力のない学生の僕が、
海外の小学校に、
トイレをつくってしまった。
経営学部 4年次生 ※2020年取材時 久保田 智也さん
「なんとなく」が終わった
ボランティアとの出会い。
思い返せば、これまでの僕は周りに流され生きてきた。
神戸学院大学に入学したのは、兄が通っていたから。
入学後にボランティア団体に入部したのも、友人に薦められたから。
それなりに楽しく過ごし、なんとなく過ぎていく時間。
けれど、ボランティアのイベント運営を任されて失敗に終わった時、
僕はそれをそのまま流せなかった。
今だったら分かる。
先輩から言われたことをただやるだけでは足りない。
自分の頭で考えて、準備をして、仲間と協力する。
当時の自分には具体的な解決策はわからなかったけれど、
立ち止まって初めて「変わりたい」という強い想いが生まれていた。
そんな時、キャンパスライフを変えるチャンスが僕にもめぐってきた。
NPO法人が募っていたバングラデシュへのツアーだった。
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バングラデシュの衝撃。
僕は何も知らなかった。
アジア最貧国であるバングラデシュ。
この地にやって来た目的は、貧困地域の現地視察をすることだった。
ツアーの過程で、僕らは農村部にある学校を訪れた。
「これが、学校?」。知識と現実には大きなギャップがあることに改めて気づかされた。
そこで、勉強をする子どもたちの姿は衝撃的だった。
お世辞にも綺麗とはいえない教室で、日本の子どもたち以上に熱心に授業を受けていた。
そんな僕をさらに驚かせたのが、子どもたちが学校に行けない理由。
お金がないから。家の仕事を手伝うから。ここに来るまではそんな風に思っていた。
だけど、予想もしない答えが現地の人から返ってきた。
「トイレがないから、女の子たちは学校に行くことができないんだ」。
「え?え!」と聞き返してしまうくらい、ビックリしたのを覚えている。
そして、次の瞬間、自分の中にある思いが芽生えた。
「トイレをつくって思う存分勉強できる環境を作ってあげたい」。
帰国後、すぐに僕は行動を起こし、
“トイレ建設プロジェクト”を立ち上げることになった。
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挫折、苦悩、歓喜。
自分の頭で考える時間。
お金を集めて、NPO法人に依頼して現地にトイレを作ってもらう
「トイレ建設プロジェクト」。必要な額は10万円。
その道のりは決して、順調だったわけじゃなかった。
正直、「すぐに募金は集まるだろう」なんて、甘く考えていた。
でも現実は違った。友達に協力を頼んでも3人に2人は断られた。
数カ月経っても募金は集まらない。メンバーのモチベーションも目に見えて下がっていった。
ひょっとしたら初めての挫折だったかもしれない。
でも、不思議と諦める気は起こらなかった。
それどころか、目標達成のために何が出来るか。必死で自分の頭を働かせていた。
まずは大学に協力を仰ぎ、大学公認の募金活動として街頭に立たせてもらった。
メンバーにはこの活動がいかに意義のあることであるかを説いて回った。
気づいたら、一つずつ課題を解決していく感覚に、僕は夢中になっていた。
結果はすぐに募金箱の重みとなり、それに比例するようにメンバーの士気は上がっていった。
そして、とうとう目標の10万円を集めきった。プロジェクト開始から7カ月も経っていた。
いざ、NPO法人の方にプロジェクト費を渡すと、
「まさか本当に集めるなんて」と、とても驚かれた。
その時は喜びよりも、終わった安堵感の方が強かったと思う。
後日、完成したトイレの写真が送られてきた。きっとこれからも忘れることのない一枚。
「すごいことをやり遂げた」とプロジェクトを振り返って、改めて自分の成長を実感できた。
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色あせない、
成長の連鎖。
トイレが完成して数カ月後。
自分の目で確かめたくて、バングラデシュを再び訪れた。
「THANK YOU !! Mr. KUBOTA !」
学校に着くと子どもたちが輪を作って僕を出迎えてくれた。
僕が携わったトイレでこんなにも喜んでくれる人がいる。
そう思うと自然と口元が緩むのが分かった。
改めて自らが手掛けたトイレを前に思う。
このトイレの完成までにはたくさんの困難を味わった。
だが、今の僕にとってこの経験の一つひとつが、
たくさんの「できた」の詰まった「語れる成長」だ。
きっと今の顔つきを見たら、入学当時の自分は
「一体何があったんだ」なんて聞いてくるに違いない。
神戸学院大学には、無限のフィールドが広がっている。
学内にはたくさんの課外活動やプロジェクトなどがあり、
自分が一歩踏み出せば、海外にだってつながっていく。
その一つひとつの経験が、自分の糧となる。
僕のプロジェクトは、一つの区切りを迎えたけれど、これで終わりではない。
これからも未だ見ぬ後輩たちの手で、
第二、第三のプロジェクトが生まれていくことを僕は楽しみにしている。
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久保田 智也さんの
- バングラデシュでの経験から、「トイレ建設プロジェクト」を設立。
- 募金活動を通して、人と協働する力が身についた。
- ボランティア活動を通じて、自主性が身につき「語れる成長」ができた。
学生ボランティアスタッフ
80名を超える学生スタッフ自らがボランティアに参加するだけではなく、災害班、環境班、子ども班、医療班、国際班、広報班と6つの班に分かれそれぞれ班の特性を生かした企画を行っています。また、同じ学生という立場から、他の学生のボランティア活動もサポートしています。
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