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文系人材にデータサイエンスの素養がなぜ必要なのか
Topic02

文系人材にデータサイエンスの素養が
なぜ必要なのか

小川:文系理系というくくり方が良いか悪いかは別にして、あえて文系人材と表現させていただきますが、文系人材にデータサイエンスの素養がなぜ必要なのか、それぞれの立場からお聴かせください。

石賀:昨今は業務も含め、社会全体が非常に高度化されています。高度化された社会においては、データベースで確認し、証拠をきちんと見せる機能、すなわちデータサイエンスが不可欠です。だから、文系人材の素養もデータを正しく読み取って提示できるような、必要なところだけをチューンナップすればいいと思うんです。そもそも社会は文系人材の数が圧倒的に多いわけで、文系人材がデータサイエンスの素養を身につければ、社会におけるデータサイエンスの利活用は大きく進展します。まさに社会にとって、鬼に金棒になるんじゃないでしょうか。

:よく学生に言っているのは、君たちはスマホを組み立てられなくてもInstagramに画像を上げられるよねと。文系はユーザーでいいけれど、正しい使い方をしないと情報を悪用される。セキュリティシステムはつくれなくてもいいけれど、知識がないと情報流出につながってしまう。だから「こんな損をする」ということを学んでくれたらいいと説明しています。今後の人生で損をしないためにも、データを正しく集めて正しく解釈する力を我々文系の人間も身につけなければなりません。世にあふれる多くの情報のなかからウソの情報にだまされないためにも、正しい情報をどう取りだしてどう扱うかが大切になってきます。

齋藤:2007年にスティーブ・ジョブズがiPhoneを生み出したことによって、各自が常に世界中の情報とつながっている状態になり、データの重要性が増しています。スマホのGPS機能によって、どこにいてどう動いているかもわかってしまう。メールやSNSの通信データ、YouTubeの動画データなど、今まで人類が経験したことのないような膨大なデータがインターネット上に蓄積されています。ガーファム(GAFAM)と呼ばれているGoogle、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftの時価総額を見てもわかるとおり、それらのデータを利用してアメリカの企業が膨大な利益を得ています。データサイエンスの力を活用していかなければ、日本自体が遅れていくという危機感が政府にもあり、そのための人材育成を推進しています。

ヤフーCSO(チーフストラテジーオフィサー)の安宅和人さんも言われていましたが、データサイエンスのリテラシーを持たずに社会に出ていくことは、武器を持たずに戦場へ行くようなものです。欧米では、データサイエンスの教育もどんどん進み、社会にマッチした形で展開されています。これからは文系理系問わず、すべての学生にデータサイエンスは重要です。中身を詳しく学ばなくても、きちんと正しく理解して卒業しなければ、彼らのためにもならないでしょう。

小川:少し前から情報大洪水と言われていて、インターネット上にある大量のデータが指数関数的に増えていたり、マーケティングでも普及率をロジスティック曲線に当てはめて分析したりと、いろいろなところで数学の知識がベースとなっています。先ほどのセキュリティの話もそうですが、暗号化の研究でも関数の考え方が用いられています。まさに今の社会は、そういう技術の上に成り立っていて、これがさらに加速していくことは確実で、技術と社会のかかわりの視点の重要性は今後増していくでしょう。

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