科目一覧へ戻る | 2023/07/20 現在 |
開講科目名 /Class |
政治思想史/History of Political Thoughts |
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授業コード /Class Code |
B201352001 |
開講キャンパス /Campus |
ポートアイランド |
開講所属 /Course |
法学部/Law |
年度 /Year |
2023年度/Academic Year |
開講区分 /Semester |
前期/SPRING |
曜日・時限 /Day, Period |
火2(前期),金1(前期)/TUE2(SPR.),FRI1(SPR.) |
単位数 /Credits |
4.0 |
主担当教員 /Main Instructor |
佐藤 一進/SATO TAKAMICHI |
科目区分 /Course Group |
【専門教育科目】 〈一般専門教育科目〉/*** MAJORS *** 〈ADVANCED SUBJECTS〉 |
遠隔授業 /Remote lecture |
No |
教員名 /Instructor |
教員所属名 /Affiliation |
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佐藤 一進/SATO TAKAMICHI | 法学部/Law |
授業の方法 /Class Format |
対面授業(講義) |
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授業の目的 /Class Purpose |
本科目は、法学部のDPに示す、法的素養の修得と公的事柄への責任意識、そして公平性と客観性を備えた政治的な思考力、判断力および行動力の涵養を目指しています。 なぜ現代の、それも日本に生きる私たちが、西欧の、それも過去の思想を学ぶ必要があるのでしょうか。そこから何が得られるのでしょうか。それによって、わたしたちの「政治(Politics)」にかんしての見方や考え方、行動の仕方はどう変わりうるのでしょうか。 こうした問題意識から、本科目では、現代に展開される様々なレベル、また様々な単位での「政治」を構成する諸要素が、西欧の思想の歴史のなかから創出され、変容されつつ、継承されてきた経緯の概要を辿ります。先の一連の問いにここで答えるならば、西欧政治思想史を知らずして、現代の政治現象(たとえば、テロリズムやポピュリズムの問題)はもちろん、経済や社会の現象(たとえば、グローバル資本主義やICT、AIによる社会変革)を的確に捉えることはおぼつかない、というものになるでしょう。 とはいえ、それは具体的にはどういう意味なのでしょうか。そのことは実際の講義のなかで体感しながら思考してもらいますが、さしあたってのモチーフを示しておくならば、それは「自然(nature)」と「人為(art)」をめぐっての諸問題となります。 この自然と人為の二項対比からなる問題について、もう少し敷衍しておきましょう。 皆さんが学んできた日本国憲法、そして、憲法に立脚する六法をはじめとする諸法律は、ご承知の通り、「実定法(pojitive law)」と呼ばれます。ところで、こうした無数の実定法、つまり人為的に定められ、その起源も明確な諸法律の「妥当性」の基準はどこからやってくるのでしょうか。多数者の同意でしょうか。では、そこからはみ出る少数者の利益や権利が損なわれる場合、これらの法律は正しい意味での「法律」と呼べるでしょうか。 この問いには法学的にさまざまな回答が可能です。しかしながら、「古典古代」と呼ばれるギリシア=ローマの時代から、グロティウス、ホッブズ、ロックら近世・近代の政治思想家にいたるまで、基本的に、実定法の基準は「自然法(natural law; law of nature)」であると考えられてきました。中世の聖トマスは、それを「神の法(divine law)」とも呼んでいます。 ただし、この「自然(nature; physis)」についての理解と解釈が徐々に変容し、古代と近代ではある意味でまったく異なるものとなってくるのが、2600年の長きを優に越える西洋政治思想史の過程です。いわば、プラトンの理解する「自然な法」と、ホッブズの理解する「自然な法」は、その意味内容がまったく違うだけでなく、対立的なものでさえあるわけです。 本講義は、そうした「自然」の概念の受容と継承、さらには変容の過程を、可能な限り簡潔に、思想家や哲学者の書き遺した「古典」に即して跡付け、理解しようと試みるものです。 要約すれば、本科目は、現代世界に対する主体的な視座の獲得を念頭に、法学ないし政治学を専門的に学ぶ受講者に対して、これからの学修を有機的で稔り豊かなものとするべく、そのたしかな土台となる「自然」と「人為」をめぐる政治思想の歴史に触れる機会を提供するものです。 |
到 達 目 標 /Class Objectives |
(1)政治思想史の基礎知識(人名・語彙・概念・歴史)を習得する。 (2)西欧という他者の思想、そして過去から現在にいたる政治思想の歴史を学ぶことで、現代日本に生きると同時に、グローバル世界にも生きる私たちを的確に認識し、思考するための土台を構築する。というのも、「いま、ここ」を捉える最良の手段のひとつが、「いま」を超えた過去、そして「ここ」を超えた他者を知ることだからである。 (3)過去の思想家の文献(テクスト)を読み、想像し、理解することで、自分自身を客観的に捉える視座を獲得する。なぜなら、文献のなかに展開される思想世界(コンテクスト)は、「いま、ここ」にいる自分を括弧に入れて冷静に考察するのにまたとない環境だからである。 (4)自分自身の思考を、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の反復において展開し、錬成し、掘り下げることができる。 |
授業のキーワード /Keywords |
自然と人為、偶然と必然、普遍と個別、自由と自律、古代と近代、理性と啓示、富と徳、革命と保守 |
授業の進め方 /Method of Instruction |
事前に参照資料のデータ・ファイルを配信し、それを指定テキストと併せて参照しながら、講義形式で授業を進めます。 参照資料は受講者各自で事前に下記のOneDriveリンクよりダウンロードのうえ、印刷し、講義に持参するようにしてください。 政治思想史_参照資料フォルダ 講義中の積極的な質問や発言を歓迎します。 また、映像資料も適宜視聴します。 なお、受講者の理解度や反応に即しながら、下記の予定が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。 |
履修するにあたって /Instruction to Students |
受講者からの積極的な質問や、教員からの問いかけに対する受講者の応答によって授業が展開することを期待しています。 高校で世界史と倫理(あるいは政治経済や現代社会)を履修済みであるのが望ましいものの、必須ではありません。 知識量の多寡よりも、自分自身の経験を振り返り、講義で解説された思想と照らし合わせながらじっくり思考し、無知を恐れず積極的に授業に臨む姿勢を尊重します。 初回授業時に具体的な流れと予定を説明するので、初回講義への出席は必須となります。 講義中はスマートフォンの操作ないし使用を厳しく禁じます。 質問や相談等がある場合は、下記「遠隔授業情報」の項目に示したアドレスまでメールにて連絡してください。 オフィス・アワーを利用しての面談を希望する場合も同様です。 なお、成績のついての問い合わせについて、メールでは一切の対応をしかねます。教務窓口を通して、しかるべき時期に問い合わせてください。 |
授業時間外に必要な学修 /Expected Work outside of Class |
講義内で文献からの抜粋資料を配布するので、予習においてはそれを熟読してください。 また、講義中は膨大なメモを取ることになるので、復習としてはそれらを整理のうえ、本科目専用のノートを用意し、それに清書してください。 予習と復習を併せて、おおむね1週間あたり120分を要します。 |
提出課題など /Quiz,Report,etc |
講義の進度に応じて随時、記述形式の小テストを実施します。場合によっては、小レポートの提出を求めることもあります。 |
成績評価方法・基準 /Grading Method・Criteria |
上記の小テストや小レポート(40%)にくわえて、学期末の記述式の筆記試験(60%)で評価します。 |
テキスト /Required Texts |
野口雅弘・山本圭・高山裕二(編)『よくわかる政治思想』ミネルヴァ書房、2021年 |
参考図書 /Reference Books |
本講義の内容に関連の強い概説書としては以下を参照してください。それ以外の古典や二次文献については講義内で紹介します。 熊野純彦『西洋哲学史:古代から中世へ』岩波新書、2006年 熊野純彦『西洋哲学史:近代から現代へ』岩波新書、2006年 小田部胤久『西洋美学史』東京大学出版会、2009年 佐藤一進『保守のアポリアを超えて:共和主義の精神とその変奏』NTT出版、2014年 大河内昌『美学イデオロギー:商業社会における想像力』名古屋大学出版会、2019年 |
No. | 回 /Time |
主題と位置付け /Subjects and position in the whole class |
学習方法と内容 /Methods and contents |
備考 /Notes |
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1 | 1 | 導入 | 政治・法・国家をめぐる「自然」と「人為」についての思考の歴史 | |
2 | 2 | 古代ギリシアの政治思想 | ソクラテス以前とソクラテス以後 | |
3 | 3 | 古代ギリシアの政治思想 | プラトン①:自然としての「正義」 | |
4 | 4 | 古代ギリシャの政治思想 | プラトン②:魂と国家の類比(analogy) | |
5 | 5 | 古代ギリシャの政治思想 | アリストテレス①:政治的動物としての人間的自然 | |
6 | 6 | 古代ギリシアの政治思想 | アリストテレス② :政体分類論 | |
7 | 7 | 古典古代における政治史と政治思想 | ヘロドトス、トゥキュディデス 、リヴィウス、タキトゥス:国家の興隆と衰亡の原因論 | |
8 | 8 | 「神の国」と中世 | アウグスティヌス①:「神の国」と「地の国」 | |
9 | 9 | 「神の国」と中世 | アウグスティヌス②:「自由意志」と「悪」 | |
10 | 10 | 「神の国」と中世 | トマス・アクィナス①:神学と哲学の緊張と融合 | |
11 | 11 | 「神の国」と中世 | トマス・アクィナス②:「神の法」としての「自然法」 | |
12 | 12 | ルネサンス | マキァヴェッリ①:君主のヴィルトゥ | |
13 | 13 | ルネサンス | マキァヴェッリ②:市民のヴィルトゥ | |
14 | 14 | 宗教改革と宗教戦争 | ルター、カルヴァン、デカルト :「主体」の確立 | |
15 | 15 | 宗教改革と宗教戦争 | デカルト、ボダン、グロティウス :「寛容」と「主権」 | |
16 | 16 | 内乱期イングランド | ホッブズ①:自然状態と社会契約 | |
17 | 17 | 内乱期イングランド | ホッブズ②:「主権」の論理 | |
18 | 18 | 内乱期イングランド | ハリントン①:「共和国」の論理 | |
19 | 19 | 内乱期イングランド | ハリントン②:混合政体としての「共和国」 | |
20 | 20 | 内乱期イングランド | ロック①:社会契約論の更新 | |
21 | 21 | 内乱期イングランド | ロック②:私有財産権(property)の論理 | |
22 | 22 | 商業社会と啓蒙思想 | スコットランド啓蒙とフランス啓蒙:立憲君主政と絶対王政という相違の帰結 | |
23 | 23 | 商業社会と啓蒙思想 | ヒューム①:人間的自然=人間本性(human nature)の刷新 | |
24 | 24 | 商業社会と啓蒙思想 | ヒューム②:「洗練」の政治経済学と歴史叙述 | |
25 | 25 | 商業社会と啓蒙思想 | ルソー①:「文明」への反逆と「自然」への志向 | |
26 | 26 | 商業社会と啓蒙思想 | ルソー②:「共和国」と「社会契約」の融合 | |
27 | 27 | 商業文明と啓蒙思想 | アダム・スミス①:「道徳感情」の起源と規準 | |
28 | 28 | 商業社会と啓蒙思想 | アダム・スミス②:「富と徳」の政治経済学と歴史叙述 | |
29 | 29 | 文明社会と革命 | バーク①:混合政体としての「古来の国制」 | |
30 | 30 | 文明社会と革命 | バーク②:「作法」の政治経済学と歴史叙述 |