「未来のまちを考える ~地域から世界へ~」
【学生・生徒による発表会・ワークショップ】
- 日 時:
- 5月17日(土)
【午前の部】 10:00~12:00 【午後の部】 13:00~16:00 - 場 所:
- 神戸学院大学ポートアイランドキャンパスB号館
- 【コーディネーター】
- 諏訪 清二 氏(兵庫県立舞子高等学校環境防災科科長・教諭)
浅野 壽夫 氏(学際教育機構 防災・社会貢献ユニット教授)
舩木 伸江 氏(学際教育機構 防災・社会貢献ユニット講師)
地球環境問題や防災について、小学生や中学生、高校生、大学生それぞれの視点で自由に意見を述べ、各自の考えを表現してもらおうという主旨のもと、学生・生徒による発表会・ワークショップ「未来のまちを考える~地域から世界へ~」が開催されました。
【午前の部】 発表会 ~環境・防災・国際貢献に関する活動発表~
- 環境や防災、国際貢献に対する取り組みを積極的に行っている、豊岡市立新田小学校、神戸市立多聞東中学校、兵庫県立農業高等学校、兵庫県立舞子高等学校と本学の防災・社会貢献ユニット。この5校の代表者各2名がパワーポイントのスライドをスクリーンに映しながら、日ごろの活動の様子や取り組みを発表しました。
- 【豊岡市立新田小学校】
- 新田小学校の周辺地域は、2004年の台風23号で甚大な洪水の被害を受けました。その後、その被災経験を活かした活動組織「新田プロジェクトE」を結成。Eは、「Ecology」(人と自然との関わり)、「Environment」(人をとりかこむ環境)、「Emergency」(緊急非常事態)、「Enjoy」(楽しむ)の4つの意味をあらわしています。コウノトリの保全など地域の自然環境を守る活動を、小学生自らの手で実施してきた経緯などがレポートされました。
- 【神戸市立多聞東中学校】
- 環境省指定のエコスクール事業により、校舎の改修が実施されたことをメインに、里山の整備などの活動が報告されました。同時に耐震補強も可能な「エコフレーム」を校舎の全面に取り付けたことで、14%の二酸化炭素の削減が見込まれるそうです。
- 【兵庫県立農業高等学校】
- 兵庫県立農業高等学校のある東播地域は、ため池が非常に多い地域です。農業高等学校では、ため池の貴重な水性植物や生物などを守るため、水質浄化に役立つと言われる「空芯菜」の水耕栽培を行うなど、さまざまな取り組みを実施していることが報告されました。
- 【兵庫県立舞子高等学校】
- 兵庫県立舞子高等学校には、防災を専門的に学ぶ「環境防災科」が設置されています。この学科では、台風23号で被害を受けた豊岡市に出向いてボランティア活動を実施。その他、ネパールを訪問して震災体験を語るなど、活発かつ広範囲な活動を行っていることが発表されました。
- 【学際教育機構 防災・社会貢献ユニット】
- 「環境問題に関するゴミの問題」と題し、神戸市のゴミ処理問題や、カンボジア郊外のゴミの山が環境汚染に原因となっているカンボジアの状況、日本における食品リサイクルの現状などを説明し、その改善を訴える内容となりました。さまざまなデータを駆使し、多角的アプローチを試みたレポートとなりました。
【午後の部】 ワークショップ ~未来のまちを描く~
午前の部で発表を行った学校に加えて、防災・減災及びボランティア活動に関する相互協定を結ぶ東北福祉大学の学生や神戸市立港島中学校、神戸学院大学附属高等学校の生徒も参加して、ワークショップが行われました。同じ学校同士で固まらないよう10組にグループ分けし、各グループに防災・社会貢献ユニット生がファシリテータとして入りました。用紙には、川と最終的に用紙をつなぎあわせる部分に道路の端のみが描かれており、各グループに与えられた課題と条件を盛り込んだ地図をメンバーで話し合いながら作っていきました。そうして出来上がったまちの地図を10枚つなぎ合わせて1枚の大きな地図に完成させました。川が流れているので堤防を建設して洪水を防ぐといったハード面での工夫だけではなく、いざ災害となった時に困らないように、日頃から近所でコミュニケーションをとっておくといった基本的な防災の心構えを説いたソフト面での提案も盛込まれるなど、さまざまな思いが詰まった地図が出来上がりました。
発表会・ワークショップに参加して
東北福祉大学 総合福祉学部 社会教育学科 3年次生
齋藤 由貴 さん
星 優希 さん
私たちの住む宮城県は非常に高い確率で地震が起きると言われています。私たちが通っている東北福祉大学では、防災・減災に関する講義や演習があり受講しています。昨年は、「減災カルタ」というツールを使って、防災・減災について子どもたちに楽しみながら理解を深めてもらえるように大会などを開催しました。また非常食のレシピを各グループに分かれ考え合い、そのレシピを公民館で開催されている市民講座にて地域の方と一緒に調理し、試食を通して意見など頂き、改良を重ねてきました。それにより、地域の皆さんとの交流も深めることができました。今年はみんなで考え多くの方からのご意見・ご協力をいただいて作成した「減災すごろく」を使い、子どもたちや地域の方々に減災について少しでも興味を持っていただけるよう伝えていく予定です。今回のフォーラムに参加させていただき、震災から13年という年月が経っているけれども、その記憶は子どもたちに語り継がれて子どもたち自ら防災・減災についての活動を地域の方々と積極的に行い、また自分の意見や考えを明確に持ち多くの人たちに伝えているということに感心させられました。私たちも地域で何が求められているか、またどうやって伝えていけばよいかを考えていかなければならないと感じました。これからはさまざまな観点をもって減災・防災に取り組んでいきたいと思います。
豊岡市立豊岡南中学校 2年生
掘名 野乃佳 さん
稲森 萌 さん
今回の発表は、私たちが豊岡市立新田小学校の生徒だったころ、台風23号によって洪水の被害を受けた時の体験と、その後の活動をまとめたものです。私たちの住む地区は、台風23号によって大変な被害を受けましたが、同時に、ふるさとの自然を大事に思う気持ちや、人と人とが助け合うことの大切さを身にしみて感じるきっかけにもなったと思います。発表の中では、コウノトリとの共生の話や田んぼのある自然を守ることなど「プロジェクトE」の活動の特徴が分かるような内容にしました。私たちの地域の方はもちろん、なるべくたくさんの方々に私たちの活動を知ってもらいたいと思っているからです。今回、台風23号の災害の時にボランティアで来てくださった舞子高校の先輩方はネパールにまで出かけて活動していると発表しておられました。私たちも、もっといろいろな場所に出かけて、ボランティア活動をしてみたいと思いました。地球環境問題は規模が大きすぎて、将来どうなるかということは私たちには分かりません。ただ、一人一人の毎日の行動が未来につながっていくのだと思います。そのためにも、小さなことかもしれませんが、私たちが、自分たちの体験をこうしてさまざまな人に広めていくことが大事だと思いました。
多くの“気づき”を積極的に発信し
自らも多様な考えに気づいていきたい
学際教育機構 防災・社会貢献ユニット
(人文学部 人文学科)
3年次生 河田 のどか さん
5月10日のイベントでは、舩木講師のゼミ生がワークショップの企画・運営を担当しました。当初、地図上にあらかじめ山や川などもっと細かく入れた方がいいのではという意見も出ましたが、自由な発想を妨げてしまうということで今回のような川と道路だけを書き込むというシンプルな形にしたのです。私たちは今までさまざまな防災マップを制作してきたので、完成する地図のイメージがなんとなく頭の中にありました。しかし、実際に出来上がった地図には各自のオリジナルな発想が数多く盛込まれていて、私の想像を超える出来栄えとなりました。特に印象的だったのは、新田小学校出身の中学生が、災害が起こったときに被害に遭うかもしれないけれど、あえて人工的に防御するような方法をとらないで今ある自然をできるだけ守っていきたいという考え方を持っていたことでした。このような、いわば、“災害とともに生きる”という発想は、地球環境を守っていくことを考える上でとても大事なことだと思います。そうしたことを気づかせてくれたという意味でも、今回のイベントは有意義でした。地球環境問題や防災にあまり関心がない人が友だちに誘われてこうしたイベントに参加したとしても、その中で何か1つでも心に残る言葉はあると思います。そうした言葉が、何かの行動を起こすきっかけになるかもしれません。私は、今後もそうした“気づき”を多くの人たちに発信していく立場でいたいですし、自分自身も、もっと多くのことを気づいていきたいと思います。
安全・安心な社会へと
若い世代が命のあり方を考えていくことが大事
発表会・ワークショップディレクター
学際教育機構 防災・社会貢献ユニット
浅野 壽夫 教授
「未来のまちを考える~地域から世界へ~」には、地球環境問題や防災についての活動を活発に行っておられる兵庫県下の学校に参加していただき、開催することができました。参加校は、「地球環境防災フォーラム」を共催している兵庫県立舞子高等学校の諏訪教諭を通じて集まっていただきました。彼らの発表を聞いていて感心したことは、環境問題や災害、防災ということに対して本当によく考えているということです。しかも、それぞれの課題に対して先生から言われたからとか、行政の助けがあったからというわけではなく、自ら行動を起こしている点が素晴らしいと思います。こうして、普段から防災、環境に関する活動を行っている若い人たちが一堂に会して、一緒に未来について考え、外部に発信しようとしたことに今回のイベントの意義があるのではないでしょうか。災害に対して強い、安心・安全な社会の中で命の大切さを次の時代に伝えていくためには、経験したことを知恵にして、広めていくことが大切です。防災・社会貢献ユニットとしては、今後も地域とともに地球環境や防災について考える機会を持ち続けていきたいと思っています。同時に、学内に対してもこうした問題に対しての意識を喚起し、本学全体としてさらに盛り上げていく努力をすべきだと考えています。
「地球環境防災フォーラム」を終えて
人文学部 人文学科 学際教育機構 防災・社会貢献ユニット
ユニット長 前林 清和 教授
(神戸学院大学地球環境防災フォーラム実行委員会 副委員長)
本学主催で開催された「地球環境防災フォーラム」は、プロジェクトが決定した時点で学生も主体となって企画・運営にあたることが決まっていました。防災・社会貢献ユニットの学生を中心に神戸学院大学地球環境防災フォーラム学生実行委員会を組織し、神戸学院大学地球環境防災フォーラム実行委員会とともに、2週間にわたる大きなイベントを成功させることができました。シンポジウム以外は学生が主体となって企画・運営から現場スタッフまでこなし、教職員はアドバイザーとして参加するという形をとりました。こうして、各イベントが、研究者と学生双方の考え方を反映した内容となって、地球環境や防災をより多角的な視点から考えることができたのではないかと思います。また、今回の「地球環境防災フォーラム」や、5月24日と25日に開催された関連イベント「自然豊かな兵庫と食の祭典」「NGO、NPO交流の広場」にしても、本学以外に、東北福祉大学や兵庫県立舞子高等学校、兵庫県や神戸市ほか多数の企業を含め、実にさまざまな組織に参加していただいています。大学や企業、自治体といった枠を超えて、まさに産官学が一体となって、地球環境問題と防災という社会的に大きなテーマで開催することができたということ。本学が、その中心的役割を担ったということに大きな意味があると思います。今年の秋には、国際協力や社会貢献の立場から環境問題を考えるということをテーマに、海外の研究者をポートアイランドキャンパスに招いて国際フォーラムを実施する計画を立てています。この際にも、学生には大いに協力してもらう予定です。彼らのような若者が、さらに若い世代に対して啓発活動を行うことが、今求められているのではないでしょうか。
継続して考えていくことの必要性
神戸学院大学
岡田 芳男 学長
最近、氷河の塊が崩落する、あるいは、海水の温度が上昇しているといったニュースをよく見聞きします。折しも、ミャンマーでサイクロンによる甚大な被害がもたらされたということなどもあり、地球温暖化による気候の変動との関連が懸念されているところです。こうした地球規模の変動に対して危機感を抱き、全世界的な問題として取り組まなければならないということで「G8環境大臣会議」がポートアイランドで開催されました。本学には、1万人の学生が在籍しております。この「G8環境大臣会議」を機に、こうした若い力をもって、地球環境の浄化や本来の環境を取り戻すことを考える役割を大学が率先して担いたいと考えています。そして、災害に対する防災意識を高めていきたいと考え、こうしたシンポジウムを開催しました。今回のシンポジウムが、継続的に地球環境問題を考え、防災を考えるきっかけとなることを願っています。