神戸学院大学

経済学部

経済学部の岡本ゼミの3年次生が企業の課題解決プレゼンを実施しました

2024/04/09

プレゼン終了後に水木社長(左端)、永田人事部長(右端)と記念撮影する川本さん(左から2人目)と山本さん
プレゼン終了後に水木社長(左端)、永田人事部長(右端)と記念撮影する川本さん(左から2人目)と山本さん
プレゼンする川本さん
プレゼンする川本さん
プレゼンする山本さん
プレゼンする山本さん
PORT STYLE株式会社を初めて訪問した岡本ゼミ生(右の2人)
PORT STYLE株式会社を初めて訪問した岡本ゼミ生(右の2人)
イチヨンプラス六甲道店を訪問した岡本ゼミ生
イチヨンプラス六甲道店を訪問した岡本ゼミ生

経済学部の岡本弥准教授の3年次生ゼミではデータ分析を活用した企業の課題解決に取り組んでいます。今年度、協力を依頼したPORT STYLE株式会社(神戸市中央区)はショッピングモールを中心に帽子専門店「イチヨンプラス」を全国で34店舗展開し、品質の高さや価格設定を三つに絞り込む大胆な価格戦略で事業内容や規模を拡大しています。水木秀行社長と永田梨絵人事部長を前に3月7日、ゼミ生による最終プレゼンを行いました。

ゼミでは昨年4月、同社を初めて訪問し、水木社長と永田人事部長から事業に関する説明を受け、「接客に従事するパートタイマーや学生アルバイトの確保が年々難しくなっており、比較的短期間で退職するケースも増えている」との話を聞きました。「店舗を増やすためには避けて通れない問題」という水木社長の言葉から、人材確保を今年度の「解決課題」に設定しました。

まず、帽子を含むアパレル製品市場や同業他社の販売戦略などを調べるところからスタートしました。次に、複数の店舗を見学し、商品のレイアウトや顧客層の違いを確認しました。このような取り組みから、課題の背景に対する関心や理解が深まり、徐々に解決に向けたアイデアをひねり出すことができるようになりました。

並行して、東京大学SSJデータアーカイブから取り寄せたアパレル業界の雇用に関するデータや政府の公表統計をベースに、統計分析手法の一つである回帰分析を用いて、考え出した解決方法が妥当なものか綿密に検証しました。上記の課題解決に加え、関連する環境条件などから、帽子の売上を伸ばす方法についても考えました。

最終プレゼンではまず、川本健さんが「帽子と一緒に購入される傾向がある財」について報告しました。データ分析から、年間を通じて、帽子と子ども服が一緒に購入されることが分かり、着ぐるみをはじめ、子どもが興味をもつような商品を店舗に置くことで、帽子の購買意欲も高まることを説明しました。また、季節に注目すれば、通常、夏によく売れるサンダルが春に、冬によく売れるマフラーやスカーフが秋にそれぞれ帽子と一緒に購入されるという結果から、思いきって季節を先取りした帽子を店頭に置くことを提案しました。水木社長から「子ども服を販売する店舗の近くに出店した店では、今のところ、そうした効果を実感できずにいるが、興味深い情報なので、子どもへのアピールの仕方を工夫し、今後の出店計画に反映させたい」とのコメントがありました。

続いて、山本悠陽さんが「帽子の購買行動と時季、気温、降水量との関係」について報告しました。まず、分析の対象となった東京23区、大阪市、神戸市のいずれの地域でも、例年に比べて12月に気温が低いと帽子の売上が伸びることが分かり、例年よりも12月に寒くなると予想される場合、あらかじめ、冬物の商品ラインナップを強化すべきではと提案しました。次に地域別では、3地域のうち神戸市のみで例年よりも5月の降水量が多いときに売上が上昇する傾向が確認されました。その場合、例えば5月の大型連休に遠出をあきらめ、ショッピングモールを訪れる人が増えると予想されることから、神戸市のイチヨンプラスの店舗で商品在庫を増やすとともに、大胆な割引を行うことで購買意欲を高めることができるのではと提案しました。水木社長から「秋冬期(9月~12月)は春夏期(3月~8月)に比べて売上が伸びない傾向がみられるが、暖冬がその理由だとすれば(特に12月に寒くなるほど売上が伸びるという結果は)納得できる。一方、雨の日は売上が伸びないと経験的に感じていたが、自社のデータを用いて、5月~6月の動向を再確認したい」とのコメントがありました。

最後に、山本さんと川本さんが接客に従事するパートタイマー・学生アルバイトの確保や定着を促す方法について説明しました。分析対象を「アパレル小売業で働く非正規労働者」に絞り、仕事から得られる満足度がどのような要因によって高まるか検証した結果、上記従業員が「勤務時間を自由に選べる」、「業務全体を理解できている」、「働きに対する正当な評価を得ている」と感じる場合に満足度が上昇することが分かりました。

中でも、「働きに対する正当な評価を得ている」と感じる場合により大きい満足がもたらされており、背景にある要因を探ったところ、OJTが綿密に運営されている職場でそのような認識が高まることも明らかになりました。近年、OJTが希薄化する傾向がみられますが、しっかりとしたOJTを提供することが企業からの期待の表れと従業員に好意的に受け取られていることから、「マンパワー不足の中でも引き続き、OJTの拡充に力を入れられては」と提案しました。

永田人事部長から「OJTの主な対象となる新人さんパートタイマーや学生アルバイトの方々が評価を気にしているという点が新たな気づきだった。ただレクチャーをするだけでなく、出来ていること出来ていないことに対して評価を伝えていくことが重要ということを社内で共有していきたい」とのコメントがありました。

岡本准教授は「水木社長、永田人事部長、その他PORT STYLE株式会社の皆様に1年間、ご協力頂き感謝しています」と話しています。