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地域研究センター概要

研究プロジェクトの位置づけ


 本学は教育・研究上の理念を「神戸学院大学憲章」に掲げ、その第2章で「地域の住民・産業界と共に進化する大学」をめざす目標としている。神戸学院大学地域研究センターはこの理念に沿って設立され、これまで学術フロンティア推進事業を実施するなど、先進的共用研究組織として大きな役割を果たしてきた。本プロジェクトは、その地域研究センターが主体となって学術フロンティア推進事業を発展させ、より積極的に地域社会と協働し、地域力と地域資源の活性化を通じて斬新な研究モデルの創造を図るとともに、新しい学びのモデルを創出して「地域と共に進化する大学」という理念を具現化する役割を担うものである。

研究プロジェクトの意義・目的


1.新規プロジェクト立案までの経過
  本研究の基盤は、平成14〜21年度、学術フロンティア推進事業「阪神・淡路大震災後の地域社会との共生をめざした大学の新しい役割に関する実践的研究」である。「地域と共生する大学」を念頭に、大学と地域との信頼関係と協力関係を構築することをめざしてきた。心理学や地震・防災学などの8つの専門研究分野が地域の抱える問題に取り組み、多くの成果をあげたことが評価されると同時に、被災地と共生する大学像のより鮮明な確立を課題として与えられ、地域研究のさらなる深化の重要性・必要性を痛感した。

2.プロジェクトの目的
  現在、地域社会は若年層の流出や少子高齢化の進行により地域全体の活力や余裕が衰退し、多くの人が生きがいをもてない状態が続いている。私たちは学術フロンティア推進事業で培った地域と大学との連携・協力関係のなかで、地域社会が大学との緊密な連携に期待を持っていることを感じとってきた。そこでこの閉塞的状況を打破し、新しい社会展望を示すために、新しい目標と展望のもとで「地域に根差した」研究を発足させることにした。
 本研究は、地域の人々とさまざまな形での協働研究を展開することにより、地域の人々とともに地域に内在するさまざまな力を掘り起こし、地域の資源として再構築し、よって地域社会の活性化に貢献する。あわせて大学の新たな研究スタイルと学びのモデルを創出しようとするものである。

3.研究計画と方法上の特色
地域特性の違う地域の設定
有瀬キャンパスエリアと長田エリアの全く地域特性の違う2地域をフィールドとすることで比較検討を可能にした。
地域交流型研究と地域融合型研究の設定
 有瀬キャンパスエリアは大学と地域との相互交流を前提にした研究を実施。長田エリアでは、地域と大学が融合した研究手法を実践する。(図1)
地域力の再発見・成長への協力の手法の系統化
@ 6つの研究フィールドの設定
地域力再発見の対象として、(1)自然・風土、(2)伝統・民俗、(3)産業・経済、(4)趣味・文化、 (5)学習・成長、(6)安心・安全、の6つの研究フィールドを定める。(図2)。
A 4つの協働研究タイプの設定
協働の方法としては、4タイプを想定している。(1)地域既存の活動に加わる(参加協働型)、(2)地域と活動を立ち上げる(発掘協働型)、(3)地域に対して企画を提案する(提案協働型)、(4)地域の要望に応えて支援する(要望対応協働型)である。これらの中から個別の場に応じて最適のアプローチを選び、効率的かつ実践的に研究・教育を推し進める。
 これら研究フィールドと協働研究タイプを組み合わせることによって、研究チームは、例えば(1)観光に適した自然・風土(歴史的財産を含む)の再発見チーム、(2)映像等を活用した伝統的地域文化・民俗の再発見チーム、(3)商店街や地域産業・イベント等の協働研究チーム、(4)芸術・文化を発信する地域拠点協働研究チーム、(5) 子ども・青少年・高齢者への地域支援協働研究チーム、(6)震災体験・防災意識・防災体制協働研究チームなどを計画している。これらのチームが地域との協働を基盤としてそれぞれの目標を追求するとともに、他チームが有機的に連携し、地域全体としての地域力・地域資源の掘り起こしをめざす。

4.地域融合型研究の拠点装置として「地震・環境計測システム」を設置
 激甚災害地域であった長田エリアにおいて、地域と大学が協働して研究する装置として設置する。研究方法は、提案協働型タイプを採用し、地域の小学校・中学校・高等学校と協働で地震や環境に関する基本的計測を実施し、地域社会に対して、防災教育・減災への啓発などの発信拠点とする。

5.学術的な意義と成果
これまでの地域研究について二つの課題が指摘されてきた。
 一つは、研究は大学主体で、地域は研究対象という構図である。しかし、地域をそのように受動的に捉えているだけでは地域力は発見できない。むしろ,地域力はすでに地域の中にあるということを前提にして、それを協働で再発見し活性化することこそが実践的かつ確実な研究手段となる。
 二つ目は、大学の専門領域間の縦割りシステムである。いくら地域を対象にしても、研究者間の連携がなくては有機的な地域研究にはならない。本研究では、専門横断的なタスク・チームを組織し、多様な視点から一つの課題に取り組むことにした。チーム間の研究者の配置も流動性を確保し、必要なところに必要な専門家を送り込む。

 以上のアプローチによって、本研究は、次の3点、(1)「地域社会」(2)「大学教育」(3)「専門的研究領域」への貢献が期待できる。
(1)「地域社会」への貢献――自然文化、歴史などさまざまな角度から地域社会との協働によって地域の魅力を再発見し、地域資源として確立するとともに、地域外へ広く発信することによって、高齢者に生きがいを与え、若者に地域のよさを認識させ、子どもに安全な環境を与え、地域の活性化と安全の向上に貢献することができる。
(2)「大学教育」への貢献――現在の大学教育では知識の習得ばかりではなく、実際の社会において運用する能力がつよく求められている。本研究では、大学生・大学院生を積極的に地域社会との協働研究に参加させ、地域の中でさまざまな問題に取り組む機会を作る。それによって、地域社会の持つ「地域力」と大学の持つ「教育力」を融合させた新しい大学教育モデルを創出できる。
(3)「専門的研究領域」への貢献――「参加」・「発掘」・「提案」・「要望」の4つのアプローチ方法を設定した協働を中核した地域研究こそ、大学と地域とが「共生」する新しい関係であり、同時に、本研究に携わる個々の教員が新しい視野と方法論を獲得し、新鮮な角度から専門領域の研究の深化を期待できる。
    

研究スタッフ

●研究代表者
伊藤 茂   (人文学部・教授)

●参加研究者一覧
寺嶋 秀明
  (人文学部・教授) 文化資源としての自然環境育成に関する研究
大塚 成昭  (人文学部・教授) 環境保護・防災意識啓発活動に関する研究
五十嵐 真子 (人文学部・教授) 統民俗と共同体の活力アップに関する研究
春日 雅司  (人文学部・教授) 新生活基盤としての伝統産業に関する研究
伊藤 茂   (人文学部・教授) 地域における伝統芸能継承に関する研究
中山 文   (人文学部・教授) 地域の演劇文化振興に関する研究
今西 幸蔵  (人文学部・教授) 地域における体力づくりと健康教育の研究
小石 寛文  (人文学部・教授) 地域への子育て支援に関する研究
清水 寛之  (人文学部・教授) 域住民の成長・発達に関する研究
水本 浩典  (人文学部・教授) 激震地長田区の震災資料保存に関する研究
日高 正宏  (人文学部・教授) 地域における心理支援者の育成に関する研究


上田 あすみ (RA) 2013年度
吉田 佳世  (PD) 2013年度
板山 昴   (RA)2011〜2012年度
釜床 美也子 (PD)2012年度
倉田 誠   (PD)2011年度
林田 怜菜  (RA)2011〜2013年度
細渕 清貴  (PD)2011〜2013年度