移動せよ」と繰り返し勧告するビラを撒いています。「ほとんど車を所有していないガザの人々は10人や15人の大家族で歩いて何度も避難している途中にも殺害されている」という許しがたい現地の実情。「みなさんは、防災では、学校や病院は避難所になると学んでいると思いますが、ガザでは学校や病院も攻撃対象となっており、ガザの建物の65%以上がすでに破壊されました(2024年7月31日現在)」と藤原さんは報告しました。
非道な暴力が止まらない現状について、さらにこう続けました。
「ガザでは、元々封鎖下、現実があまりにも厳しく、人々は将来に夢を描くことで、自分が置かれた現実を先送りして、忘れようとする。でも、ガザには仕事もなく、国境は閉ざされ、いつまでたっても叶うことのない夢はやがて自分を苦しめていくので、ガザの人々は、『ヴィクティム・オブ・ドリーム(夢の犠牲者)』です」
参加した学生から、「今後、藤原さんはガザがどうなると思いますか」という質問が上がりました。藤原さんは、「変わらないと思います。ガザは、イスラエルの占領下にありますが、イスラエルがインフラなどを破壊しても、国連や日本を含めた国際社会が『人道援助』という名の下に、ガザの「復興」を支援します。大量の市民を殺害した国に対してなんら制裁もせず、対応も求めないまま行われるそれはイスラエルの占領への事実上の『後方支援』であり、その分、イスラエルは産業発展などに回すことで国を発展させてきました」と答えました。
最後に藤原さんはこう呼びかけました。「この講演には『こたえ』はありません。報道でよく『テロ』や『テロリスト』と言われると、鵜吞みにしてしまいがちですが、そこで思考停止に陥らずに考え続けてください。そして、イスラエルが日々、あらゆる残虐なことを行っていますが、自らもその立場に立てば、同じようにすぐ残虐な行為をしてしまうのだ、ということを覚えておいてください」
神戸学院大学図書館では、年内11月にポーアイ図書館、12月に有瀬図書館において、藤原さんの写真展「もう存在しないガザの日常」を開催する予定です。ぜひご来館ください。