- 2011/08/02
2011年6月15日(水)教育学術新聞3面「大学間連携で被災地支援」
2011年6月15日教育学術新聞3面にTKK3大学連携プロジェクトおよび社会貢献学会について掲載いただきました。(以下、転載。)
大学間連携で被災地支援
神戸学院大学人文学部教授、学際教育機構防災・社会貢献ユニット長、TKK学び合い連携センター長 前林清和
東北福祉大学、神戸学院大学、工学院大学はこの三月に、社会貢献活動支援士を育成する取組などを行う目的で社会貢献学会を設立した。その直後に東日本大震災が起こり、三大学は連携して、あるいは単独で様々な支援活動を行ってきている。このたびはその取組について、神戸学院大学人文学部人文学科前林清和教授に寄稿してもらった。
神戸学院大学は、東日本大震災への支援を人道的見地から組織的、継続的に最大限行っていく方針である。具体的には、防災協定を結んでいる東北福祉大学および工学院大学、さらには三大学を柱として設立した市民学会の「社会貢献学会」と連携しながら、教職員、学生による被災地での支援をはじめ被災地外での支援も含め実施している。
〈災害発生時の対応〉
大震災直後から、本学では、協定校の両大学と連絡をとり、被災状況を確認した。本学では、翌日、岡田豊基学長を本部長として「地震緊急支援本部」を立ちあげ、直ちに支援活動を開始した。十三日からは、防災・社会貢献ユニットの学生や学生団体のボランティア活動基金(VAF)が街頭募金を開始した。また、十四日には、関西にゼミ旅行にきていて帰宅困難になった東北福祉大学の学生を六名、引き受けた。さらに、同大学の学生の安否確認作業に協力した。
〈現地での活動〉
現地での支援活動は、教職員、学生と共に震災から一週間たった時期から開始した。これまでに七回の派遣を行っている。
一回目(三月十八-二十日)は兵庫県が実施した「東北地方太平洋沖地震ボランティア先遣隊」に神戸学院大学東日本大震災支援対策本部として教員二名、職員三名を派遣した。バス車中二泊、現地一日のスケジュールの中、東北福祉大学との意見交換や宮城県松島町の避難所を訪れ、学生が被災地でボランティア活動をすることが可能かどうか、またその方法を確認するとともに、被災者の心のケアを担当した。
先遣調査を踏まえて二回目(三月二十三-二十五日)は学生八名、教員一名、職員一名を、対策本部の活動の一環として宮城県松島町に派遣した。一行は、兵庫県と協力し、被災者に温かい食べ物を配給し、その後、泥だし・端材処理を行った。現地スケジュールはバス車中泊二泊、現地一日であった。
三回目(四月九-十一日)は、学生三十二名を、NPOさくらネット企画「いわてっこ応援!学生ボランティアバスプロジェクト」に派遣し、岩手県立大学、関西学院大学、佛教大学、その他の大学と共に岩手県にボランティアに行き、避難所を訪れ、子どもと遊んだり、炊き出しを行った。
以上、三回目までは他団体がバス等を準備する企画に教職員、学生を派遣してきた。しかし、震災から一か月が経ち、現地の状況が把握できたため、これ以降は本学独自で東北福祉大学と連携をとりながら現地派遣を開始した。四回目(四月十四-十七日)は宮城県名取市、石巻市河北町にて足湯、ポップコーン、綿菓子の提供や泥だし作業に学生十一名、教員一名、職員一名を派遣した。以降五回目(四月二十一-二十四日)学生十九名、教員一名、職員一名を宮城県名取市に、六回目(五月十二-十五日)学生二十三名、教員二名、職員一名を宮城県名取市及び石巻市に、七回目(五月十九-二十二日)学生二十名、教員一名を宮城県名取市及び石巻市に派遣した。活動内容は現地ボランティアセンターと調整をし、主に避難所訪問、炊き出し、泥だし作業であった。また、五月から神戸市水道局から提供をうけたボトルウォーター1000本に学生が応援メッセージカードを取り付け、阪神・淡路大震災を経験した神戸からの「ふれあいの水だより」として被災者に学生が心をこめて一つ一つ手渡していっている。
以上が、五月二十五日現在までの被災地での活動であるが、これからも五月下旬に一回、六月に二回、七月に一回、八月に三回、九月に二回、それ以降は月に一回のペースでボランティアバスを派遣する計画をしている。
派遣学生は広く学内で呼びかけをしたが、その多くは、学際教育機構防災・社会貢献ユニット(防災、ボランティアについて専門的に学習できるプログラム。2006年から実施)の学生、総合リハビリテーション学部の学生、ボランティア支援室(専任のスタッフが常駐)であった。このように、防災やボランティアの専門的知識や経験を持った学生たちが真っ先に手をあげて現地支援活動に参加してくれた。
しかし、学生派遣に至るまでには様々な課題をクリアする必要があった。保護者への説明、了承をどうするか、引率は誰が行くか、現地のしっかりした受入先をどう探すか、宿泊場所をどう確保するかなどである。幸い本学は、東北福祉大学を通じて現地の情報を得ることができ、また、受入先の調整なども行えた。さらに、五月より、本学TKK学び合い連携センターのスタッフを現地駐在員として仙台市に派遣した。このことにより、現地のニーズ把握や学生ボランティア活動のコーディネートがスムーズに行えるようになった。保護者は大学が責任を持って学生を派遣するということで了承(承諾書の提出)して頂いている。そのため、教職員が現地に出向き確認をし、受入先、連携先を確保した上で、現地派遣を行う必要があると考える。
〈あなたの思い出まもり隊プロジェクト〉
現地支援に加えて、神戸、東京でも東日本大震災の支援を行っている。その一つが、現地で被災した方から被害を受けた写真を預かりきれいにするプロジェクト「あなたの思い出まもり隊」である。「社会貢献学会」でこのプロジェクトを立ち上げ、活動を行っている。
被災地から続々と届く写真は100件を超え、枚数は一万枚を超える。それを本学では学生や一般ボランティアの方と共に写真洗浄し、乾燥後スキャニングをしたのち必要に応じてパソコン上で修正をしてお返ししているのである。このプロジェクトで非常にユニークな点は、各種企業が様々な形(資機材提供、専門知識の提供など)で支援を行っている点である(提供企業はセイコーエプソン株式会社、アドビシステムズ株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社、株式会社ニコン、ナカバヤシ株式会社など)。また、一般ボランティアの方からもそれぞれ能力に応じた支援の申し出が多い(例えばデザイナーなので、写真の修正を手伝いたいなど)。
東日本大震災では被災地が広域にわたり、様々な形でボランティアが現地入りしている。しかし、手伝いに行きたいと思いながらも色々な事情で現地にいけない人達も多い。被災地から離れていてもできる支援の一つの活動がこのプロジェクトである。大学がつなぎ役となり学生を現地に派遣する、複数大学が中心となる学会がつなぎ役となり現地に行けないボランティアの想いや企業の社会貢献の気持ちを支援活動と変える。大学は震災支援において大きな役割を担うことができるのである。
〈今後の支援について〉
本学では、これからも継続的に被災地の支援活動を実施していく。支援にあたっては、教職員の専門的知識や技術に基づいた支援活動と学生による心の交流を前提とした炊き出しや泥かき、子どもの遊び相手などの支援活動をバランスよく行っていく予定である。その際に、刻々と変わる被災地のニーズを現地駐在員によって把握しながら、真に被災地のためになる支援を心がけていきたい。また、継続的に本活動を実施していくためには、現在の支援活動を全国の大学や兵庫県、神戸市などの行政、NPOなどとも連携しながら実施していく必要があろう。
ところで、今回の震災の復興は、五年、十年、二十年と続くと考えられる。つまり、現在の学生にとって、半生は震災と何らかの関係をもつことになる。そのように考えると将来への支援活動の芽を今のうちに育てていく必要があり、そのことが日本の復興につながると確信している。
本学の支援活動が、少しでも被災地、被災者の皆さまのお力になれればと祈っている。
大学間連携で被災地支援
神戸学院大学人文学部教授、学際教育機構防災・社会貢献ユニット長、TKK学び合い連携センター長 前林清和
東北福祉大学、神戸学院大学、工学院大学はこの三月に、社会貢献活動支援士を育成する取組などを行う目的で社会貢献学会を設立した。その直後に東日本大震災が起こり、三大学は連携して、あるいは単独で様々な支援活動を行ってきている。このたびはその取組について、神戸学院大学人文学部人文学科前林清和教授に寄稿してもらった。
神戸学院大学は、東日本大震災への支援を人道的見地から組織的、継続的に最大限行っていく方針である。具体的には、防災協定を結んでいる東北福祉大学および工学院大学、さらには三大学を柱として設立した市民学会の「社会貢献学会」と連携しながら、教職員、学生による被災地での支援をはじめ被災地外での支援も含め実施している。
〈災害発生時の対応〉
大震災直後から、本学では、協定校の両大学と連絡をとり、被災状況を確認した。本学では、翌日、岡田豊基学長を本部長として「地震緊急支援本部」を立ちあげ、直ちに支援活動を開始した。十三日からは、防災・社会貢献ユニットの学生や学生団体のボランティア活動基金(VAF)が街頭募金を開始した。また、十四日には、関西にゼミ旅行にきていて帰宅困難になった東北福祉大学の学生を六名、引き受けた。さらに、同大学の学生の安否確認作業に協力した。
〈現地での活動〉
現地での支援活動は、教職員、学生と共に震災から一週間たった時期から開始した。これまでに七回の派遣を行っている。
一回目(三月十八-二十日)は兵庫県が実施した「東北地方太平洋沖地震ボランティア先遣隊」に神戸学院大学東日本大震災支援対策本部として教員二名、職員三名を派遣した。バス車中二泊、現地一日のスケジュールの中、東北福祉大学との意見交換や宮城県松島町の避難所を訪れ、学生が被災地でボランティア活動をすることが可能かどうか、またその方法を確認するとともに、被災者の心のケアを担当した。
先遣調査を踏まえて二回目(三月二十三-二十五日)は学生八名、教員一名、職員一名を、対策本部の活動の一環として宮城県松島町に派遣した。一行は、兵庫県と協力し、被災者に温かい食べ物を配給し、その後、泥だし・端材処理を行った。現地スケジュールはバス車中泊二泊、現地一日であった。
三回目(四月九-十一日)は、学生三十二名を、NPOさくらネット企画「いわてっこ応援!学生ボランティアバスプロジェクト」に派遣し、岩手県立大学、関西学院大学、佛教大学、その他の大学と共に岩手県にボランティアに行き、避難所を訪れ、子どもと遊んだり、炊き出しを行った。
以上、三回目までは他団体がバス等を準備する企画に教職員、学生を派遣してきた。しかし、震災から一か月が経ち、現地の状況が把握できたため、これ以降は本学独自で東北福祉大学と連携をとりながら現地派遣を開始した。四回目(四月十四-十七日)は宮城県名取市、石巻市河北町にて足湯、ポップコーン、綿菓子の提供や泥だし作業に学生十一名、教員一名、職員一名を派遣した。以降五回目(四月二十一-二十四日)学生十九名、教員一名、職員一名を宮城県名取市に、六回目(五月十二-十五日)学生二十三名、教員二名、職員一名を宮城県名取市及び石巻市に、七回目(五月十九-二十二日)学生二十名、教員一名を宮城県名取市及び石巻市に派遣した。活動内容は現地ボランティアセンターと調整をし、主に避難所訪問、炊き出し、泥だし作業であった。また、五月から神戸市水道局から提供をうけたボトルウォーター1000本に学生が応援メッセージカードを取り付け、阪神・淡路大震災を経験した神戸からの「ふれあいの水だより」として被災者に学生が心をこめて一つ一つ手渡していっている。
以上が、五月二十五日現在までの被災地での活動であるが、これからも五月下旬に一回、六月に二回、七月に一回、八月に三回、九月に二回、それ以降は月に一回のペースでボランティアバスを派遣する計画をしている。
派遣学生は広く学内で呼びかけをしたが、その多くは、学際教育機構防災・社会貢献ユニット(防災、ボランティアについて専門的に学習できるプログラム。2006年から実施)の学生、総合リハビリテーション学部の学生、ボランティア支援室(専任のスタッフが常駐)であった。このように、防災やボランティアの専門的知識や経験を持った学生たちが真っ先に手をあげて現地支援活動に参加してくれた。
しかし、学生派遣に至るまでには様々な課題をクリアする必要があった。保護者への説明、了承をどうするか、引率は誰が行くか、現地のしっかりした受入先をどう探すか、宿泊場所をどう確保するかなどである。幸い本学は、東北福祉大学を通じて現地の情報を得ることができ、また、受入先の調整なども行えた。さらに、五月より、本学TKK学び合い連携センターのスタッフを現地駐在員として仙台市に派遣した。このことにより、現地のニーズ把握や学生ボランティア活動のコーディネートがスムーズに行えるようになった。保護者は大学が責任を持って学生を派遣するということで了承(承諾書の提出)して頂いている。そのため、教職員が現地に出向き確認をし、受入先、連携先を確保した上で、現地派遣を行う必要があると考える。
〈あなたの思い出まもり隊プロジェクト〉
現地支援に加えて、神戸、東京でも東日本大震災の支援を行っている。その一つが、現地で被災した方から被害を受けた写真を預かりきれいにするプロジェクト「あなたの思い出まもり隊」である。「社会貢献学会」でこのプロジェクトを立ち上げ、活動を行っている。
被災地から続々と届く写真は100件を超え、枚数は一万枚を超える。それを本学では学生や一般ボランティアの方と共に写真洗浄し、乾燥後スキャニングをしたのち必要に応じてパソコン上で修正をしてお返ししているのである。このプロジェクトで非常にユニークな点は、各種企業が様々な形(資機材提供、専門知識の提供など)で支援を行っている点である(提供企業はセイコーエプソン株式会社、アドビシステムズ株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社、株式会社ニコン、ナカバヤシ株式会社など)。また、一般ボランティアの方からもそれぞれ能力に応じた支援の申し出が多い(例えばデザイナーなので、写真の修正を手伝いたいなど)。
東日本大震災では被災地が広域にわたり、様々な形でボランティアが現地入りしている。しかし、手伝いに行きたいと思いながらも色々な事情で現地にいけない人達も多い。被災地から離れていてもできる支援の一つの活動がこのプロジェクトである。大学がつなぎ役となり学生を現地に派遣する、複数大学が中心となる学会がつなぎ役となり現地に行けないボランティアの想いや企業の社会貢献の気持ちを支援活動と変える。大学は震災支援において大きな役割を担うことができるのである。
〈今後の支援について〉
本学では、これからも継続的に被災地の支援活動を実施していく。支援にあたっては、教職員の専門的知識や技術に基づいた支援活動と学生による心の交流を前提とした炊き出しや泥かき、子どもの遊び相手などの支援活動をバランスよく行っていく予定である。その際に、刻々と変わる被災地のニーズを現地駐在員によって把握しながら、真に被災地のためになる支援を心がけていきたい。また、継続的に本活動を実施していくためには、現在の支援活動を全国の大学や兵庫県、神戸市などの行政、NPOなどとも連携しながら実施していく必要があろう。
ところで、今回の震災の復興は、五年、十年、二十年と続くと考えられる。つまり、現在の学生にとって、半生は震災と何らかの関係をもつことになる。そのように考えると将来への支援活動の芽を今のうちに育てていく必要があり、そのことが日本の復興につながると確信している。
本学の支援活動が、少しでも被災地、被災者の皆さまのお力になれればと祈っている。