神戸学院大学

法学部

法学部が文化相互理解シンポジウムを開催し、「国際報道のリアル」について議論しました

2024/06/07

    シンポジウムの案内チラシ
    シンポジウムの案内チラシ
       講演の様子
       講演の様子
    ディスカッションの様子
    ディスカッションの様子
乗京真知著『中村哲さん 殺害事件 実行犯の「遺言」』(朝日新聞出版:2024年)246ページより
乗京真知著『中村哲さん 殺害事件 実行犯の「遺言」』(朝日新聞出版:2024年)246ページより

神戸学院大学法学部主催の文化相互理解シンポジウム【国際報道のリアル ―『中村哲さん 殺害事件 実行犯の「遺言」』出版に際して―】が6月4日、ポートアイランド第1キャンパスで開催されました。

岩田将幸教授が企画・進行を担当しました。第26回目を迎える今回のシンポジウムでは、朝日新聞記者の乗京真知氏を講師に迎えました。乗京さんは、今年2月に『中村哲さん 殺害事件 実行犯の「遺言」』(朝日新聞出版:2024年)を上梓するなど、ジャーナリズムの第一線に立って活躍されています。

中村哲さんは、荒れ果てたアフガニスタンの国土を緑の大地へと蘇らせるために、現地の人々と一緒に懸命に土木作業にもあたったことが知られています。もともと医師であり、診療活動を行っていた中村哲さんですが、病気の根本的な原因は汚れた水と食料事情にあることに気付きます。また、戦乱が続くアフガニスタンの地で貧困にあえぐ人々の平和と復興のためには、生活の糧を自らの手に取り戻すことが重要であると信じていました。

よって、中村哲さんは、現地の人々が自ら運営できる現地に即した灌漑のあり方や水利事業を研究し、その実現に向けて献身的に取り組みました。では、現地の人びとからも尊敬を集めていた中村哲さんがなぜ殺害されなければならかったのでしょうか。乗京さんはそのことを一ジャーナリストとして真摯に問い、徹底した取材を行って一冊の本にまとめました。

同書の中で、乗京さんは中村哲さんだけでなく、事件で亡くなった運転手や警備担当の5人の現地の人とその家族にも眼差しを向けています。中村哲さんの生と死の軌跡を辿る過程で、ただ事件の真相に迫るだけではなく、事件の後で残された者たちの苦境にも光を当て、継続して取材し伝えることを意図しているのです。ここにジャーナリズムへの自らのあり方を問う乗京さんの姿勢を垣間見ることができます。

乗京さんの講演後、岩田教授の司会により、政治思想を担当する佐藤一進法学部准教授が討論者として加わり、国際報道の現状や今後をテーマにディスカッションが行われました。真偽を問わずさまざまな情報が入り乱れる時代にあって、いかに情報を接し、その情報自体が持つ価値について理解することができるのか。活発かつ掘り下げた議論が繰り広げられると同時に、乗京さんからは、多くの実際的かつ示唆に富んだアドバイスが提示されました。