平成29年九州北部豪雨災害緊急支援ボランティア(第1陣) 活動報告書
日時 | 2017年8月2日(水)~3日(木) |
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主催 | 神戸学院大学災害支援対策本部(本部長、学長) |
協力 | 神戸学院大学教育後援会 神戸学院大学同窓会 |
参加 | 学生12人(現代社会学部社会防災学科生)、引率2人(同学科教職員) |
1. 行き先
福岡県朝倉市杷木寒水99-2 朝倉市杷木サテライト
住所:福岡県朝倉市杷木寒水99-2 朝倉市杷木老人福祉センター
概要
福岡県の中央部に位置し、市内の南側が盆地、北側が山地である。5万人程度の町である。
今回、最も大きな被害のでた地域である。全域にわたり、大規模な土砂崩れと河川の氾濫による土砂、大量の流木が住宅や田畑に流入している。杷木地区では、消防が、捜索作業にあたっている。また重機による、泥かき出し作業が主に実施されていた。市街中心部の道路は、広く、通行に支障はないが、山間部の道路は通行止めや片側通行の状態である。
災害ボランティアセンターは、7月9日より朝倉球場において開設されていたが、8月2日より本所を旧杷木パレス(朝倉市杷木久喜宮1594-2)に設置。br>
今回我々が訪れたのは、朝倉市災害ボランティアセンター杷木サテライト(朝倉市杷木老人福祉センター)である。駐車場は確保されており、マイクロバスの停車は可能(駐車は不可)。ボランティアのニーズが最も多い地区であると考えられる。
人口
54,325人
- 男性
- 25,603人
- 女性
- 28,722人
- 世帯数
- 21243戸(平成29年7月末日時点)
出典:朝倉市役所
2. 朝倉市の被災状況
被害状況
①人的被害 | 39人 | |
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死者 | 29人 | 男性 11人 女性 18人 |
行方不明者 | 5人 | 男性 人 女性 人 |
負傷者 | 5人 | 男性 人 女性 人 |
①人的被害 | 29人 | |
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死者 | 29人 | 男性 11人 女性 18人 |
行方不明者 | 名 | 男性 人 女性 人 |
負傷者 | 人 | 男性 人 女性 人 |
②住宅被害 | 913件 | |||
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区分 | 件 | 地域別内訳(旧市町村単位) | ||
甘木地域 | 朝倉地域 | 杷木地域 | ||
全壊 | 143件 | 15 | 11 | 117 |
半壊 | 552件 | 162 | 235 | 155 |
一部損壊 | 件 | |||
床上浸水 | 件 | ※床上浸水件数はすべて全壊・ 半壊件数に含まれています。 |
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床下浸水 | 218件 | 64 | 107 | 47 |
②住宅被害 | 件 | |||
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区分 | 件 | 地域別内訳(旧市町村単位) | ||
甘木地域 | 朝倉地域 | 杷木地域 | ||
全壊 | 件 | |||
半壊 | 件 | |||
一部損壊 | 件 | |||
床上浸水 | 件 | |||
床下浸水 | 件 |
③非住宅被害 | 2件 | |||
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区分 | 件 | 地域別内訳(旧市町村単位) | ||
甘木地域 | 朝倉地域 | 杷木地域 | ||
全壊 | 1件 | 1 | ||
半壊 | 件 | |||
一部損壊 | 件 | |||
床上浸水 | 1件 | 1 | ||
床下浸水 | 件 |
③非住宅被害 | 件 | |||
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区分 | 件 | 地域別内訳(旧市町村単位) | ||
甘木地域 | 朝倉地域 | 杷木地域 | ||
全壊 | 件 | |||
半壊 | ||||
一部損壊 | 件 | |||
床上浸水 | 件 | |||
床下浸水 | 件 |
④その他被害 | 755件 | |||
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区分 | 数 | 地域別内訳(旧市町村単位) | ||
甘木地域 | 朝倉地域 | 杷木地域 | ||
道路 | 389件 | 68 | 196 | 125 |
橋りょう | 23件 | 10 | 3 | 10 |
河川 | 228件 | 84 | 32 | 112 |
土砂災害 | 46件 | 21 | 18 | 7 |
農林水産 | 61件 | 25 | 29 | 7 |
その他 | 8件 | 4 | 2 | 2 |
断水 | 件 |
④その他被害 | 件 | |||
---|---|---|---|---|
区分 | 数 | 地域別内訳(旧市町村単位) | ||
甘木地域 | 朝倉地域 | 杷木地域 | ||
道路 | 件 | |||
橋りょう | 件 | |||
河川 | 件 | |||
土砂災害 | 件 | |||
農林水産 | 件 | |||
その他 | 件 | |||
断水 | 件 |
平成29年8月7日 9:00時点
出典:朝倉市役所
降水量
545.5mm(7月5日 0時~7月6日 24時)
※同地区の24時間降水量として観測史上1位
避難所人数(8月7日 9:00時点)
⑨避難者数 | 246世帯 | 491人 | |
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避難所名 | 世帯数 | 人数 | |
ピーポート甘木 | 46世帯 | 88人 | |
朝倉地域生涯学習センター | 28世帯 | 57人 | |
らくゆう館 | 43世帯 | 92人 | |
三奈木コミュニティセンター | 17世帯 | 42人 | |
杷木中学校 | 64世帯 | 129人 | |
サンライズ杷木 | 48世帯 | 83人 |
出典:朝倉市役所
朝倉市へのアクセス
JR博多駅より車でおよそ45分(福岡空港からも同程度と思われる)
朝倉市杷木サテライトは高速杷木ICを降りて左折後すぐ
宿泊先
ホテルニュープラザ久留米
住所:福岡県久留米市六ツ門町16-1
TEL:0942-33-0010
銭湯
博多の森 湯処 月の湯
住所:福岡市博多区東平尾1丁目4-35
TEL:092-611-4126
4.行程
8月2日
時間 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
07:15 | JR新神戸駅 改札前集合 | |
07:48 | 新神戸駅発 ひかり491号(博多行き) | |
10:11 | JR博多駅到着 | |
学生は、マイクロバスにて朝倉市杷木ボランティアセンターへ移動 | ||
引率は、レンタカーにて朝倉市杷木ボランティアセンターへ移動 | ||
【活動内容】 住居納谷の泥だし作業(男子学生) 家屋の拭き掃除(女子学生) |
当初はボランティアセンターの運営補助を検討下さっていたが、人手不足もあり、現場での作業となった。 | |
15:30 | 活動終了 近隣の温泉施設にて入浴 |
入浴場所:ゆのやまの湯 |
16:45 | ホテルへ移動 | 杷木から久留米のホテルまで約1時間30分(高速使わず) |
18:15 | ホテル着、チェックイン | |
18:45 | ミーティング | ホテル一階ロビーにて、ミーティング |
19:30 | 夕食 |
2日午後、この日開所したばかりの朝倉市杷木町のボランティアセンターに到着すると、「現場に行ってほしい」との要請があり、快諾した。バスで2、3分の東林田地区に向かう。ここは、地区内を流れる赤谷川が氾濫し、大きな被害を受けた地区、死者は35人を超え、残った家屋のほとんどが、1階の2m辺りまで浸水し、全壊か半壊状態だった。
そのうちの1軒の被災者はご夫婦で2人暮らし。江戸時代末期から続く家柄で時川さんは七代目という。7月5日夕方5時に、避難指示が出た。裏手の赤谷川が溢れ、表側の田んぼが川のように濁流となり、両方から水が押し寄せてきた。水は一時、1階の1m50cmまで来て、妻と2人で2階に逃げた。7時ごろに一度水が引きかけたが、また増えた。水が引いたのは翌日の朝7時ごろ。救助に来た自衛隊の人におぶってもらった。向かいの田んぼのそばに経っていた3軒の家は流され、1軒は有明海で発見された。中の人は死んでいたという。ここで、2時間ほど、家の中の拭き掃除(女子)と倉庫内の泥出し(男子)をした。
8月2日活動の様子
8月3日
時間 | 内容 | 備考 |
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08:00 | ホテル出発 | 久留米ICから杷木ICまで約50分 高速道路使用 |
09:00 | ボランティアセンター到着 | |
09:45 | 現地の指示に従い、活動開始 | |
【活動開始】 家屋の片づけ、流木の処分 家財の掃除 土嚢の積み上げ |
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途中、昼食 | ||
15:30 | 活動終了 | |
16:00 | 入浴施設へ移動 | |
17:00 | 入浴施設到着、各自入浴 | 杷木ICから約1時間 高速道路使用 |
18:30 | JR博多駅へ移動 | |
19:00 | JR博多駅到着、各自夕食 | |
20:51 | JR博多駅発 ひかり444号(新大阪行き) | |
23:19 | 新神戸駅到着後、解散 | 途中、加古川で下車(学生2人) 新大阪駅で下車(学生3人) |
2日目の3日は、同じ東林田地区の被災者(高齢夫婦)の自宅。前日と同じ地区ながら、濁流で完全に通行不能になり、車で大回りして行かなければならない場所だ。ご主人によれば、5日午後4時ごろ、区長が前の赤谷川の様子を見に来た際、「これは危ない」とつぶやくのを聞いて、妻と2人で逃げる覚悟をし、軽自動車で2キロ離れた公民館に逃げた。娘は勤め先だった。それが良かった。濁流は1階のベッドルームを押しつぶして、100坪ほどの大きな2階建て民家の半分を壊した。実質全壊だ。この方も江戸期から十代目の名家。「生まれてずっとここで育ったが、こんなことは初めてだ」と吐き出した。家族3人で隣町での避難所生活だが、昼間に妻と2人で家や庭を片付ける。2人とも教職者で、矍鑠としておられた。ここの活動は、庭木を切ったり、泥出しをしたり、家具の泥を拭いたりと多種多様。午前2時間、午後2時間以上働いた。
8月3日活動の様子
5.視察状況
1)杷木地区周辺
杷木地区の被害を見て回った。南側に筑後川が流れ、そこにいくつかの小さな河川が流れ込む地区。この普段は、おとなしくさらさらと流れる川が大水となって各地区を襲った現地の方によると、赤谷川も普段は小川のように流れる蛍が来る静かな川だという。大水に伴って出た流木が一層被害を拡大させたらしく、杷木町の地区川沿いは大きな被害を受けていた。ボランティアセンターに張り出していた地図によると、寒水(そうず)、古賀本村、古賀浜川、寒水浜川、池田、東林田の各地区の被害が大きく、ボランティアが分散して活動した。
2)大分県日田市大鶴地区
死者5人を出した隣の大分県日田市大鶴地区を訪れた。ここは大肥川の溢水と小さな山崩れが頻発した地区である。日田市立静修小学校のグラウンド内にボランティアセンターを設立した。南北5キロほどに被害が点在しており、ボランティアセンターの人によると、ほとんどの家の泥出しなどは済み、この日は、週末に来るかもしれない台風に備えて、水路の確保をボランティアの人たちにやってもらっているという。ボランティアは点在する被災地の各所に散らばっており、数は把握できなかった。この後、さらに山間部を奥に入った福岡県東峰村の宝城山ボランティアセンターにも寄ったが、時間がなく、さらに、今後、支援が最も必要な地区は杷木町周辺だと確信したので、詳しい話は聞かなかった。日田市は江戸時代の天領であり、豆田地区は江戸情緒を残す町並みだったことを追記しておく。
6.次回以降の活動の注意事項
(1)体調管理
今回8月2日、3日の現地最高気温は37℃、最低気温でも26℃と、酷暑の中での作業となった。
15分ごとの休憩をとり、体調の管理に努める事が非常に重要。その際に、水分だけでなく、塩分もしっかりと補給する。現地でも連日ボランティアが熱中症により搬送されているとの情報あり。
学生はどうしても頑張ってしまうので、引率者がコントロールする必要がある。
(2)活動中の注意点
泥だしの作業を行ったが、泥の中にガラスや木材が隠れている場合があるので、手袋だけでなく、ゴム手袋も併せて装着し、作業を行うべき。
今回は12人の学生が1グループで作業を行えたが、今後は2グループ、3グループと複数の場所にわかれるケースも想定される。その際の連絡方法や等はしっかりと決めておく必要がある。
最後に、わずか2日間の活動ではあるが、今回の水害の被害の中心地は、朝倉市杷木町周辺であることが分かった。今後のボランティア支援を続けるのであれば、この地区が適当であると考える。とくに東林田地区はまだボランティアの支援が入っていない家も多く、しばらくは、ボランティアの手が必要だと痛感した。
以上