大学院人間文化学研究科心理学専攻(修士課程)について
心理学専攻の概要
2008年4月に新しく開設される人間文化学研究科心理学専攻は、現在設置されている人間文化学研究科の、地域文化論専攻と人間行動論専攻に続く第3の専攻となります。新設される心理学専攻では、人間行動論専攻の行動発達論領域を発展させて心理学系と臨床心理学系の2つの系を設け、心理学の基礎と臨床・実践とを結びつけた大学院教育を実施。臨床はもちろん、子育てや学校、高齢者医療、一般企業といった幅広い「現場」で社会や個人と関わりを持って、豊かで幸福な暮らしを育み支える心理スペシャリストの養成を目指します。また、地域住民など一般の方々を対象とし、実際にカウンセリング業務を行う「心理臨床カウンセリングセンター」を併設し、研究現場と実践現場との結びつきを強め、地域社会との連携の強化を図ります。
学びの概要
《心理学系》
現在、人文学部人間心理学科は、発達心理学領域、臨床心理学領域、医療心理学領域、社会心理学領域の4つの領域に分かれています。このうち心理学専攻の心理学系では、研究科生は発達心理学領域、医療心理学領域、社会心理学領域の3つの領域を学び、発達心理学・医療心理学・社会心理学などを中心に研究していきます。
《臨床心理学系》
臨床心理学系では、臨床心理学やカウンセリング心理学を中心に学び、臨床心理学の基本的なトレーニングを修得していきます。また、カウンセラーやセラピスト、心理職など、心理学の専門家のうち臨床心理学を学問的基盤に持つ臨床心理士の養成を大きな柱とし、臨床現場で即戦力となれる人材を輩出するための実践的プログラムを組んでいます。
施設について
心理学専攻の主な研究フィールドは、本学有瀬キャンパスの14号館となります。幼児の遊び行動などの観察記録用の機材が充実している「行動観察室」など、臨床実験を行う教室のほか、さまざまな心理現象を計測することができる機器を備えた「生理心理学実験室」など、基礎的な実験実習に使用することのできる実験室を多く備えているのも本学の大きな特徴です。
※人間文化学研究科心理学専攻に関する詳細は、下記専用ホームページをご覧ください。
多様な教育、充実した施設を擁する
高度教育・研究機関が誕生
人文学部長
人間文化学研究科長
清水 寛之 教授
今回開設される心理学専攻の大きな特徴のひとつは、さまざまな資格の取得や受験資格の取得が可能であるということです。まず、臨床心理学系に進学して修了すれば臨床心理士の受験資格が与えられます。また、学校心理士や臨床発達心理士の資格取得が、臨床心理系だけでなく心理学系でも可能となっています。さらには、高等学校の公民の専修免許状も取得可能であるなど幅広い資格に対応しています。もうひとつの特徴は、心理学にかかわる実にさまざまな分野の専門家が教員として教鞭をとっているということでしょう。臨床心理士資格や精神保健福祉士資格を持つ教員はもちろん、専任教員として3人の医師が在籍しています。教員免許を持つ教員も複数おり、心理学専攻は教員全員が有資格者で構成されているのです。現在の心理学の学びにおいては、心理学だけでなく医療現場や法律にかかわる分野など、さまざまな領域の知識がなければ実際の社会で役立つスキルを修得することができません。そうした意味において、多様な立場の多様な資格を持った教員が密に連携しながら教育に取り組むことができ、さまざまな研究機器や装備・装置などが整備された充実した施設で学ぶことができる心理学専攻は、研究科生にとって、ハードとソフトの両面で大変恵まれた環境が整っていると言えるのではないでしょうか。
大学院人間文化学研究科心理学専攻に
入学するにあたって
赤堀 富子 さん(あとりえ・クルレ 代表)
私は、20年ほど前から子どもたちのための絵画教室を開いています。当初は文化教室を間借りして土曜日の週1回のみの開催でしたが、2004年からは独立したアトリエで子どもたちに教えるようになりました。現在、教室のメンバーは80余人ですが、いわゆる健常者の子どもたちとともに、その半数はダウン症や自閉症など発達障害を抱えた子どもたちです。そうした子どもたちの中には、同じような年齢で円しか描けない子がいるかと思うと、とても完成度の高い繊細な絵を描く子もいます。一方で、健常児の中にも、絵が不得手な子もいるのです。発達障害があるなしとは無関係なこのような事実を目の前にして、私は、脳や心の不思議を理解したいと考えるようになりました。そして、このようなことを研究している学問が“描画発達”という「心理学の分野」であること、障害児発達の専門家であり、著書を幾冊か読ませていただいていた小山正教授が、2004年に開設された人文学部人間心理学科に他大学から転籍してこられるということを知りました。小山先生をはじめ、心理学のいろいろな分野のすばらしい先生がたくさんおられるということもあり、同年に科目等履修生として本学に飛び込んだのです。私が心理学を勉強したいと思った第一の理由は、教室に来てくれている子どもたちを心理学の助けを借りながら支援することにあります。結果として4年間で70単位を越える単位を取得し、心理学の学士号(独立行政法人学位授与機構による)を取得しましたが、子どもたちをより理解するためにはもっと勉強しなければと考え、先生方のご助言をいただいたこともあり、最終的には大学院でさらに研究を続ける道を選択しました。試験に臨むにあたっては、英語の論文和訳が一番問題になりました。専門用語を英語で覚えることや、英語の論文を読むことも難しく、結果的には、約2ヶ月間日本語で翻訳された論文を大量に読破しました。そのかいもあって、無事合格を手にすることができました。大学院では、20年来のアトリエでの経験をもとに、自閉症児や知的障害児の描画発達や発達支援に関する研究を進めていきたいと考えています。今後研究を続けていくにあたっても、観察者として子どもたちを眺めてただ分析するのではなく、彼らといつまでも趣味を通じた付き合いを続けて行けるような存在になりたいと考えています。