神戸学院大学

法学部

法学部の春日勉教授による体験型公開講座「わたしもあなたも裁判員!!」を開催しました

2024/12/16

模擬裁判を演じる春日ゼミ生
模擬裁判を演じる春日ゼミ生
裁判員席から議論する様子を見る参加者
裁判員席から議論する様子を見る参加者
グループに分かれて評議を行う参加者
グループに分かれて評議を行う参加者
総評する春日教授
総評する春日教授
模擬裁判を体験した参加者たち
模擬裁判を体験した参加者たち

法学部の春日勉教授による体験型公開講座「わたしもあなたも裁判員!!」と題した模擬裁判を11月30日、ポートアイランド第1キャンパス法廷教室で開催しました。

本講座は高校生以上の方を対象とした事前申込制となっており、多数の応募の中から9人の参加者が選ばれ、裁判員を体験しました。また、春日ゼミからも19人の学生が参加し、裁判官、検察官、弁護人・被告人、証人などの役割を演じました。

今回の模擬裁判で取り扱われたシナリオは【「科学」と「裁判」~鑑定結果は真実を映し出す鏡となりえるか~】と題し、1990年代に発生した実際の事件を参考にして、ゼミ生らが作成しました。

被告人は登校中の被害児童2人を自家用車に誘い込み、車内で首を絞めて殺害し、山中に遺棄したとして、検察により起訴された、というシナリオです。被告人は本当に犯人なのかが今回の模擬裁判の最大の争点となりました。

被告人は捜査段階と公判段階で一貫して犯行を否認しました。また、殺害に使用された凶器などの直接証拠は無く、裁判は全て間接証拠のみによって争われました。参加者は、現場に残された犯人のものと思われる血液や体液などの血液型鑑定及びDNA鑑定等科学的証拠と目撃証言をもとに被告人が有罪か無罪かを見極めました。

当時のDNA鑑定は捜査に用いられて間もないため、誤差が生じることが科学者の一般常識でしたが、警察庁は積極的にこの捜査方法を取り入れていました。また、被告人の自家用車が現場付近を通り過ぎるのが目撃されていましたが、車種や色など証言が具体的過ぎるため、警察による印象操作が行われたのではないか、など複数の争点について議論する様子を、参加者たちに裁判員席から見てもらいました。

模擬裁判終了後は、参加者と学生らそれぞれ4グループに分け、グループごとに評議を行いました。その結果、被告人と犯人を結びつける直接的な証拠はなく、検察側の立証も不十分であったため、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則にもとづいて、4グループ全てが無罪の結論を導き出しました。

最後は春日教授より総評があり、実際の事件では、事件発生から14年後に被告人の死刑が確定し、その2年後には刑が執行されたことを紹介しました。春日教授は、「戦後間もない日本で起こった事件では、ずさんな捜査や自白の強要、科学的証拠の改ざん等により、冤罪であると後に明らかとなるケースが後を絶ちませんでした。また日本の刑事裁判は、被告・弁護側が反証できなければ有罪となってしまう、いわゆる『挙証責任の転換』という問題や、被告人・参考人の供述や科学的証拠が重視されてしまう傾向があります。正確な事実が認定されるためには、裁判員制度を通して、市民の良識を反映させることが重要です」と、講座を締めくくりました。

参加者らは「裁判員はめったに経験できないので楽しかった」「実際の裁判に裁判員として参加することはかなり荷が重いと感じた」などのコメントを寄せました。