薬学部の教員らが神戸市民防災総合センターで研修中の消防職員に特殊災害課程実習を実施しました
2023/10/17
薬学部の稲垣冬彦教授らがポートアイランド第1キャンパスで10月13日、神戸市民防災総合センター(神戸市消防学校)で研修中の消防職員ら約40人に特殊災害課程の実習を実施しました。
特殊災害に対応するため隔年で開催しており、化学薬品を使った5種類の基礎実験で発火などの危険性と安全確保のための注意点を学んでもらうのが目的です。まず村上遼助教が「特殊災害の現場では皆さんの五感を大切にし、においや音や色などに注意してください。しかし、目には見えない危険なガスもあり、検知機器を使う場合もあります。あとは正しい科学的な知識があれば適切な対応ができます。今回は家庭で起こり得る事故、工場災害を想定して基礎実験をやっていただきます」と、あいさつしました。班ごとに安全確保のゴーグルとゴム手袋を装着して取り組みました。
実験1では、硝酸アンモニウムと亜鉛粉末を混合し、触媒の水を少量加えてしばらくたつと、温度が上昇して発火することが確認できました。硝酸アンモニウムは農業用肥料にも使われますが、亜鉛粉との混載は認められていないことなどを伝えました。
実験2ではアクリル酸にAIBNを加えると「ラジカル重合反応」が起き、温度が上昇することを確認しました。2012年に姫路市の化学製品メーカーの工場で発生したアクリル酸の入ったタンクが爆発して多数の死傷者を出した事故の例を紹介し、アクリル酸は高温で自発的に重合反応を起こすことがあるという事実も理解してもらいました。
実験3では水に硫酸を少量加えると温度が上昇することを確認しました。逆に硫酸に水を加えると硫酸の表面に水蒸気が発生して沸騰し、硫酸が飛び散って危険なことや、硫酸が床などにこぼれた場合は、安全を確保した上で大量の水で薄める対処方法を伝えました。
化学物質による有毒ガスの発生を確認する実験4では漂白剤(次亜塩素酸塩含有洗剤)とトイレ用洗剤(希塩酸)を混ぜることで塩素ガスを発生させました。また、硫化鉄と硫化水溶液を混合すると硫化水素ガスが発生し、異臭が漂いました。いずれも発生源に消防車両にも積まれている消石灰を入れることで中和され、消臭効果があることも学んでもらいました。
化合物の特異臭を確認する実験5では、さまざまな薬品による不快臭、アンモニア臭などを確認してもらいました。