東日本大震災への取り組み
2011年7月3日、有瀬キャンパス大学会館4階のマナビーホールで、東日本大震災災害ボランティア報告会が開かれました。本学および東北福祉大学、工学院大学、兵庫県立舞子高等学校の学生によるプレゼンテーションおよびパネルディスカッションは復興支援の熱気にあふれ、たくさんの来場者に感銘を与えるものでした。報告会終了後、運営スタッフとしてサポート役に回った学生も加わり、それぞれのボランティア体験を語り合いました。
被災地ボランティアに参加し
活動を通じてなにを得たのか、将来にどうつなげるか
司会:川口謙造(神戸学院大学学生支援グループ ボランティア活動支援室)
被災地での活動については、それぞれ報告会で発表していますので、皆さん一人一人、自分のことを語ってもらいたいと思います。テーマは、三つあります。ボランティア活動に参加しようと思った理由はなにか、活動を通じて自分がどう変わったか、そして、この体験を将来にどうつなげていくかです。
小野寺 萌(東北福祉大学 総合福祉学部2年次生)
私はTKK3大学連携プロジェクトで防災・減災について学んでいます。大学で得た知識を生かしたいと思いボランティア活動へ参加を希望しました。私自身が被災者でもあり、学校に通えたり、このような場所で自分の考えを述べることができることは、素晴らしいことで当たり前のことではないのだと感じます。これから先の学生生活も、一日一日を大切にしていきたいと思います。
松原 啓介(東北福祉大学 産業福祉マネジメント学部3年次生)
報告会は消防団のお話をしました。よく知っている身近な人が被災し、自分も無関係ではないと思い、ボランティア活動に参加しようと考えました。全国から集まった人たちの思いは、被災者をなんとか助けたいと、共通していましたが、それぞれ考え方が違うところも多くありました。自分にはなかった考え方を知る機会になった一方、さまざまな考えをまとめながら一緒に活動していくことの大切さと難しさを学んだ気がします。
柏木 茉衣(神戸学院大学 栄養学部1年次生)
私は募金活動に参加しました。阪神・淡路大震災のときの恩返しがしたいと思いました。周りの人の頑張りと気遣いに触れることができ、すごく温かさを感じました。私もそういう温かさを持って、人に接していけるようになりたいと思いました。
引田 咲良(神戸学院大学 人文学部1年次生)
私はまだ被災地に行ったことはありません。これまで現地の様子は、テレビを通じて見るだけでしたが、今日の報告会で生の声を聞き、それが本当に大変なことなのだと感じました。そのなかでも現地の人たちは、なんとかしようと必死に頑張っておられるというのが伝わってきました。
池野 貴美香(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部3年次生)
私も被災地には行っていませんが、皆さんの報告を聞いて、現状を自分の目で見たいということを強く思いました。その機会が得られるまでは、募金活動など、できることからやっていきたいと思います。
柳川瀬 佳奈(神戸学院大学 人文学部3年次生)
私がボランティアに参加したのは、もう現場に行くしかないと思ったからです。この活動に参加し、今まで以上に防災関連の記事やニュースに注意を払うようになり、関心が深まったと感じます。私は、学際教育機構防災・社会貢献ユニットに入ったときから、将来は防災に関する職に就きたいと考えていましたが、その思いがさらに強まりました。
濱田 真由美(神戸学院大学 大学院 人間文化学研究科修士2年)
私は2回被災地に行きました。ボランティア活動に参加した背景には、阪神・淡路大震災の経験があります。神戸市の長田区で、3カ月くらい避難所生活をしていました。たくさんのボランティアの方々がこられて、活動をしていました。その恩返しをしたいと思い参加しました。現地に行き、実際に自分で見て考えるということの大切さを実感しました。私は、NPO法人を運営していますが、この経験を活動につなげていき、関わってくる人たちに対して広めていきたいと思います。
堀内 麻衣(神戸学院大学 人文学部3年次生)
私は島根県出身で、被災した経験もなく、現場にいってボランティア活動をした経験もありません。社会貢献分野に興味があり、学際教育機構防災・社会貢献ユニットに入りましたが、ボランティア活動が実際はどのようなものかということが実感できずにいました。今回参加し、ボランティア活動をする側と、それを受ける側とに分けて見る面がありましたが、そういう枠でとらえていてはいけないということと、自己満足のボランティアにならないように気を付けないといけないという意識を持つようになりました。授業でプレゼンテーションをする機会があるので、いけなかった人たちにも伝えていきたいと思います。
吉澤 真純(工学院大学 建築学科4年次生)
この地震が起きたとき、東京でもかなり強い揺れがありました。ニュースで被害の状況が徐々に分かり、自分もなにかしたいと強く思いました。学校から行けるということになり、すぐに参加しようと決めました。現地では、「おはよう」や「こんにちは」といった、ただの挨拶が、すごくつながっていると感じました。震災以前は2軒隣に住んでいる方と口をきいたことがありませんでしたが、「おはようございます」と言えるようになりました。私は建築を学んでいるので、そのようなコミュニケーションが取りやすい町や家づくりということに取り組んでいきたいと思います。
新田 龍宏(工学院大学修士 建築学専攻)
私はボランティアに行かないとダメだと思い参加しました。実際に行き、被災された皆さんが、きちんと秩序を保って日々を送っておられることに心強い思いがしました。大変な目にあいながら、ちゃんと他の人のことも気遣う。そして、ボランティアにもいろいろな分野があり、自分がその一部を行い、被災者とつながっていくことでいろいろなお手伝いの方法が考えられるのだということを学びました。
馬場 優太(神戸学院大学 経済学部4年次生)
私は、大学で学んでいるからだけでなく、友だちが心配で参加しました。2週間後に兵庫県のボランティアの先遣隊が出るという連絡があり参加しました。震災発生の2週間前に仙台で見た景色が、全く違う風景に変わっており、別の土地にいるような中で活動をしました。このときは時間的な制約があり中途半端な作業になってしまい、無責任なことなのではないかと感じ、ボランティアとは何だろうと考えるきっかけになりました。私は広島出身で、将来はそこで地域活性化や社会問題の解決に関わっていきたいと思っています。災害はどこでも起こる可能性があり、自分の夢や、やりたいことを守るためにも防災の考え方は大事だと改めて感じました。
盛岡 俊介(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部3年次生)
私は地域福祉やソーシャルビジネス、コミュニティービジネスについて学んでいます。ボランティア活動に参加したのは、活動したい思いに加え、災害時にボランティアがどのように機能するかを知りたかったからです。普段は制度と人をつなぐ勉強をしていますが、行政の手が届かないところでも、機動力のあるボランティアができると実感しました。一方で、ボランティア活動には不安定な面あり、どのように安定的な活動につなげていくかという課題を感じました。社会福祉の現場でも経営や運営が取り入れられなければならないと思います。社会福祉の観点から、復興に携われればと思っています。
大西 真理絵(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部3年次生)ボランティア活動基金VAF
私は、現地での活動に戸惑いがありました。募金活動を通し神戸で学生が頑張ってくれているのがうれしいという被災地からの声が届き、参加につながりました。ボランティア活動の地域社会での機能などを知りたいと思う一方で、ボランティアがあまり介入しすぎてはいけないのではないかと不安や疑問がありました。活動に参加し、ボランティアだからできることがあるのだということを改めて認識できました。いま私は、学部で地域福祉を勉強していますが、将来はコミュニティーソーシャルワーカーかボランティアコーディネーターとして働きたいという夢を持っています。卒論では無縁社会とか孤独死について取り上げようと考えていますが、被災地の仮設住宅や社会参加の状況などを取り入れてまとめたいと考えています。
松井 康裕(神戸学院大学 法学部2年次生)
私が募金活動や被災地でのボランティアに参加したきっかけは、阪神・淡路大震災のときの祖父の話などを聞いていたからです。実際に被災地に入って感じたのは、家族や友人を含め当たり前の日常が、簡単になくなってしまうということです。石巻で家屋の片づけを手伝っているときに、一枚の写真を見つけ家の人に渡すと、涙ぐまれました。その様子を見て、家族や友人、身の周りの人たちの大切さというものを、あらためて感じました。この経験を通じて、将来は人が暮らす地域に根付いた仕事をしたいと思うようになりました。
山端 宏(神戸学院大学 法学部2年次生)ボランティア活動支援室の学生スタッフ
今回はまずVAFの募金活動をともに行い、被災地で活動できる機会に、参加しました。現地では想像を超える被害があり、ボランティア活動そのものが、これまでと違う形に見えました。このような大規模な被災地では、ボランティア活動をするという環境を作るのが、どれだけ大変かということを実感しました。今後も継続的な活動をしていこうと思います。また、被災地で法律系の団体が、法律相談を行っているのを見ました。私は法学部に在籍しているので、将来そのグループの一員となって、継続的な支援活動に携わっていきたいと思いました。
児玉 優衣(兵庫県立舞子高等学校3年)
私は地震の様子をテレビで見て、なにかしたいと思い、春休みは募金活動をしていました。新学期が始まると、クラスで東北へ行くという話になり参加しました。現地で活動して、防災意識が高まった気がします。私は環境防災科で学んでいるので、被災地で見たり聞いたりしたことを、将来の仕事につなげていければいいと思います。
岡野 優希(兵庫県立舞子高等学校2年)
私も春休みに募金活動を行ったあと、学校から現地に行くボランティアに参加しました。現地での活動から帰ると、当たり前の生活が、すごく幸せなことだと感じるようになりました。また、こちらでなにか役に立てることはないかと考えるようになりました。将来は、警察官になることを考えていますが、地域に密着した公務員として、働きたいと考えています。
今井 直人(兵庫県立舞子高等学校3年)
私が舞子高校の環境防災科を志望したのは、ボランティア活動をしたいという理由からでした。今回の震災では、4月になり希望者のなかから選ばれ石巻へ、5月にもクラスで東松島へ行きました。私は防災の専門学科で勉強していますが、実際の活動では全然知らないことも多く、勉強が足りていないことを実感しました。将来は、防災教育のなかで、自分が学んだことや体験したことを伝えていける高校の教師になりたいと思います。
吉田 麻美(神戸学院大学 人文学部3年次生)
私は学際教育機構防災・社会貢献ユニットで阪神淡路大震災をはじめ世界各地で起こった災害について学んでいます。被災地にはこれまでに4回行きましたが、行くたびにどれほど大変なことが起こったのかということを実感として分かる気がしました。私も阪神・淡路大震災で被災し、そのときのボランティアの人の話を両親や祖父母から聞いていましたので、自分も何かしないと、という気持ちでした。活動を終えて帰ると、関西の平和さとかゆるさなどに、憤りを感じることがありました。私はいま、いままで防災の勉強をしてきてよかった、社会に出ても続けていきたいと、考えています。
(以上、発言順)
経験を伝えるのは人と人とのつながり
ダイナミックな活動の可能性秘めるボランティア
川口: みなさんありがとうございました。最後に、私からいくつか質問させていただきます。いま、吉田さんの話のなかで、温度差がすごくあるということが出ました。ボランティア活動や被災地の状況について、関心のある学生もいれば、関心のない学生もいると思います。多くの若者に対し、活動に参加した立場からメッセージや伝えたいことはありますか。
山端: 経験を伝える方法は、人と人とのつながりが一番だと思います。今日行った東日本大震災ボランティア報告会のような地道な活動報告で、徐々に浸透していくと思います。話を聞いた子が、友だちに伝えるなど、広がっていくことを期待しています。
川口: ボランティア活動基金VAFでも報告会などはされていますか。また、今回の震災に対して温度差はありますか。
大西: 毎月何人か被災地ボランティアに参加しています。参加したメンバーが現地の状況や、活動の心得などをこれから参加するメンバーに伝えています。今回の震災により本来の活動であるカンボジアの教育支援の方ができておらず、本当はそちらをしたいというメンバーは、少なからずいると思います。
川口: 震災支援とカンボジア支援、どちらが価値のある活動かとは言えないので、それぞれ尊重し合っていってください。では、少し話題を変え、今回のボランティア活動に関して、大学や社会に対してなにか要望はありますか。
柳川瀬: バスに一度に乗って行ける人数が限られているので、希望通りの日程で行けないということです。現地に行き手伝いたいという学生は多いので、もう少し希望を聞いていただきたい。
馬場: 私は学生と大学側が対話をし、活動の輪を広げられたらいいと思います。活動を学校単位でくくらず、学生ならではのつながりやコミュニティに発信し広げていく。学生と学校が連携すれば、もっと多くの場面を作れると思います。
濱田: ボランティア活動をするということを、もっと公に認める社会になることが必要だと思います。学生の間はできるけれど、社会に出ると続けられない。学生時代の4年間、6年間で活動が止まってしまうのが現状で、それを続けられる社会制度ができていけばいいと思います。
川口: 最初はたまたま横にいた人、たまたま出会った人のサポートからスタートするボランティアも、そういう社会制度といった大きなところまで視野に入れると、すごくダイナミックな活動の可能性を秘めていると思います。そういうビジョンを持ちながら将来を考えいただければいいと思います。