フロントライン
いつの世にも「後世に残る大学」を目指して
神戸学院大学には「後世に残る大学」というモットーがあります。このような大学になるために神戸学院大学は今後どのように発展していくべきなのでしょうか。佐藤前学長、中村学長からのメッセージです。
偏差値だけでは測れないワクワクするような大学の魅力を発信
佐藤:「後世に残る大学」とは初代学長の言葉です。これまでの大学は、偏差値で輪切りにされ、そのランキングで評価されてきた側面が大きくあります。しかし今後は、教育、研究、社会貢献、学生のキャンパスにおける充実感、このようなことが広く伝わり、「大学の魅力がいかに認知されているか」がキーになってくると思っています。
キャンパスに行けば、安心感が得られる一方でワクワク感がある。そういう大学が生き残っていくのではないかと思っています。伝え切れていない魅力、新しく作るべき魅力、それらを高校生のみなさんや地域社会に広く発信していくことが必要だと思っています。
神戸学院大学は10学部を擁する総合大学です。充実した医療福祉系学部、伝統的な学部から新しいタイプの学部までそろう文系学部、学生参加型の多数のプログラム、タイプが違うキャンパスなど、さまざまな魅力・特色があります。このようなすでにある魅力・特色を含めて、受験生のみなさんに「ワクワクする。神戸学院大学で、自分のやりたいことをやってみたいな」と思ってもらえるような大学になることが、非常に重要だと考えています。
中村:佐藤先生がおっしゃったことと重なりますが、他方偏差値の輪切りの力は非常に大きいと思っています。手前みそではなく、神戸学院大学は本当にさまざまな改革や取り組みを行っています。学生たちもいろいろなことに挑戦しているにもかかわらず、高校生のみなさんに、それらが十分に伝わっていないということを強く感じています。多くの高校生は、偏差値でしか大学を見ていない節があります。神戸学院大学の魅力というものを、世間一般というよりは、まずは高校生たちにどのようにして伝えていくのかは非常に重要な課題です。
そのために、まずは佐藤先生がおっしゃった「ワクワクするようなキャンパス」を作り出すこと。これは絶対条件です。
コロナ禍における遠隔授業に向けて授業内容を作り直す際、実験的に授業に新しいテーマを盛り込むなどの工夫をしました。その結果、学生たちは最先端の研究に興味を示す傾向があることが分かりました。「まだあまり知られてはいないが、実は学会でこういう研究が進んでいる」というような内容を話すと、非常に熱心に聞いてくれるわけです。しかし、最先端の研究内容をダイレクトに授業で話しても学生はおそらく理解できないので、最先端をフォローしつつ「このようなことが分かっている、話題になっている」という部分を上手く授業に盛り込んでいくことが、とても重要だと感じました。
そうするためには、教員自身が研究の最先端にいないといけません。少なくとも最先端に付いて行かないといけない訳ですから、“教員の研究力”も非常に重要です。よき研究力があるから、よい教育ができる。よき研究者の全てがよき教育者である、ということではないかもしれませんが、よい研究をしていない人がよい教育ができるか、というと、それはなかなか難しいと思います。
しかし、よく言われることですが、教員は非常に忙しくなっています。「研究時間がなかなか取れない」という話もよく聞きます。それが多方面に波及している訳ですが、やはり研究に注力することを重視して研究時間を捻出し、“よい研究を教育に生かしていく”ことができるよう、大学としてもフォローしていかなければいけないと考えています。
とはいえ、教員が研究時間を取るためにその他の業務をやらない、ということになると、その分、事務職員に負担がかかることになりますので、それはできません。それを解決するためには、教職員が互いの仕事をトータルに見て、よい意味で合理化していかなければいけないと思います。特定のことをやめる、といった、一つの場所での労力削減を試みるのでは必ずしもなく、全体を見て削減できるところを探していくことが大切です。教員も職員も、それぞれの持ち場で感じていることを表明し、その意見を汲み上げていくことで、解決、合理化していく方向を模索できればと考えています。そのためにも教員と職員との対話は重要です。
佐藤:そうですね。組織としては際限なく増員することも財政出動することもできないので、みなが大変だと思っているところをいかに合理化できるかが鍵です。
教員・職員の教職協働、学部間の連携協働、部署間での連携協働。この三つの協働が機能していくと、教員にも職員にも余裕が生まれ、学生へのサポート体制がより整い、広い意味においての「教育」も充実させることができますし、中村先生が言われたような大学運営の合理化を進めることができる体制も作れると思います。
自由な気風を大切に、学生も教職員も心から誇れる大学へ
佐藤:神戸学院大学の特長で、なかなか伝わっていないことの一つが、「非常に自由な気風のある大学である」という点です。なぜそのような校風になったのかを少しご説明します。
我々が校祖と呼んでいる森わさは、教育に熱心なシングルマザーで、後の神戸学院大学に連なる女学校を明治末期に設立しました。そのわさの長男が初代学長の森茂樹博士です。この2人は純粋に教育者であり研究者です。宗教的背景が基盤にあったり、政治家や有力な財界人のバックアップを受けたりする私立大学が多い中、本学は、純粋に教育者であり研究者である親子が作った学園であり大学です。その基盤が、現在に至っても自由な気風につながっているのです。
ですから、教員それぞれがどのような立場、どのようなスタンスで研究しようと、それをとがめられることは一切ありません。このような「自由な気風」は今後も大事にしていかなければいけないと思っています。
中村:他大学の教員とも付き合いがありますが、名のある大学と比べても神戸学院大学が非常に正直で誠実な大学であり、かつ、非常に民主的な大学である、ということは、もっと誇ってもよいと心から思っています。これは絶対に変えてはいけないことですし、今後も残していきたいと強く思います。このことに関しては、教員のみなさんにもぜひ誇りを持ってほしいですね。
佐藤:さまざまな事情があって神戸学院大学に入学した学生が、4年後には「この大学でよかった」と言って卒業していく喜ばしい姿をよく目にします。しかしその意識が全体に行き渡っているかと問われると、それはまだまだです。このような意識が醸成されていくと大学内での自己評価も変わってくるのではないかと思います。
中村先生は、神戸学院大学における教員歴も私より先輩ですし、本学のことを知り尽くしておられます。中村学長への期待をあえてここで申し上げるとすれば、「本学の強み、特色を集約した情報発信をしていただきたい」ということです。
また、2022年度が第二次中期行動計画の最終年ですので、中村先生が第三次を策定される際には、ぜひ自分たちで作った計画であるという意識を持てるようにしていただきたい。そして、先ほど申し上げたような三つの協働に主体的に取り組める空気感の中で実行していくことができれば、この中期行動計画というものが、より意味のある、実りのあるものになるのではないかと思っています。
中村:冒頭にも申し上げましたとおり、佐藤先生の学長時代に作っていただいた“財産”をしっかりと引き継ぎ、それらをいかにしてさらに良くしていくかを考えることが、私の任期中の課題だと思っています。
かつ、すでにお話したように、教職員の考え方、働き方を、よい意味で合理化する方法を考えることが、私のひとつのチャレンジになると思っています。
学生たちにも、教職員にも、そして外部の方にも、とくに高校生にも「神戸学院大学っていいよね」って思ってもらうことが私の一番の目標です。そのためにやるべきことはたくさんあるので、みなさんの意見を聞きながら取り組んでいきたいと思っています。