神戸学院大学

グローバル・コミュニケーション学部

『シン・中国人』著者の斎藤淳子さんがGC学部中国語コースの1年次生にオンラインで講演しました

2024/07/23

大濱教授の紹介を聴く学生
大濱教授の紹介を聴く学生
斎藤さん講演のオンライン画面
斎藤さん講演のオンライン画面
斎藤淳子さんと話題の新著
斎藤淳子さんと話題の新著

『シン・中国人~激変する社会と悩める若者たち』(ちくま新書)の著書が話題になっているライターの斎藤淳子さんが7月17日、中国・北京からオンラインでグローバル・コミュニケーション学部中国語コース入門を受講する1年次生に講演しました。司会は大濱慶子教授が担当しました。

斎藤さんは北京在住28年。米国で修士号を取得後に北京に国費留学。JICA北京事務所、在北京日本大使館勤務を経て、北京を拠点に新聞への寄稿、ラジオ出演など各種メディアで現代中国事情を紹介しています。

講演の冒頭で斎藤さんは、普通の日本人がイメージする中国人のイメージは「わかりにくくて不思議」「怖い」などとネガティブな印象が多くを占めるものの、実際の中国は、どの断面を見るかで千差万別、社会層の格差は大きく、世代間ギャップもあり、日本人の想像以上に多様な国だと説明しました。「日本ともG7とも違う独特の社会システムを持つ」として、(個人に対して大きな意味を持つ)戸籍制度では、大都市の北京や上海の戸籍を持つことは極めて難しいことを例に挙げました。

続いて現代中国理解のキーワードとして、①圧縮型の社会発展②焦慮=焦りと不安③社恐(社交恐怖症)④做自己(自分らしさ)――を挙げました。①は、世界に例がなく短期間に圧縮された社会発展を遂げたことを意味し、1990年代には電話は各フロアに1台しかないような状態だったのが固定電話普及の時代を通り越して携帯電話の時代になっている事例を示してもらいました。②は「チャンスに乗り遅れるな」と焦ることで、多くの人は学歴、収入、不動産や住宅の所有、容姿などで格付けされていると感じているのが実態のようです。③は人の目を気にして人との距離を置く人たちで、「細く、シャイな若者たち」が増えているといいます。傷つくのが恐くてコミュニケーションが苦手な人たちは内向的な「i人(アイレン)」という新語でも呼ばれるとのことです。内向きで目立ちたくない若者が増えているという説明も予想外でした。

一方、④「做自己」を大事にする中国の人たちは「自分らしいこだわりの領域、趣味や教養を持ちたい」という意識が強く、日本は身近なモデルになっているとの少し気恥ずかしいような指摘もあり、日本の映画や文学が好まれるのも納得がいく話でした。

両国の強みとして斎藤さんは、日本は「安定感と成熟度、柔らかさ」「丁寧に極める質とプライド」「自然と調和し、共感する感性」、一方中国は「猛烈なスピード感」「危機に強い即応力、突破力」「既存にとらわれない自由な発想」などを挙げました。

学生へのメッセージとしては、「中国など異文化を知り、感度を上げてほしい」と呼びかけました。

学生が知りたい中国人の結婚観にも触れました。結納金は高く、男性は家や車を持っていなければ駄目で、結婚は親ぐるみだと述べました。

この説明を聞いた学生からは「中国では日本より実家とのつながりが強いのでしょうか」との質問が出ました。斎藤さんは「いい質問です。家族のつながりが強いのです。社会保障制度が整備されていないので家族で守るという生きるための知恵だと言えます」と答えました。