大学と地域をつなぐ地域研究センター
神戸学院大学は、地域の住民・産業界と共に進化する大学を目指すことを大学憲章に掲げています。神戸学院大学地域研究センターはこの理念に沿って設立され、これまで文部科学省学術フロンティア推進事業による「阪神・淡路大震災後の地域社会との共生をめざした大学の新しい役割に関する実践的研究」(2002~2009年度)、文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業による「地域力再発見をめざす大学と地域との連携・協働による実践的研究」(2011~2013年度)を実施してきました。現在はその過程で培われた大学と地域との協働・連携の絆を生かして、地域研究長田センターを中心とした神戸市長田エリアにおける地震防災・まちづくり支援活動、地域研究センター明石ハウスを中心とした明石エリアにおける文化・芸能・民俗の保存・活性化、などのさまざまな活動を展開しています。
明石グループは有瀬キャンパスに隣接する地域社会で、地域と大学の協働を模索する研究を学生を交えて行っています。具体的には明石市とその隣接する地域ー淡路島、加古川市などで、自然文化、歴史などの地域の魅力を再発見し、地域資源として確立をめざします。そしてそれらを地域外へ広く発信することによって、高齢者に生きがいを与え、若者に地域のよさを認識させ、地域の活性化に貢献することを試みています。また、研究・交流拠点「明石ハウス」を設け、さまざまな勉強会やイベントを開催しています。
テーマ1「文化資源の再発見やまちづくりへの参加」
地域と大学の研究・交流拠点「明石ハウス」
大蔵地域の古民家を利用した明石ハウスでは、地域の方々を交え、講演会「大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ」や記憶資料(文書、写真、体験談)の収集、写真展示、講座事業(くずし字解読講座)などを行っています。2020年度にはヒューマンサイエンスカフェをオンラインで開催し、明石ハウスを紹介する動画作成なども行いました。
<大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェの実績>
2017年度
第1回 「男女の話し方の違いはなぜ生じるのか」
講師:出水孝典(人文学部・教授) 日時:2017年6月14日(水)
第2回 「明治大正時代の映画館」
講師:上田 学(人文学部・准教授) 日時:2017年8月2日(水)
第3回 「グローバル・ヒストリーで読み解く世界史」
講師:北村 厚(人文学部・准教授) 日時:2017年11月1日(水)
第4回 「神になった人麻呂-鎌倉・室町時代の和歌秘伝-」
講師:中村健史(人文学部・准教授) 日時:2017年11月29日(水)
第5回 「アタシノアカシ①-新年明石伝説物語」
中山ゼミ2回生 日時:2018年1月29日(月)
第6回 「近代劇と女優ー貞奴と須磨子を手がかりに-」
講師:伊藤 茂(人文学部・教授) 日時:2018年2月21日(水)
2018年度
第1回 「忘れられた明石八景—俳諧師・西山宗因―」
講師:中村健史(人文学部・准教授) 日時:2018年5月30日(水)
第2回 「基本イメージから考える英語の前置詞・副詞―空間を表す語を中心に―」
講師:熊田俊二(人文学部・教授) 日時:2018年6月13日(水)
第3回 夏休みワークショップ「地震の話―実験してみよう!どこまでできそう?地震予知」
講師:大塚成昭(人文学部・教授) 日時:2018年7月20日(金)
第4回 哲学カフェ「『罪悪感』とはなんだろう・『選ぶ』とはどういうことだろう」
講師:今野未来(人文学部・卒業生) 日時:2018年10月31日(水)
第5回 「記憶から歴史を物語る―大蔵地区の記憶継承の拠点構築に向けて」
講師:三田 牧(人文学部・准教授) 日時:2018年11月28日(水)
第6回 リーディング公演「アタシノアカシ第3弾―声で届ける物語」
公演:人文学部中山ゼミ3回生 日時:2019年1月23日(水)
第7回 「明石原人って何?―明石人と日本の旧石器時代―」
講師:早木仁成(人文学部・教授) 日時:2019年2月20日(水)
2019年度
第1回 明石の文学シリーズ第1回「新元号『令和』と明石」
講師:中村健史(人文学部・准教授) 日時:2019年5月22日(水)
第2回 「こんばんは、夜勉です」
講師:水本浩典(人文学部・教授) 日時:2019年6月26日(水)
第3回 「スコットランド:ウイスキーとツーリズム」
講師:春日雅司(人文学部・教授) 日時:2019年7月31日(水)
第4回 明石の文学シリーズ第2回「明石と蛸、そして芭蕉」
講師:中村真理(関西大学非常勤講師) 日時:2019年10月30日(水)
第5回 「日本語を分析してみる」
講師:野田春美(人文学部・教授) 日時:2019年11月20日(水)
第6回 「絵画に描かれたクリスマス」
講師:倉持充希(人文学部講師) 日時:2019年12月25日(水)
第7回 明石の文学シリーズ第3回「アタシノアカシ第5弾―声で届ける物語2」
公演:人文学部中山ゼミ3回生
第8回 「明石ゆかりの歌人・詩人たちと梅」
*新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止
講師:川上萌実(日本学術振興会特別研究員)
2020年度
オンライン開催
・「明石ハウスで明石の和歌 第1回 柿本人麻呂」/ 中村健史(人文学部・准教授)
・「明石ハウスで明石の和歌 第2回 山部赤人」 / 同上
・「明石ハウスで明石の和歌 第3回 細川幽斎」 / 同上
文化資源の発掘と活性化
明石市は歴史も古く、豊かな自然環境や伝統文化に恵まれた魅力的な地域です。伝統文化が地域においてどのような役割を果たしているのか、またどのような課題に直面しているのかを調査・研究するため、稲爪神社(明石市大蔵本町)の秋例大祭に学生たちが参加し行事全体の参与観察を行い、地域資源のついて研究を行うとともに、献灯屋台や女衆御輿を担いで伝統文化行事を学んでいます。
(早木・鹿島・三田・矢嶋・福島ほか)
連携先:稲爪神社、大蔵谷獅子舞保存会、大蔵谷西之組獅子舞保存会、明石市中崎まちづくりの会ほか
アクティブラーニングで地域を活性化
地域研究センターでは、協働している稲爪神社(明石市大蔵本町)で、2011年度から正月写真展、2013年度から夏祭写真展をそれぞれ開催しています。
基礎演習や実践演習、専攻演習の一環で、学生や教員が大蔵谷地区において撮影した四季折々の催事や地域の人々、街の風景の作品を展示してきました。2020年度は、これまでに学生や教員が撮影した写真を展示しました。アーカイブとして今後も地域の写真記録が蓄積されていくことが期待されています。(矢嶋)
連携先:稲爪神社、稲爪神輿青年団、大蔵谷獅子舞保存会、大蔵谷西之組獅子舞保存会ほか
テーマ2「伝統民俗文化や地場産業の地域との協働研究」
大都市郊外地域における価値の再発見と持続のためのアクティブラーニング研究
人文学部専攻演習矢嶋ゼミ(3年次)では、兵庫県加古川市西部地域の近郊農村や郊外住宅団地において、学生がアクティブラーニング研究を行っています。都市近郊農村の価値を再発見して、将来にわたる持続を考えることを目的とした地域研究センター協働研究として、2011年度から継続してきました。2019年度は、農村と住宅団地の町内会長や農業関係者、ボランティア団体、寺、企業に聞き取り調査を行いましたが、コロナ禍に見舞われた2020年度は、キャンパスが位置する神戸市西区の都市近郊農村の変容を研究し、花卉農家にオンラインで聞き取り調査を行いました。コロナ禍が収束した際には、加古川市の近郊農村や郊外住宅団地でアクティブラーニングを行い、学生が地域社会やビジネスの現場を実践的に学ぶ研究に取り組んでいく予定です。
(矢嶋)
連携先:加古川市富木・西脇町内会、富木・西脇営農組合、兵庫県東播磨地域ビジョン委員会、兵庫県東播磨県民局
長田センターは、地域の方と協働して研究を行う拠点として2009年に設立されました。地域の方々のさまざまな関心に応えるため、設立時に地震および気象の観測測器を設置し、今日まで観測を続けています。風向、風速、温度、湿度、雨量、日射量、紫外線量、気圧、震度、地下水温、地下水位を測っており、そのデータを使って海陸風に関する研究を学生と進めており、一部を神戸市からの委託事業「異常高温対策に関する調査報告(2018年度)」に活用しました。またこれらの観測データは、神戸市内の小中高校の教材として、ぜひ活用していただきたいと考えています。
(福島)
センター長 野田 春美(人文学部・教授)
主な参加研究者 早木 仁成(人文学部・教授) 地域社会と大学の連携に関する研究
中山 文 (人文学部・教授) 地域の演劇文化振興に関する研究
鹿島 基彦(人文学部・准教授)粉もん食文化形成の自然環境要因に関する研究
中村 健史(人文学部・准教授)明石に関する国文学作品の研究
三田 牧 (人文学部・准教授)地域の記憶継承に関する研究
矢嶋 巌 (人文学部・准教授)地域の環境や社会の持続に関する研究
福島あずさ(人文学部・講師) 気象環境教育や快適な住まい方に関する研究
金 益見(人文学部・准教授)地域の社会や文化の持続に関する研究
鈴木 遥 (人文学部・講師) 地域社会における移住と資源利用に関する研究