土曜公開講座「日本の言語景観-観光と英語教育の観点から-」を開催しました
2024/11/06
グローバル・コミュニケーション学部の森下美和教授による土曜公開講座「日本の言語景観-観光と英語教育の観点から-」を10月26日にポートアイランド第1キャンパスで開催し、95人が参加しました。
まず、本講座のテーマである「言語景観」について、街頭、公共施設、店舗などに見られる言語表記およびアナウンスなどの音声言語のことを指すと説明。自身がアメリカのハンバーガー屋に入って目にした日本語に訳されたメニューに違和感を覚えたことから、言語表記やそこから生じる誤解を解きほぐし、現地と来訪者の接点の一つである「言語景観」の役割について考えたいと思ったことが研究のきっかけであると紹介しました。
続いて、自身がこれまでに調査を行ってきた京都を始めとする日本の観光地、オーストラリアのメルボルン、台湾などの「言語景観」の事例を紹介しました。
インバウンド観光客の増加により、日本でも英語、中国語、ハングルなど、多言語表記による案内が行われているが、綴りや文法の間違い、おかしな表現が記載されていることがある。その例として、ビジネスホテルの冷凍機能がない冷蔵庫やトイレットペーパーの使い切りについての注意喚起の表記などを挙げました。
またコロナ禍が、今後の日本の観光やインバウンド対策について考えるきっかけとなっており、一部の飲食店でも、文化の違いを考慮した多言語メニューを作成するなど、インバウンド観光客をターゲットにした戦略ができていると解説しました。
一方、メルボルンの「言語景観」では、多言語表記があまり見られず、シンプルでわかりやすい英語やイラストを多用している。一部日本語表記も見られるが、必ずしも日本人向けではなく、日本語を使用することで高品質であることをアピールしているケースが多く、その目的が日本と異なっていることを紹介しました。また、メルボルンの外国人居住地域の多くは郊外にあり、さまざまな移民が混在しており、移民に対応した「言語景観」も特徴の一つだと話しました。
最後に、多くの言語が表記されることにより、現地の住民にとって表記がわかりにくくなっている可能性もあるという課題に触れ、日本の「言語景観」においては、”やさしい日本語”や”正しくわかりやすい英語”を表記していく必要があると結論づけました。
参加者は「神戸市内の外国語の案内について疑問をもっていたため、興味深く話を聞くことができた」「身近な暮らしからもグローバルな視点で物事をみていきたい」など多くの感想を寄せました。
次回11月9日の講義は、グローバル・コミュニケーション学部の大竹翔子講師による「くらしの認知科学-選択と記憶の話-」です。