- 2009/12/01
読売新聞 2009年11月29日「大地震を想定し3大学が連携」(朝刊 32面)
「減災」コーナーに、TKK3大学(東北福祉大学、工学院大学、神戸学院大学)それぞれの強み、取り組みを紹介した上で、連携について周知する記事を掲載いただきました。
大地震想定し3大学が連携
阪神・淡路大震災を体験し南海地震に備える神戸学院大学(神戸市)と、首都圏直下型地震に対応する工学院大(東京都新宿区)、宮城県沖地震の脅威を迎え撃つ東北福祉大(仙台市)の3大学が防災・減災・ボランティアを中心とした社会貢献教育で連携するプログラムが12月にスタートする。ボランティアに実績を残す東北福祉、巨大ターミナル新宿駅に近く、住民や通勤者の避難誘導訓練を重ねる工学院、防災教育と国際貢献に強みを発揮する神戸学院。それぞれの得意分野を生かしながら、各地で予想される大地震の際、市民とどう連携を取り、少しでも多くの命を守るかを学習する。遠距離にある3大学が発生時に助け合い、支え合うことも想定している。(編集委員 安富信)
3大学連携プログラムの主な取り組み内容
◆「社会貢献活動支援士」(仮称)の資格制度の立ち上げ
◆遠隔授業システムを活用した、社会貢献に関する専門教育プログラムの構築
◆共同テキスト、教材の開発
◆ボランティア活動を中心とした課外活動の実施
◆災害時の円滑な総合的大学間連携システムの構築
◆広域ネットワーク、全国展開のボランティアネットワークの構築
工学院大学 首都直下に備え訓練
工学院大は新宿西口から歩いて約10分に立地する29階建ての高層ビル。今後30年間で発生する確率が70%といわれる首都圏直下型地震への備えが最重要課題。地震が起きれば、新宿駅周辺で滞留者が約17万人、帰宅困難者は9万人と想定されており、ここに学生約6500人が通っているだけに、大学を防災拠点として減災の取り組みが必要とされるのは自明の理だ。
地域の拠点としての取り組みを始めており、新宿区と協定を結び西口の現地本部となる。高層ビルに起きる長周期の大きな揺れに対応してエレベーター停止による避難・救出など地域住民や通行人に対する非難誘導も重要視しており、昨年と今年と2年続いて学生ボランティアが参加した避難訓練を実施した。
5年前から東京都北区の木造密集地域で住民を巻き込んだ実践的な防災訓練も行っている。従来型の消火訓練だけでなく、阪神大震災時に見られたような住民同士での救助活動などに切り替え、危険個所のマップづくりや、学生たちの協力を得て耐震診断などをしている。愛知県豊橋市で消防庁の要請を受け被災直後の避難訓練も重ねた。
周辺の企業や区の職員、消防関係者を対象にした社会人セミナーを開き、教訓を伝えるだけでなく、ネットワークづくりも広げている。3学部11学科の全学生が連携授業を受けられる。工学院の連携センター長の久田嘉章教授は「首都直下が起きたという想定で3大学の連携で安否確認訓練などもしたい。社会学やボランティアの実践などをうちの学生が見て、交流することで刺激を受ける」と期待する。
防災学ぶ教材づくり 神戸学院大学
神戸学院大では2006年春から文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に指定され、学部横断型の防災・社会貢献ユニットをスタートした。法学、経済、経営、人文学の文系学生が2年になる際に選択でき、定員は50人。
阪神大震災を体験した神戸の大学の特徴を発揮し、神戸市や兵庫県、人と防災未来センターの防災担当者やマスコミ関係者らから防災行政学、災害情報論、市民社会論などの座学、防災実習や救命処置実習を学べる。
力を入れているのが防災教育。これまでは避難訓練や町歩き、防災関連施設の見学といった少し時間がかかるものだったので、もっと手軽に防災教育をと学生たちは国語、算数、理科などを全教科に防災を取り入れた教材づくりに取り組む。文科省の学習指導要領や教科書に沿った教材にするのがポイント。
社会科の「ドラえもんのまちで学ぼう」では小学5、6年生の指導要領を意識した。ドラえもんのキャラクターを使って町歩きのマップ作りを楽しくする。自然と共生することや地図記号を勉強する狙いが実現できるという。
さらに、継続した取り組みとして注目されるのが、幼児、小中学生への防災の語り継ぎ。大震災の体験をもとに、次の世代へわかりやすく伝えていくのを目的に全国各地の幼稚園や学校を訪れている。カンボジアを毎年訪れ、現地の小学生らに移動図書館を開き、英語を教えるボランティアも続けている。
神戸学院大の連携センター長の前林清和教授は「次世代の人たちが幸せな社会を築くことができるよう、そのリーダーとなる人材を全国的に広げて育成したい」と意気込む。
ボランティア充実、独自資格も 東北福祉大
東北福祉大は1993年に全国で初めて、ボランティア活動をカリキュラム化した。95年の阪神大震災の時には、120人の学生が被災地に入り、心のケアなどの支援活動をした。98年には学内にボランティアセンターを設置。各地の水害や地震の被災地で活動するなど全国でもトップクラスだ。現在、学内ボランティア活動を実践しているサークルが62団体もあり、約2200人の学生が所属している。
一方で、地域社会とのつながりも大切にしている。2004年度に、文科省の生涯学習まちづくりモデル支援事業に採択され、地域防災のコーディネーター養成講座を開いたり、防災力向上ハンドブックを発行したりしている。翌年には地域減災センターを設立、地震・津波に強いまちづくり実行委員会を組織し、中心的な役割を果たし、06年に、総務省消防庁の第11回防災まちづくり大賞の総務大臣賞を受けた。市民から句を募って防災・減災カルタも作った。
学生向けには、地域減災プランナーというオリジナルな資格を取得する科目も設け、来春には第2期生が卒業する。「地域社会に教育の場を借りている」をモットーに、企業に就職後も地域活動の担い手になるような教育を心がけている。
全4学部のうち、総合福祉、総合マネジメント両学部の5学科約700人が今回の連携授業を受ける。東北福祉の連携センター長、小松洋吉・同大学教授は「社会的ニーズが高いプログラムだと思う。社会貢献活動が市民社会の中に定着していくことが大切」と話している。
以下、読売新聞(2009年11月29日朝刊32面)特集「減災」より転載
大地震想定し3大学が連携
阪神・淡路大震災を体験し南海地震に備える神戸学院大学(神戸市)と、首都圏直下型地震に対応する工学院大(東京都新宿区)、宮城県沖地震の脅威を迎え撃つ東北福祉大(仙台市)の3大学が防災・減災・ボランティアを中心とした社会貢献教育で連携するプログラムが12月にスタートする。ボランティアに実績を残す東北福祉、巨大ターミナル新宿駅に近く、住民や通勤者の避難誘導訓練を重ねる工学院、防災教育と国際貢献に強みを発揮する神戸学院。それぞれの得意分野を生かしながら、各地で予想される大地震の際、市民とどう連携を取り、少しでも多くの命を守るかを学習する。遠距離にある3大学が発生時に助け合い、支え合うことも想定している。(編集委員 安富信)
3大学連携プログラムの主な取り組み内容
◆「社会貢献活動支援士」(仮称)の資格制度の立ち上げ
◆遠隔授業システムを活用した、社会貢献に関する専門教育プログラムの構築
◆共同テキスト、教材の開発
◆ボランティア活動を中心とした課外活動の実施
◆災害時の円滑な総合的大学間連携システムの構築
◆広域ネットワーク、全国展開のボランティアネットワークの構築
工学院大学 首都直下に備え訓練
工学院大は新宿西口から歩いて約10分に立地する29階建ての高層ビル。今後30年間で発生する確率が70%といわれる首都圏直下型地震への備えが最重要課題。地震が起きれば、新宿駅周辺で滞留者が約17万人、帰宅困難者は9万人と想定されており、ここに学生約6500人が通っているだけに、大学を防災拠点として減災の取り組みが必要とされるのは自明の理だ。
地域の拠点としての取り組みを始めており、新宿区と協定を結び西口の現地本部となる。高層ビルに起きる長周期の大きな揺れに対応してエレベーター停止による避難・救出など地域住民や通行人に対する非難誘導も重要視しており、昨年と今年と2年続いて学生ボランティアが参加した避難訓練を実施した。
5年前から東京都北区の木造密集地域で住民を巻き込んだ実践的な防災訓練も行っている。従来型の消火訓練だけでなく、阪神大震災時に見られたような住民同士での救助活動などに切り替え、危険個所のマップづくりや、学生たちの協力を得て耐震診断などをしている。愛知県豊橋市で消防庁の要請を受け被災直後の避難訓練も重ねた。
周辺の企業や区の職員、消防関係者を対象にした社会人セミナーを開き、教訓を伝えるだけでなく、ネットワークづくりも広げている。3学部11学科の全学生が連携授業を受けられる。工学院の連携センター長の久田嘉章教授は「首都直下が起きたという想定で3大学の連携で安否確認訓練などもしたい。社会学やボランティアの実践などをうちの学生が見て、交流することで刺激を受ける」と期待する。
防災学ぶ教材づくり 神戸学院大学
神戸学院大では2006年春から文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に指定され、学部横断型の防災・社会貢献ユニットをスタートした。法学、経済、経営、人文学の文系学生が2年になる際に選択でき、定員は50人。
阪神大震災を体験した神戸の大学の特徴を発揮し、神戸市や兵庫県、人と防災未来センターの防災担当者やマスコミ関係者らから防災行政学、災害情報論、市民社会論などの座学、防災実習や救命処置実習を学べる。
力を入れているのが防災教育。これまでは避難訓練や町歩き、防災関連施設の見学といった少し時間がかかるものだったので、もっと手軽に防災教育をと学生たちは国語、算数、理科などを全教科に防災を取り入れた教材づくりに取り組む。文科省の学習指導要領や教科書に沿った教材にするのがポイント。
社会科の「ドラえもんのまちで学ぼう」では小学5、6年生の指導要領を意識した。ドラえもんのキャラクターを使って町歩きのマップ作りを楽しくする。自然と共生することや地図記号を勉強する狙いが実現できるという。
さらに、継続した取り組みとして注目されるのが、幼児、小中学生への防災の語り継ぎ。大震災の体験をもとに、次の世代へわかりやすく伝えていくのを目的に全国各地の幼稚園や学校を訪れている。カンボジアを毎年訪れ、現地の小学生らに移動図書館を開き、英語を教えるボランティアも続けている。
神戸学院大の連携センター長の前林清和教授は「次世代の人たちが幸せな社会を築くことができるよう、そのリーダーとなる人材を全国的に広げて育成したい」と意気込む。
ボランティア充実、独自資格も 東北福祉大
東北福祉大は1993年に全国で初めて、ボランティア活動をカリキュラム化した。95年の阪神大震災の時には、120人の学生が被災地に入り、心のケアなどの支援活動をした。98年には学内にボランティアセンターを設置。各地の水害や地震の被災地で活動するなど全国でもトップクラスだ。現在、学内ボランティア活動を実践しているサークルが62団体もあり、約2200人の学生が所属している。
一方で、地域社会とのつながりも大切にしている。2004年度に、文科省の生涯学習まちづくりモデル支援事業に採択され、地域防災のコーディネーター養成講座を開いたり、防災力向上ハンドブックを発行したりしている。翌年には地域減災センターを設立、地震・津波に強いまちづくり実行委員会を組織し、中心的な役割を果たし、06年に、総務省消防庁の第11回防災まちづくり大賞の総務大臣賞を受けた。市民から句を募って防災・減災カルタも作った。
学生向けには、地域減災プランナーというオリジナルな資格を取得する科目も設け、来春には第2期生が卒業する。「地域社会に教育の場を借りている」をモットーに、企業に就職後も地域活動の担い手になるような教育を心がけている。
全4学部のうち、総合福祉、総合マネジメント両学部の5学科約700人が今回の連携授業を受ける。東北福祉の連携センター長、小松洋吉・同大学教授は「社会的ニーズが高いプログラムだと思う。社会貢献活動が市民社会の中に定着していくことが大切」と話している。
以上