周辺社会とつながる学びケース2
周辺社会とつながる学び ケース【2】:
― 法学部・経済学部合同で行われている外部講師による授業例
「キャリアアップ講座Ⅸ・国際ビジネス事情」
2007年5月15日(火)・22日(火)
場所 ポートアイランドキャンパス B106講義室
講師 SMBCインターナショナルビジネス株式会社
リテール事業部部長 西村 修治 氏
キャリアアップ講座の授業「キャリアアップ講座Ⅸ・国際ビジネス事情」は、普段企業で職務についておられる外部講師を招いて法学部と経済学部合同授業として開講されています。今回は、以前、株式会社住友銀行(現:株式会社三井住友銀行)に勤務し、現在は旅行小切手・外国通貨に関する事務の受託を主な業務とするSMBCインターナショナルビジネス株式会社の部長を務めておられる西村修治氏が教壇に立ち、海外、特に自身が勤務しておられたスイスの銀行事情を中心に講義が行われました。
西村氏は、1972年に株式会社住友銀行に入社されてから、銀行の本来の業務である預金・貸付け業務ではなく、資金証券・調査・国際等幅広い仕事をされてきました。とくに今も日本では銀行は一部を除き原則禁止されている投資顧問業務、いわゆる“プライベートバンキング業務”にも直接携わられました。いまもこの業務に直接関わった銀行員はほとんどいないのですが、なぜそうした業務ができたのか。その答えはスイスにある、ということが今回の講義で展開されていきます。
日本がバブル経済に突入する直前の1984年、頭取が不自然な自殺をとげるというスキャンダラスな事態に見舞われていたイタリア系のアンブロジアーノ銀行の傘下だったゴッタルド銀行を当時の住友銀行が買収しました。同銀行はスイスのルガノというイタリア国境近くにある人口3万ほどの小都市に本店をおいていました。この銀行を当時の住友銀行は証券や投資顧問業務を海外で行う拠点としたのです。
スイスの主な産業は、美しい自然を生かした観光と専門性の高い銀行業です。特に、スイスでは幅広い金融業務を行えるいわゆるユニバーサル銀行制度で、効率的な金融システム、高度な運用ノウハウに加え、法律で保障された守秘義務はスイスの銀行業務の大きな支えとなっています。犯罪にかかわるような場合は別として銀行は顧客の情報は一切外部に漏らさない徹底さが評価され、世界の特に欧米のお金持ちがこぞってスイスの銀行にお金を預けることになり、スイスが金融大国となったというお話でした。
さらに西村氏は、フランス・イタリア・ドイツなど周辺諸国の文化圏に分かれるスイスでは、それらの国から資金が流れや来やすいこと、スイスの銀行員は、顧客との関係を徹底して伏せるためレストランで席が隣合わせになっても自分からは挨拶もしないほど厳格な守秘関係が築かれているなど、当地で実際に業務を行った方ならではの、エピソードの数々を披露。海外勤務を目指す学生にも、大変興味深い講義となりました。
ビジネスにおける生の現場の臨場感を学生に伝える
経済学部准教授 毛利進太郎
講師の方には、キャリアアップ講座の講義をしていただく際に、なるべくビジネスにおける生の現場の臨場感みたいなものが学生に伝わるようにお話ししていただくようお願いしています。それによって学生たちが、その業界や仕事に興味を持ってもらうきっかけになればと考えるからです。
実際、講義が終わってから、講師の先生に直接業界や仕事についてより詳しいコメントを求めたり、どうすれば自分がその仕事に就けるのかなどを相談している学生もいます。この講座も開講して今年で4年目になりますが、こうした学外の講師の方を招くことは、学内の教員にも少なからず影響を与えています。キャリアアップ講座を担当しておられた外部講師の方が本学の研究会に参加されるなど、本学の教員との交流も生まれています。
新キャンパスができたことで、関西ビジネスの中心である神戸や大阪などが至近距離となり、今後こうした交流がより活発になるのではないでしょうか。