神戸学院大学

人文学部

「戦後日本における理想の教師像の変遷-金八先生はいい先生なのか-」をテーマに第6回大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェが行われました

2024/10/21

講演する大西教授
講演する大西教授
大西教授の講演を聴く多数の地域の皆さんや学校教育関係者、大学院生ら
大西教授の講演を聴く多数の地域の皆さんや学校教育関係者、大学院生ら
講師と活発なやりとりをする参加者
講師と活発なやりとりをする参加者

地域研究センターの主催する一般向け講演会「大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ2024」が10月16日、明石市大蔵八幡町の「明石ハウス」にて実施されました。

第6回となる今回は、人文学部の大西慎也教授が「戦後日本における理想の教師像の変遷-金八先生はいい先生なのか-」と題し、戦後のテレビドラマで取り上げられた教師像の変遷をたどりながら、時代背景に応じた金八先生(注)の分析を行い、これからの時代に求められる教師像について講演しました。参加者とのやり取りを行いながらの講演は、参加者の探究心を呼び起こし、それぞれの理想の教師像について思いをめぐらせているようでした。

(注)金八先生は、2011年まで32年間にわたり、TBS系列で断続的に制作・放映された人気テレビドラマのシリーズで、東京の中学校を舞台にした「3年B組金八先生」の主人公で、武田鉄矢が演じました。

【講演要旨】
戦後日本において求められてきた理想の教師像をテレビドラマの主人公から探っていくことから講演は始まりました。(以下、テレビドラマの教師像に関する参考文献:佐藤晴雄(2022)『教職概論第6次改訂版』学陽書房)

高度経済成長の末期には、教育界では校内暴力やいじめが問題となり、テレビドラマでは「スポ根型のかっこいい教師」、「熱意と人情のある教師」が求められていました。その後、バブルの時期となり、教育界では新たな学力観が示されたり、隔週での週休2日制が始まったりします。その頃に求められたのが「理想追求型教師」です。バブル崩壊後は「超個性派教師(問題教師)」が出現し、平成10年以降に完全週休2日制となり、ゆとり教育が進む頃になると「超個性派教師(スーパー教師)」が求められるようになります。

述べてきた教師像から共通点を導き出し、現在兵庫県が求める教師像と比較すると、似ていることに気づかされます。いずれも、教育に全力で取り組み、不当な圧力に屈せず、子どもの立場に立ち、理想の教育理念を実現しようとする教師像です。

ここまでまとめた教師像に基づいて、金八先生を分析していきます。金八先生は、1979年に第1シリーズがスタート、2011年のファイナルスペシャルを最後に、一教師の退職までを描いたドラマです。他の教師を描いたドラマと異なる点は、若手教師だった金八先生の結婚や子育てなどの家庭生活を含め、その教師人生を描き続けたことです。取り上げられたテーマもその時代に応じたもの(いじめ、引きこもり、学級崩壊、性同一性障害、薬物依存)であり、その年齢に応じた金八先生が奮闘している姿が描かれました。

  ◇  ◇  ◇
大西教授は、金八先生を競争至上主義の教育や、特定の価値やふるまい方を押し付ける教育に対して、抗い続けた教師であったのではないかと位置付けました。そして、その姿をいい先生と思うかどうかは、それぞれの立場や視点によって異なるものであると述べました。

最後に、これからの時代、一人一人の教師自身が自分の目指す理想の教師像をキャリアに応じて変化させながら追求し、そこに向けて学び続けることが求められるとまとめました。

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地域研究センターでは、地域研究・社会貢献の一環として『大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ』を継続的に行っています。次回は11月6日(水)18時から、人文学部の松村淳講師による講演「近代建築の保存と再生を考える」を実施する予定です。ふるってご参加ください(予約、事前申し込み不要)。