科目一覧へ戻る | 2024/07/25 現在 |
開講科目名 /Class |
異文化コミュニケーション研究Ⅱ/Studies in Cross-Cultural Communication Ⅱ |
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授業コード /Class Code |
B506801001 |
ナンバリングコード /Numbering Code |
HASd312 |
開講キャンパス /Campus |
有瀬 |
開講所属 /Course |
人文学部/Humanities and Sciences |
年度 /Year |
2024年度/Academic Year |
開講区分 /Semester |
後期/AUTUMN |
曜日・時限 /Day, Period |
木1(後期)/THU1(AUT.) |
単位数 /Credits |
2.0 |
主担当教員 /Main Instructor |
出水 孝典/DEMIZU TAKANORI |
遠隔授業 /Remote lecture |
No |
教員名 /Instructor |
教員所属名 /Affiliation |
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出水 孝典/DEMIZU TAKANORI | 人文学科/Humanities |
授業の方法 /Class Format |
対面授業(講義) |
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授業の目的 /Class Purpose |
言葉を使ったコミュニケーションに関して、語用論・社会言語学の知見を援用し、理解を深めることを目的とする。文学部人文学科のディプロマポリシーで言うと人文学部人文学科のディプロマ・ポリシーのうち2「人間の行動や文化に関する専門知識と技能を総合的、体系的に身につけている」、9「学部教育と融合した教職教育をとおして、学校教育の目的や目標、地域社会の課題を理解し、さまざまな要求や問題解決に取り組み、生徒の知識や技能、主体的・協働的に学習に取り組む態度の育成を図る教員として活躍できる」に相当する。 異文化コミュニケーションという用語は様々な解釈が可能だが、価値観の異なる者同士のコミュニケーションは異文化コミュニケーションだと考えることができる。社会言語学者であるデボラ・タネンによると、男女は異なる文化に属し、異なる価値観を有する。従って、男女のコミュニケーションも異文化コミュニケーションであるという。そこで、そもそも男ことば・女ことばがどのように異なっているのか、その違いを説明するのにどのような考え方がこれまであったのかをまず見ていく。 一方、性別とは関係なく、人は自分とは縁のない生き方、宗教、思考方法、それに社会的・美学的な文化形態にたいし、身ぶるいし嫌悪を示すということを、意識的・無意識的にやってのけている。そのような否定的感情・評価が、言語使用にどのように反映されるのかという問題も取り上げる。 |
到 達 目 標 /Class Objectives |
1. 男性と女性のそれぞれに見られる言葉の使い方の典型的な違いを理解することができる。 2. 言語使用の男女差が生じる理由の諸側面を理解できる。 3. 言葉の文字通りの意味に加えて、用語に込められた価値観、差別意識などの含みについて理解できる。 4. 無意識の言語使用の背後ではたらいている仕組みを理解し、より言葉に敏感になり、適切な言語使用ができるようになる。 5. 言語・文学科目群の卒業研究を執筆する際に、自分の収集した言語データの分析に応用できる。 |
授業のキーワード /Keywords |
男ことばと女ことば、女ことばに関する支配説と相違説、ことばに込められた価値観、蔑視語、婉曲語、ヘイト・スピーチ、LGBTをめぐる言説 |
授業の進め方 /Method of Instruction |
授業ではまず、日本語の小説などをデータとして提示し、その一部分の解釈について考える。残りの時間でその内容をさらに掘り下げ、さらなる英語・日本語のデータも挙げながら、卒業研究で言語データを分析する際にどう使えるのか見ていく。なお、授業の最後に、出席カードに確認テストの解答と授業の感想を書いて提出してもらう。 |
履修するにあたって /Instruction to Students |
言葉に関してあれこれ「なんでやねん」とツッコミを入れたくなる人はぜひ履修して下さい。言語文化領域の人は、卒業研究のネタ探しにもなると思います。 |
授業時間外に必要な学修内容・時間 /Required Work and Hours outside of the Class |
毎回、前回の授業でやった内容、特にそれぞれの用語とそれが表す概念についてきちんと復習する(60分~90分)。言語に関して卒業研究を書こうと考えている受講者は、自分が演習クラスで取り上げているテーマに関して、授業内容をどう関連づけられるのか、毎回よく考えること。また、ふだん自分が見ているネット上のサイトの記述、テレビドラマや映画の台詞、小説などについて、授業で学んだことを生かした分析ができないか検討するようにしよう。 |
提出課題など /Quiz,Report,etc |
毎回の授業の終了後、アンケートに確認テストの解答を書いて提出してもらう。次回の授業で毎回、その内容の内興味深いものに関してコメントする。 |
成績評価方法・基準 /Grading Method・Criteria |
確認テストの解答60%(きちんと書けているか)、期末レポート40%(適切な引用とそれに対する考察ができているか) |
テキスト /Required Texts |
なし |
参考図書 /Reference Books |
Lakoff, Robin. (1975) Language and Woman’s Place. New York: Harper & Row. (ロビン・レイコフ『言語と性―英語における女の地位―』〔新訂版〕かつえ・あきば・れいのるず(訳)東京:有信堂高文社. 1990年) Tannen, Deborah. (1990) You Just Don’t Understand: Women and Men in Conversation. William Morrow.(デボラ・タネン『わかりあえない理由―男と女が傷つけあわないための口のきき方10章―』田丸美寿々(訳)東京:講談社. 1992年;『わかりあえる理由 わかりあえない理由―男と女が傷つけあわないための口のきき方8章―』(講談社+α文庫)田丸美寿々(訳)東京:講談社. 2003年[1992年の縮約版]) 小林健治. (2018) 『最新 差別語・不快語』 東京:にんげん出版. 他多数 |
No. | 回 /Time |
主題と位置付け /Subjects and position in the whole class |
学習方法と内容 /Methods and contents |
備考 /Notes |
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1 | 第1回 | 導入 | 言葉に込められた価値観とは何か、そもそも価値観という概念が何を表すのかを見た後、この講義の言語学内での位置づけを確認し、各回で取り上げる内容を概観する。 | |
2 | 第2回 | 女ことばの特徴 | 日本語で男ことば・女ことばとされるものの特徴について概観した後、英語の女ことばについてロビン・レイコフが述べていることを見て日本語の女ことばにも当てはまる部分があるのかどうか考える。 | |
3 | 第3回 | 女ことばに対する2つの見方―支配説と相違説― | 英語の女ことばが生じる理由を、ロビン・レイコフは男性が女性を支配して女性が自信をもてないからだと述べた。このような見方は支配説と呼ばれる。一方、そうではなく、男女はそもそも属している文化が異なるため、違った話し方をするのだという相違説と呼ばれる見方もある。これらについて、色々な例に基づいて見ていく。 | |
4 | 第4回 | 支配説と相違説による見方の比較 | 英語や日本語の女ことばの様々な特徴が生じる理由を、具体例を見ながら支配説と相違説に基づいて考えていく。 | |
5 | 第5回 | ジェンダー差別を含む言葉1 | 男性や女性に関して述べるときに用いられる言葉のうち、女性に関するもののみが、女性が性的対象であるとか男性の付属物であるといった男尊女卑的な価値観を含んでいるものがある。男性と女性に言及する場合を比較することで、そうした価値観を浮き彫りにしていく。 | |
6 | 第6回 | ジェンダー差別を含む言葉2 | 男性や女性に関して述べるときに用いられる言葉のうち、男性が女性よりも優れていて高い能力を持つという価値観を内包した表現を見ていく。具体的には、女性を子供と同一視したり、無能な男性を女性に喩えたり、女性の社会進出を揶揄したりする言葉を考える。 | |
7 | 第7回 | ジェンダーに対する固定観念を表す言葉 | 男性や女性に関して述べるときに用いられる言葉に、男性らしさ・女性らしさに関するジェンダー・ステレオタイプを含意する言葉があることを見ていく。そういた言葉に基づく偏見は、ジェンダー・バイアスと呼ばれる。 | |
8 | 第8回 | まとめ1 | 第2回~第7回の内容について復習する。 | |
9 | 第9回 | 言語に込められた価値観 | 言語を使って何かを記述する場合、記述対象に関して言語使用者がどのような感情を抱いているのか、それが生み出された言語表現の微妙な部分にどのように反映されるのかを考えていく。 | |
10 | 第10回 | 用語に込められたマイナス評価 | ある単語そのものに、マイナスの評価(悪玉であるという価値観)が込められている場合がある。そのような語は、蔑称や蔑視語、差別語と呼ばれている。そのいくつかの具体例について考えていく。 | |
11 | 第11回 | ヘイトスピーチ | ヘイトスピーチ(hate speech)は憎悪表現とよく訳されるが、単なるマイナス評価の込められた用語・表現とは異なり、標的とした被差別マイノリティに対する、差別に基づいた扇動を行い攻撃を加える行為である。この種のヘイトスピーチの実態と問題点について考えていく。 | |
12 | 第12回 | 婉曲表現をめぐる問題 | 物事を遠回しに言う表現は、不快な言及の仕方を避けるために用いられて来たが、場合によってはそれが、醜悪な現実を隠蔽するのに用いられることがある。そのようなものの例(例えば、オウム真理教の言う「ポア」やナチスの言う「最終的解決」など)について考えていく。 | |
13 | 第13回 | LGBTとそのカテゴリー化による位置づけ | LGBTという概念について学んだ後、そのような性的マイノリティに言及することばのうち、ある種の問題ある価値観を含んでいる言い方としてどのようなものがあるのかを見ていく。 | |
14 | 第14回 | LGBTに対する見方を示す表現 | LGBTに関する記述において、これまでどのような見方・価値判断が示唆されてきたのかを、小説からの実例、雑誌の記事などを見ながら考えていく。 | |
15 | 第15回 | まとめ2 | 第9回~第14回の内容について復習する。 |