本学の薬学部は6年制の薬学教育を行っています。2012年に薬学研究科を開設するにあたり、さらなる薬学教育と研究の充実を図るため、その前年の2011年に独立行政法人理化学研究所と「教育・研究協力に関する協定」を締結。学部および大学院へ、連携先から研究員を派遣していただくなど、人材交流を中心にした活動を行っています。
また、本学薬学部の武田真莉子教授の研究チームが、注射による投与のみが行われているインスリンを飲み薬として使える技術を発表しました。この技術の開発の原動力となったのは、独立行政法人理化学研究所の分子イメージング科学研究センター(渡辺恭良センター長)との共同研究による成果です。武田教授は、現在、今回開発した技術を使って、アルツハイマー型認知症などの中枢神経系疾患にも有効な製薬医薬品の研究開発を進めているところです。
私は、経口薬を内臓の特定の部位に的確に運ぶDDS(Drug Delivery System)という技術について長年研究してきました。最近、膜透過ペプチドと呼ばれる天然由来のある物質が糖尿病治療薬であるインスリンを消化管から吸収させることに有効だとの研究成果を発表したのですが、その際の決め手になったのが理化学研究所の分子イメージング科学研究センターのPET(Positron Emission Tomography)を用いた解析でした。
生物を生きた状態のまま、生体内の遺伝子やタンパク質などのさまざまな分子の挙動を可視化して観察する技術のことを分子イメージングと言います。このPETを使うと精密な分子イメージングを行うことができ、リアルタイムにインスリンが研究用ラットの消化管から吸収されて肝臓や腎臓に分布していく過程が手に取るように分かったのです。つまり、分子イメージング科学研究センター長の渡辺恭良氏のチームとの共同研究がなければ、今回の成果への発展はなかったといってよいでしょう。
本学との連携においても、キャンパスのすぐ近くに国内でも最高峰の研究所があるということは大きなメリット。また、こうした研究をきっかけとして、理化学研究所の研究員の方を講師としてお呼びして講義を開講するなど、薬学部の学部生や大学院生の教育にも協力していただいています。今後も、さらなる交流を深めたいと思っています。
本学薬学部には研究者としても世界の第一線で活躍している教員が揃っています。世界最先端の医学・薬学に触れることができる環境で、ぜひ一緒に学びましょう。