「神戸学院大学における今後の教育改革 ― 学士課程教育の構築に向けて ―」
本学教育活性化会議には、学位授与の方針について話し合う「ディプロマ・ワーキンググループ」、教育課程改革について担当する「カリキュラム・ワーキンググループ」、入学者受け入れと高大接続について検討する「アドミッション・ワーキンググループ」があります。
議題項目
- 学位授与の方針をめぐって
- 教育課程改革をめぐって
- 入学者受け入れと高大接続をめぐって
出席者
- 座長: 副学長 早木仁成
- 学長 岡田芳男、経済学部教授 山上宏人(ディプロマ・ワーキンググループ)、経済学部准教授 常廣泰貴(ディプロマ・ワーキンググループ)、総合リハビリテーション学部准教授 備酒伸彦(カリキュラム・ワーキンググループ)、薬学部教授 横井利夫(アドミッション・ワーキンググループ)
1.学位授与の方針をめぐって
さまざまな教育評価基準の導入を検討し
社会が求める「学士力」を備えた学生を育てる
ディプロマポリシーをより具体的に明示
早木副学長(以下、座長と表記): 今回の座談会では、中央教育審議会が提言している3つの方針を念頭に置きながら、本学の教育改革の行方を探りたいと考えています。本学でも、かなりの議論を経て起草された大学憲章があります。憲章には、建学の精神「真理愛好・個性尊重」をはじめ、教育理念や大学が目指す姿といった教育に直接関わる記述が記されておりますが、中央教育審議会の答申では、さらに具体的な学習成果、つまり「学士力の向上」を求めています。そこで、山上教授から本学の現状についてのお話をいただきたいと思います。
山上教授: 私は、教育活性化会議のディプロマ・ワーキンググループの一員として課題に取り組んでいくなかで、現状では、各学部がどのような質やレベルの学生を養成したいのかといった具体的な目標についてコンセンサスがとれていないと感じています。そこで、それぞれの学部ごとに卒業生のイメージを明確にし、具体的な目標を立て、どういう形で学生に学習してもらい、卒業にまで結びつけていくのかを検討することが必要だと考えています。
座長: ディプロマポリシー(「教育の実施や卒業認定・学位授与に関する基本的な方針」)をどう考えていくかということに関しては、大学憲章に建学の精神や教育基本理念が明記され、学則にはそれぞれの学部学科が目標とする姿を本学でも明示しています。これに向かって教育を展開すべきであるということは、すでに共通理解として得られているはずなのです。しかし問題は、山上教授が言われたように、具体性のあるものにしていかなければいけないという点です。それが、現在の課題であると思います。
横井教授: ディプロマポリシーは学部の教育目標をどうするか、ということです。それを実現するための具体策をどうするかということについては、現在6年制の薬学部で行われている「モデルコアカリキュラム」が参考になるかと思います。例えば、学部全体、あるいは科目の教育目標を「知識」「態度」「授業」という3領域に分類し、学ばなければならない内容を項目毎にたて、それぞれの教育目標を達成していくというやり方です。資格を取る専門職業教育の学部においては、やりやすいのですが、文系においては目標が漠然としている場合が多く、教育目標も3つの領域だけでは不十分だということで、「知識理解」「思考判断」「関心意欲」「技能表現」「態度」の5つの領域に分類することが多いようです。このようなやり方は時間もかかって大変な作業となりますが、目標を作成するための具体策としてはよい方法ではないかと思います。学部の目標などは、総リハの履修の手引きに示されているように、箇条書きで書き示すなどをすると、学生が一見して理解できてよいのではないでしょうか。教科ごとの目標は、薬学部の履修の手引きが参考になるかと思います。
備酒准教授: 総合リハビリテーション学部では、15の教育指針を掲げています。ただ、こうした指針が継続的に踏襲されて、例えば、本学の建学の精神のように教員の誰もが理解したうえで、具体的なディプロマポリシーなりカリキュラムができているかというと疑問符がつきます。そうしたこともあり、私自身は、教育活性化会議の存在意義を強く感じているところです。会議では大学としての方針を改めて確認できたり、他学部の諸データを拝見できたりしますので、学ぶ点が非常に多い。また、そのような情報を学科会議等でフィードバックすることで、学部では極めてよいサイクルができつつあり、ディプロマポリシーを学部単位でもう一度見直そうというムードがでてきているように思います。
座長: 学生の立場に立ってみれば、4年次生になり就職活動をする際に、自分は大学でこれを学んだ、こんな力が身に付いたとはっきり言える学生は現状では非常に少ないと思います。そうした意味では、学生が胸を張ってこれを学んだと言えるように導くことが大事だと思います。もうひとつ、このディプロマポリシーに関してですが、薬学部など理系学部の場合は比較的明確な目標を設定しやすいかと思います。ただ、文系学部においては、明確な将来が描きにくいという点で、目標設定が難しい部分もあるのではないでしょうか。
常廣准教授: 理系学部の場合は、最終的に国家試験に合格することによって学力が保証されるという側面があるとは思いますが、経済学部などの文系学部ではそうした経験をしない学生がほとんどです。そこで、どういった人物を目指すかということになると、コミュニケーション能力がある、あるいは一般常識があるなどの能力を有する人材を育成するということになるのではないでしょうか。
座長: 特に文系学部の場合、どのような人材を育成することを目指しているのかという教育目標というのは一応あります。しかしそれが答申に書かれているような全般的に現代社会に対応する、うまく適合する人物であるといったレベルのもので果たしてよいのかどうか。そうした課題について、ご意見をお願いします。
横井教授: ひとつは、社会がわれわれの大学に何を求めているのかというニーズを考慮に入れないといけません。本学にはいくつかの学部がありますが、まず、社会が何を求めているかということを真摯に受け止め、共通の「学士力」を学生に身に付けてもらう。そのうえで、例えば法学部なら、どういった特色を持った法学士を育てるのかといったことを議論するなど、各学部の専門性や特色または専攻、副専攻などをはっきりと打ち出すべきだと思います。
座長: 学士としてみな同じということでしたら、学部で分ける必要がなくなってしまいます。そうではなく、各学部の専門性に関わるような部分での「学士力」を養うことが大事だということでしょう。これから教育活性化会議の担当者が、各学部に持ち帰って検討していただく課題であると考えています。