土曜公開講座「宗教は資本主義の夢を見るか 90分de『プロ倫』」を開催しました
2024/10/23
10月12日、ポートアイランド第1キャンパスで経営学部の松田裕之教授による土曜公開講座「宗教は資本主義の夢を見るか~90分de『プロ倫』~」を開催し、94人が参加しました。
まず、本講座の狙いとして、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」、通称『プロ倫』を読み解きながら、宗教の本質に迫りますと伝えました。
『プロ倫』とは、マックス・ウェーバーが著した論文で、キリスト教(特にプロテスタント派)の教義が近代資本主義の営利精神を育てたという壮大な歴史理論を世に問うたものです。昨今、宗教がらみの凶悪事件や悲惨な事件が後を絶たないのは、宗教自体の中に、危うい要素が内在しているのではないかと話しました。宗教は人間の知的な創造物であり、創造した人間の「御都合主義」も教義の中に組み込まれて正当化され、信仰する人々(信者)の思考や行動を支配していくことと説明。「宗教は怖い」というのは、そのメカニズムにあり、大切なのは「怖い」をもたらすメカニズムであると解説しました。
続いて、三大宗教について説明しました。そのなかでもキリスト教は、イエスとその弟子が勢力拡張を明確に意識した信者獲得システムを作り上げた点で、世界規模での展開に最も成功したモデルであると話しました。
次に、キリスト教は信仰メカニズムの完成度が高く、宗教の普及活動のルーツであり、近代資本主義企業の経営にも大きな影響を与えたとマックス・ウェーバーが述べたと話しました。また、近代資本主義はイギリス、オランダ、ドイツ北部、 そしてアメリカなど、主として欧米のプロテスタント地域で発展しているこれらの地域が近代資本主義をいち早く実現して強固となった事実について話しました。勤勉な労働の成果である利潤を節約して無駄な消費=浪費に回さなければ、余った利潤は「資本」となって職業に再投資される。こうして結果的に、営利活動が積極的に推進され、資本主義的なプロセスが生まれた、とウェーバーが脈絡付けたと説明しました。
最後に、社会不安の増大を背景にビジネスとしての新宗教が登場し、深刻な社会問題となっていることを説明しました。新宗教の中には悪質な宗教団体が存在し、そのような団体の活動に巻き込まれると、貴重な時間が奪われ、正常な生活が送れなくなったり、家族や友人との関係が壊されたりしてしまうとした上で、本学の取り組みを紹介し、悪質な宗教団体の勧誘に関する「傾向と対策」の事例をあげて、自らを守るための注意を呼びかけました。
参加者は「哲学的な内容もあり興味深かった」「宗教に対する考え方やシステム等新しい見解がもてた」「宗教の流れがよく理解できた」など多くの感想を寄せました。
次回10月26日の講義は、グローバル・コミュニケーション学部の森下美和教授による「日本の言語景観-観光と英語教育の観点から-」です。