第4回大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ「図書館で『なりたい自分』を見つけよう」が開催されました
2024/09/02
第4回大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ2024として8月24日、明石市のあかし市民図書館で「図書館で『なりたい自分』を見つけよう」が開催されました。今回は「10代の図書館利用者に本と親しむ機会を提供したい」という図書館側の依頼を受け、本学地域研究センター教員が中心となって企画を練り、同図書館で開発された「たこ文庫」カードを利用したワークショップを実施しました。
「たこ文庫」は15枚のカードを引いて、出た「お題」に沿った本を紹介するという、ゲーム性を持った自己紹介ツールです。
人文学部では、少人数のゼミ活動やグループワーク、アクティブラーニングを取り入れた授業を積極的に導入しており、「たこ文庫」のようなツールを利用して自己開示や自己発見の場を作ってゆくノウハウが教員、学生のあいだに蓄積されています。「たこ文庫」カードと人文学部の「知」を組み合わせることで、みんなで楽しく本について語り合う機会を提供できるのではないかと考えました。
※「たこ文庫」の詳細は、こちらのリンクをご参照ください。
当日、本学からは大西慎也教授(教育学)、鹿島基彦准教授(海洋学)、金益見准教授(社会学)、中村健史准教授(国文学)、鈴木遥講師(地域研究)、前田宏太郎講師(言語学)と7人の学生が参加しました。
続いて教員の自己紹介も兼ねて、1人ずつ「たこ文庫カード15」のお題「将来を決めた一冊」を紹介しました。教員の紹介した本は、記事の末尾に一覧を載せています。
この後、全員参加での「たこ文庫」を始めました。教員、学生、参加者のみなさんが3グループに分かれ、順番に1枚ずつカードを引いて本の紹介に入りました。15枚1組のカードから話しやすそうな「お題」8種類を事前にセレクトしました。参加してくれた人文学部の学生たちには、場を和ませたり、話を引き出してくれたりするファシリテーターの役割を教員に代わって担当してもらいました。
「途中で読むのを諦めた一冊」では、読書の時間、先生から薦められた外国の風景についての本について話してくれた参加者が途中で話が続かず、困った表情に。すかさず学生の1人が「先生はどうしてその本を薦めてくれたんだろう?」と助け船を出しました。「風景画がたくさん入っているので、私が絵を好きなことを知っていた先生が、これなら読みやすいのではないかと考えて薦めてくれたのだと思う」と、話も無事つながりました。
ほぼどのグループでも1人2回程度はカードを引けたようです。グループワーク終了後、図書館から「たこ文庫」用の記入用紙をいただき、1人1枚ずつ、紹介した本とその内容について文章でまとめてみました。各自のまとめは参加者全員で共有し、しばらくの間、図書館でも掲示してもらえることになりました。
最後に司会の中村准教授が「(タイトルとして掲げた)『なりたい自分』は、進路や進学のことをすぐ考えてほしいということではありません。自分がどういう人になりたいのか、どういう仕事に就きたいのかなどと考えるためには、そもそも自分は何に興味を持っているのかを知る必要があります。そのためには、自分が読んだ本をもう一度、客観視してみるのが一番です。『たこ文庫』をうまく利用して、自分を見つけてみてください」と、締めくくりました。
チューターとして参加した学生は「普段話すことのない中高生と本をテーマにさまざまな話が出来たのが楽しかった。たこ文庫というカードゲームがちゃんと作り込まれていて、老若男女問わず読書を促すよい取り組みだなと思った」と話していました。(一部の写真は、あかし市民図書館提供)
【教員の「将来を決めた一冊」】
大西慎也教授(教育学) 灰谷健次郎『太陽の子』(角川文庫)。教員を志すきっかけになった一冊。
鹿島基彦准教授(海洋学) ジューヌ・ヴェルヌ『地底旅行』(岩波少年文庫ほか)。子どものとき、読書を楽しむきっかけになった一冊。
前田宏太郎講師(言語学) 鈴木孝夫『ことばと文化』(岩波新書)。言語の世界に興味を持つきっかけになった一冊。
鈴木遥講師(地域研究) レイチェル・カーソン『沈黙の春』(新潮文庫ほか)。文章と研究が持つ力に気づくきっかけとなった一冊。
金益見准教授(社会学) 金益見『ラブホテル進化論』(文春新書)。研究の道に進むきっかけとなった一冊。
中村健史准教授(国文学) 『フレッド・アステア自伝』(青土社)。論文を書くにはねばりづよさが必要だと気づかされた一冊。
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