- 2010/01/05
神戸新聞 2009年12月27日「防災・減災 3大学連携~人材育成目指し仙台でシンポ~」(朝刊 5面)
12月13日(日)東北福祉大学において開催した「TKK連携センター開設記念シンポジウム」についての報告記事を掲載いただきました。
神戸学院大など人材育成目指し仙台でシンポ
防災・減災3大学連携
防災、減災、ボランティアで社会貢献できる人材を育てるとともに、「社会貢献活動支援士」の資格制度新設を目指し2009年度、連携した神戸学院大(神戸市西区)と東北福祉大(仙台市)、工学院大(東京)。
各大学の頭文字から取った「TKK3大学連携プロジェクト」は、文部科学省の大学連携支援プログラムに選ばれた。3大学にそれぞれ連携センターが開設されたことを記念したシンポジウム(3大学主催)がこのほど、東北福祉大で開かれ、学生たちが活動を報告し、各センターの代表らが「これからのTKKを考える」と題してパネルディスカッションした。
【主な出席者】
TKK分かち合い連携センター長:東北福祉大教授 小松 洋吉氏
TKK助け合い連携センター長: 工学院大教授 久田 嘉章氏
TKK学び合い連携センター長: 神戸学院大教授 前林 清和氏
【パネル討論】
小松:
わが国の社会は少子高齢化、グローバル化、価値観の多様化の中で、さまざまな課題を抱え、さらに大規模災害の発生が懸念される。政府や行政の力だけでは解決できない問題に立ち向かう人材の育成に3大学が連携して取り組もうというのが、センター開設の狙いだ。
前林:
神戸学院大は人文社会系、工学院大は工学系、東北福祉大は福祉系と特徴がある。センターがテーマとする防災、減災、ボランティアに絡み、各大学の学生はそれぞれの専門分野を起点にさまざまな実践を進めてきた。そうした積み重ねが連携を通じて融合したとき、大きな潮流が生まれる。
久田:
工学教育は学部の4年間で身に付けなければならない内容が多い。学生は受け身の学習態度になってしまいがちだ。神戸学院や福祉大の学生が積極的に社会へ飛び出していることは、工学院の学生にとって刺激になる。
小松:
3大学が連携するため、福祉大に「分かち合い」、工学院に「助け合い」、神戸学院に「学び合い」というセンターを置いた。それぞれが役割を果たし、成果として「社会貢献活動支援士」という資格制度を整えたい。
前林:
互いの得意分野を発揮し、授業を相互に高画質映像で配信できるシステムが2010年に稼働する。社会を支え、発展させていける「真の意味での市民」を育てたい。競争原理は大切だが、負け組に生きるすべがない社会は不幸だ。競争社会は既に限界を迎えている。社会の問題を自分たちで考え、行動することこそが重要ではないか。
久田:
大災害では助けが来ないという事実は、社会活動が進む契機になる。工学院では住民や企業、他大学と連携し、震災対策に取り組んでいるが、最初は壁に当たった。それが変わったのは「行政が何とかしてくれるだろう」という思い込みが、実は問違っているとの認識を共有できてからだった。
小松:
各大学の専門を組み合わせ、社会貢献活動支援士の養成プログラムの構築を今後進める。多くの市民に参加してもらい、全国的に制度を定着させたい。学生では3年の修了時が想定されるが、共通の資格認定試験を学術団体が実施するような方法が望ましい。
久田:
3大学がネットワークで結ばれていることで、地域に住む社会人や他大学の学生が支援士の養成講座を受けることも可能になる。
前林:
社会貢献に資格が必要かという問題はあるが、人間には目標やプライドが必要という面もある。自己肯定感が低い現代の若者が「おれがいて意味があったな」と考えるきっかけになればいい。人生の豊かさを考えるとき、仕事やお金は必要だが、自分が豊かであれば周りは貧しくていいか、とも問い掛けたい。「自分半分、他人も半分」という社会こそが豊かな社会だろう。
【学生報告】学部超えて活動展開 ■神戸学院大
3大学では、学生が多様な社会貢献活動に携わっている。各大学の学生が活動内容を報告した。
神戸学院大では、学部の枠を超えて防災について学ぶコース「防災・社会貢献ユニット」が設けられ、受講生がさまざまな活動を展開する。
2008年の中国・四川大地震で被災地に入り、現場から多くのことを学んだという。1995年の阪神・淡路大震災の教訓を生かし、地域住民や小中学生に防災対策の授業などを実施。人文学部3年の高木洋輔さんは「防災教育を普及させるため、教材開発にも力を入れたい」と話した。
工学院大は2年前から、東京・新宿にある超高層ビルのキャンパスで防災訓練を実施し、学生が企画を担っている。近隣の企業と連携し、訓練には約1300人が参加する。高層階からの傷病者搬送などで学生がアイデアを出し合う。
工学研究科修士課程2年の浜野航平さんは「机上で学べない実践力が身に付く。学生の活動を組織化するノウハウを東北福祉大や神戸学院大の活動から学びたい」と協力を呼び掛けた。
東北福祉大は、防災やボランティアに取り組む五つのサークルが活動を発表した。そのうち、救命ボランティアの「FAST」は救命技術を学び、地域住民に指導している。
代表で総合福祉学部3年の沢村隆太さんは「災害発生時、救急隊が到着するまでには時間がかかる。救命技術を普及させ、少しでも多くの人を救いたい」と強調した。
以下、神戸新聞(2009年12月27日朝刊5面)特集「復興あしたへ」より転載
神戸学院大など人材育成目指し仙台でシンポ
防災・減災3大学連携
防災、減災、ボランティアで社会貢献できる人材を育てるとともに、「社会貢献活動支援士」の資格制度新設を目指し2009年度、連携した神戸学院大(神戸市西区)と東北福祉大(仙台市)、工学院大(東京)。
各大学の頭文字から取った「TKK3大学連携プロジェクト」は、文部科学省の大学連携支援プログラムに選ばれた。3大学にそれぞれ連携センターが開設されたことを記念したシンポジウム(3大学主催)がこのほど、東北福祉大で開かれ、学生たちが活動を報告し、各センターの代表らが「これからのTKKを考える」と題してパネルディスカッションした。
【主な出席者】
TKK分かち合い連携センター長:東北福祉大教授 小松 洋吉氏
TKK助け合い連携センター長: 工学院大教授 久田 嘉章氏
TKK学び合い連携センター長: 神戸学院大教授 前林 清和氏
【パネル討論】
小松:
わが国の社会は少子高齢化、グローバル化、価値観の多様化の中で、さまざまな課題を抱え、さらに大規模災害の発生が懸念される。政府や行政の力だけでは解決できない問題に立ち向かう人材の育成に3大学が連携して取り組もうというのが、センター開設の狙いだ。
前林:
神戸学院大は人文社会系、工学院大は工学系、東北福祉大は福祉系と特徴がある。センターがテーマとする防災、減災、ボランティアに絡み、各大学の学生はそれぞれの専門分野を起点にさまざまな実践を進めてきた。そうした積み重ねが連携を通じて融合したとき、大きな潮流が生まれる。
久田:
工学教育は学部の4年間で身に付けなければならない内容が多い。学生は受け身の学習態度になってしまいがちだ。神戸学院や福祉大の学生が積極的に社会へ飛び出していることは、工学院の学生にとって刺激になる。
小松:
3大学が連携するため、福祉大に「分かち合い」、工学院に「助け合い」、神戸学院に「学び合い」というセンターを置いた。それぞれが役割を果たし、成果として「社会貢献活動支援士」という資格制度を整えたい。
前林:
互いの得意分野を発揮し、授業を相互に高画質映像で配信できるシステムが2010年に稼働する。社会を支え、発展させていける「真の意味での市民」を育てたい。競争原理は大切だが、負け組に生きるすべがない社会は不幸だ。競争社会は既に限界を迎えている。社会の問題を自分たちで考え、行動することこそが重要ではないか。
久田:
大災害では助けが来ないという事実は、社会活動が進む契機になる。工学院では住民や企業、他大学と連携し、震災対策に取り組んでいるが、最初は壁に当たった。それが変わったのは「行政が何とかしてくれるだろう」という思い込みが、実は問違っているとの認識を共有できてからだった。
小松:
各大学の専門を組み合わせ、社会貢献活動支援士の養成プログラムの構築を今後進める。多くの市民に参加してもらい、全国的に制度を定着させたい。学生では3年の修了時が想定されるが、共通の資格認定試験を学術団体が実施するような方法が望ましい。
久田:
3大学がネットワークで結ばれていることで、地域に住む社会人や他大学の学生が支援士の養成講座を受けることも可能になる。
前林:
社会貢献に資格が必要かという問題はあるが、人間には目標やプライドが必要という面もある。自己肯定感が低い現代の若者が「おれがいて意味があったな」と考えるきっかけになればいい。人生の豊かさを考えるとき、仕事やお金は必要だが、自分が豊かであれば周りは貧しくていいか、とも問い掛けたい。「自分半分、他人も半分」という社会こそが豊かな社会だろう。
【学生報告】学部超えて活動展開 ■神戸学院大
3大学では、学生が多様な社会貢献活動に携わっている。各大学の学生が活動内容を報告した。
神戸学院大では、学部の枠を超えて防災について学ぶコース「防災・社会貢献ユニット」が設けられ、受講生がさまざまな活動を展開する。
2008年の中国・四川大地震で被災地に入り、現場から多くのことを学んだという。1995年の阪神・淡路大震災の教訓を生かし、地域住民や小中学生に防災対策の授業などを実施。人文学部3年の高木洋輔さんは「防災教育を普及させるため、教材開発にも力を入れたい」と話した。
工学院大は2年前から、東京・新宿にある超高層ビルのキャンパスで防災訓練を実施し、学生が企画を担っている。近隣の企業と連携し、訓練には約1300人が参加する。高層階からの傷病者搬送などで学生がアイデアを出し合う。
工学研究科修士課程2年の浜野航平さんは「机上で学べない実践力が身に付く。学生の活動を組織化するノウハウを東北福祉大や神戸学院大の活動から学びたい」と協力を呼び掛けた。
東北福祉大は、防災やボランティアに取り組む五つのサークルが活動を発表した。そのうち、救命ボランティアの「FAST」は救命技術を学び、地域住民に指導している。
代表で総合福祉学部3年の沢村隆太さんは「災害発生時、救急隊が到着するまでには時間がかかる。救命技術を普及させ、少しでも多くの人を救いたい」と強調した。
以上