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神戸学院大学が育てるデータサイエンス人材
小川:データサイエンス教育は、今年度から全学的なカリキュラムとして取り組み、文部科学省のリテラシーレベルの認定を取るべく現在進行しているところです。全学部の1年次生およそ2,800人中、400人程度が前期のデータサイエンス基礎を履修しました。神戸学院大学としてデータサイエンス教育を強力に推進していくなか、経営学部のデータサイエンス専攻としての教育が、どう発展していってほしいと思われますか。
辻:経営学部には起業の夢をもった学生も入学してきますが、現実には資金面などいろいろな壁があり、ビジネスプランを立てられない学生も多くいます。ここまで売らなければ家賃や光熱費も出ないという、損益分岐点が見えていなかったりします。その部分のリアルさを身につけられれば、起業家も出てくると思うのです。今や終身雇用の時代は過ぎ去っていますし、若い起業家が出なければ日本の活性化も期待できません。データサイエンスからリアルを学んで、二十代で起業するような人材を育成できれば、もっと未来が楽しくなるのではないでしょうか。
石賀:辻先生がおっしゃる通り、先行きを数字で固めることは、金融の中でもすごく大事です。そのうえで育てるべきものが二つあって。一つは、データがいつもと違う動きをしているから社会情勢がこう変わるであろうといった、データが語ってくるものを感じることができる感性。もう一つは、リーマンショックやコロナウイルスのパンデミック、自然災害などが起きてしまった場合に、金融としてどうすればいいか、データに語らせるスキルです。それらを育むことが重要になってくるのではと思っています。
齋藤:私も皆さんが言われたように、経営学とデータサイエンスから価値を生みだせる人材を育て、いろんな分野で活躍していただきたいと思っています。就職先として企業はもちろん行政もありますが、そこでもまた、後進の育成に邁進できる人を育てられればと思っています。人材の質が上がれば社会全体の質が向上し、安定した社会にもつながっていきます。ただ単に経済合理性を求めるのではなく、安定した社会を実現するための人材育成に寄与できればと願っています。
小川:セキュリティの面でも活用の面でも、「この人にならデータを預けても大丈夫」と思ってもらえるような人材を育てたいです。そのためにはやはり、社会との関わりを意識しなければなりません。経済、制度、法の規制、人の行動など、さまざまなことを学ぶからこそできるものでしょうから、まずは経営学部がデータサイエンスの先頭を走っていければと考えています。
では最後に改めて、データサイエンス専攻開設に向けての意気込みやデータサイエンスに興味のある方へのメッセージをお願いできればと思います。
石賀:経営学部なので、理系のセンスも入れた経営者を育てたいです。文系の人でもデータを扱うことに興味をもって目を輝かせるようなカリキュラムにしたいです。データも経営もやってみたい方がいればぜひ、チャレンジしてもらいたいです。
辻:データを使って起業したいと思っている人が入学してくれたらうれしいです。失敗もあると思いますが、それができるのは実社会ではなく大学での学びの良さでもあります。ぜひデータサイエンスを使って在学中にトライしてほしい。実践をリアルに学ぶアクティブ・ラーニングを通じてワクワクしてみたい人はぜひ経営学部に来ていただきたいです。
齋藤:実際のデータを見たときに、これがどういう価値につながるかを考えられるようになってほしいです。色々な仮説を立て、検証することを、息を吸うようにできるレベルにまで高めてくれる人を育てたいと思っています。そのためにも、やらされた感ではなく、やりたくてたまらないテーマを大学が用意します。そしてそれが実際の企業との連携のなかでつくられる好循環が生まれれば、非常に素晴らしいデータサイエンス専攻になるんじゃないかと思います。
小川:ぜひ多くの受験生にデータサイエンスに興味を持ってもらえたらと思います。本日は貴重なお時間をありがとうございました。