神戸学院大学

人文学部

土曜公開講座「地球温暖化によるサンゴ礁の衰退とその影響」を開催しました

2024/07/01

講義を聴く受講者
講義を聴く受講者
講義を聴く受講者
講義を聴く受講者
スライドを使って「コーラルトライアングル」を説明
スライドを使って「コーラルトライアングル」を説明

人文学部の鹿島 基彦准教授による「地球温暖化によるサンゴ礁の衰退とその影響」を6月22日、有瀬キャンパスで開催しました。同時開催のGreen Festivalとの兼ね合いから、少なめの参加者になりましたが、55人が参加しました。

今春の土曜公開講座は第87回となり、各研究分野の教員が「私たちのくらしと文化」という統一テーマに基づき、全5回の講義を行っています。

冒頭で、日本は親潮や黒潮などの海流に包まれた世界的に見ると特殊な島国であると説明し、このような日本の海について知ってほしいと、サンゴをテーマに講義を行いました。

はじめに地球温暖化による地上気温と海面水温の上昇について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)や気象庁によると、両者とも近年100年の間に約0.6度の上昇がみられ、人工衛星による広域一様かつ精密な観測でも海面高度が上昇していることから、地球温暖化は確実に進行していることを説明しました。

次に、サンゴとサンゴ礁の違いについて、サンゴは生物を指し、サンゴ礁はサンゴの死骸が堆積してできた地形であることを説明しました。また、サンゴはイソギンチャクと同じ「刺胞動物(しほうどうぶつ)」に分類されており、敵から身を守るため、自分の骨格に隠れる性質を持っており、死骸となったサンゴの骨格は、大理石やコンクリートの原料である石灰石などになるため、実は私たちのくらしに身近な生き物であると述べました。

サンゴは日本の南西諸島やインドネシア、ソロモン諸島を含む「コーラルトライアングル」と呼ばれる海域に最も多くの種類が生息しており、この領域は海洋生物のみならず陸上生物も含めて世界一生物多様性が高く、特にサンゴはそれを支える土台になっています。また、日本最大のサンゴ礁海域は、「石西礁湖(せきせいしょうこ)」と呼ばれ、石垣島と西表島の間にあり、これらをはじめ日本には400種類以上のサンゴが生息しています。

サンゴ礁は二酸化炭素を吸収したり、小生物の生息域や栄養供給源になったり、産卵を助けたり、水質を浄化したりするなど、海洋環境に大きなメリットを与えています。しかし、熱帯の生物であるために急激な温度変化に弱く、1998年夏には水温上昇により、サンゴが白くなる白化現象が発生し、沖縄本島に生息する約85%のサンゴが死滅しました。温暖化は進むことが想定されていることや、サンゴを食べるオニヒトデの大量発生や赤土の流出、人為的な埋め立てなどが影響し、将来的にはこの地域でサンゴが絶滅する可能性があることを紹介しました。

海全体の視点からサンゴを守るためには、サンゴ卵が黒潮などの極向きの西岸境界流に乗ってより涼しい海域に引っ越しやすいサンゴ礁海域を特定し、オニヒトデの駆除などの重点保護をすることで、サンゴの生息域の北への拡大を支援することが必要だと実際に鹿島准教授が行った研究成果を交えて説明しました。

最後に、地球の46憶年の歴史の中で「大量絶滅」と言われる生物種の70%以上が絶滅したことが少なくとも5回起きており、サンゴの減少は海をはじめとする地球全体の生態系を破壊し、6回目の大量絶滅を引き起こすことが懸念されていることを説明し、講義を締めくくりました。

受講者からは「サンゴ礁や海の生物との共生の大切さを感じた」「地球温暖化を抑えるよう努力したい」など多くの感想が寄せられました。