薬学部が「救急医療/ICU」をテーマに第4回大学―医療連携特別講義を実施しました
2024/11/21
本学と教育・研究連携協定を結んでいる神戸市立医療センター中央市民病院の医師と薬剤師から臨床現場の実践を学ぶ薬学部5年次生対象の「大学-医療連携特別講義(薬剤学特論Ⅰ)」今年度4回目の授業が11月12日に行われました。
一連の特別講義の最終回のテーマは「救急医療/ICU」。司会は元同病院薬剤部長でもある橋田亨教授が務めました。浅香葉子医師(救急科医長)と田村亮薬剤師(薬剤部主査)からそれぞれが担当する同病院の「救急医療/ICU」の取り組みを中心に報告してもらいました。ICU(集中治療室)は救急で搬送された重症患者、病棟で容体が急変した患者の他、大手術後の厳密な周術期管理を要する患者の集中管理を担当する部署です。2人の講師は、この部署における医師、看護師、栄養士、薬剤師など専門職が連携して取り組む多職種連携の大切さも強調しました。
■ICUにおける治療とは
救急医療の「最後のとりで」と言われるICUの重要な役割について浅香医師から詳細な説明がありました。救急患者のみならず、診療科を横断して、さまざまな病態の患者が対象となり、刻々と変わる患者の状態に、24時間の患者管理を必要とし、多くの医療機器に加え、人的・物的資源を必要とするとの指摘がありました。
まさに時間との戦いの中で、医師、薬剤師など多職種から構成される医療チームの重要性、それぞれの役割についても紹介されました。また、迅速さが求められる重篤な患者の治療に際しても、医学的な適応のみならず、患者のQOL・患者と家族の意向・経済状況なども踏まえ治療にあたることが必要であり、そのため医療チームの構成員には、患者自身と患者の家族も含まれるという概念も示されました。
■救急・集中治療における薬剤師の役割
田村薬剤師は、「救急・集中治療」において自身の経験から、この分野で薬剤師が必要とされるようになるまでの努力を語り、薬剤師の存在意義を確立する上で何が重要かを示しました。また、実際の症例を取り上げて、具体的に薬剤師がどのような貢献をしたかについて述べました。ICUでの薬剤師業務は、「スピードが重要で大変ではあるが、得られる情報量が多く、やりがいも大きい」とし、その中で、薬学部で学ぶ多くの知識や考え方が基盤となっているという話に学生も引き込まれました。
■ICUにおける患者状況の監視と急変時の対応
会場の学生からは、ICUにおける患者の状況の監視システムの仕組み、また急変時の対応についての質問が双方の講師にありました。浅香医師は詳細な監視機器類の紹介とモニター項目は患者ごとに設定され、急変時のアラームも患者の状態に応じて閾値が設定されていると答えました。田村薬剤師は、「薬剤師は直接ICUにいて関わるわけではありませんが、患者の容体急変時には薬剤の「払い出し」について、迅速かつ正確な対応を心掛けて、安定するまで待機します」と、薬剤師としての心構えについても話してもらいました。
その他、救急外来における薬物中毒時の医師と薬剤師それぞれの対応、田村薬剤師のD-MATの一員としての災害派遣での経験などにも話題が広がりました。D-MATとは、医師、看護師、薬剤師等の医療専門職と事務職員で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期から活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。臨床現場の一線で働く薬剤師の活躍ぶりを当事者から聞かせてもらえた学生にとって大変有意義な討論となりました。
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