科目一覧へ戻る | 2024/01/18 現在 |
開講科目名 /Class |
経営史特殊講義/Advanced Lecture on History of Business |
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授業コード /Class Code |
J003131001 |
開講キャンパス /Campus |
ポートアイランド |
開講所属 /Course |
修士/ |
年度 /Year |
2023年度/Academic Year |
開講区分 /Semester |
通年/FULL-YEAR |
曜日・時限 /Day, Period |
火4(前期),火4(後期)/TUE4(SPR.),TUE4(AUT.) |
単位数 /Credits |
4.0 |
主担当教員 /Main Instructor |
赤坂 義浩/AKASAKA YOSHIHIRO |
遠隔授業 /Remote lecture |
No |
教員名 /Instructor |
教員所属名 /Affiliation |
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赤坂 義浩/AKASAKA YOSHIHIRO | 経営学部/Business Administration |
授業の方法 /Class Format |
演習形式で実施します。 |
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授業の目的 /Class Purpose |
わが国経済は、19世紀末のアジア諸国の中でいち早く近代化に成功し、経済発展に成功した。戦後の高度成長期を経て、わが国の国民総生産は、それまで目標としてきたイギリス、フランス、ドイツを上回るに至った。その道のりは、近代産業分野における多くの企業家たちの積極的な企業者活動、経営諸制度の発展の道のりでもある。 そこで本講義では、そのようなわが国の経済発展こにおける企業者活動や経営諸制度の普及・発展の経緯をたどり、わが国における経営発展の歴史を知ることによって、現在の企業経営の仕組みや企業が直面している諸問題をより深く理解できるようにすることを目標とする。 |
到 達 目 標 /Class Objectives |
受講者が、日本企業の経営システムのメカニズム、あるいは諸問題について歴史的に理解し、より深く現状を理解出来るようになることが目標である。 |
授業のキーワード /Keywords |
日本経営史、企業者史、日本経済史 |
授業の進め方 /Method of Instruction |
毎回、報告者がテキストの所定の範囲についてレジュメを作成し、内容を要約して報告する。その後、受講者の間で、ディスカッションを行う。 |
履修するにあたって /Instruction to Students |
歴史系の講義であるため、多数の文献資料を読むことが必要である。受講を希望される方は、その点について必ず認識しておいて欲しい。 |
授業時間外に必要な学修内容・時間 /Required Work and Hours outside of the Class |
不明なことがあれば、事前に調べておくこと。 |
提出課題など /Quiz,Report,etc |
提出課題は、次の通りである。 (1)毎回テキスト輪読範囲のレジュメ(報告用) (2)前期末、後期末にそれぞれ、学修内容に関するレポート(前期、後期各1回、合計2回) 以上のの2種類である。(2)のテーマや詳細なレポート作成要領については、その都度講義内で指示する。 |
成績評価方法・基準 /Grading Method・Criteria |
毎回の報告、プレゼンテーションが50%、前期と後期それぞれ1回ずつ(計2回)提出してもらうレポート、課題が各25%(計50%)として成績を評価する。全講義回数の3分の2以上の出席が必須要件となる。無断欠席は、欠席回数にかかわらず単位を出さないこととするので、注意すること。 |
テキスト /Required Texts |
テキストは、下記のものを使用する。 (1)安岡重明、天野雅敏編著『日本経営史1-近世的経営の展開』(岩波書店) (2)宮本又郎、阿部武司編著『日本経営史2-経営革新と工業化』(岩波書店) (3)由井常彦、大東英祐編著『日本経営史3-大企業時代の到来』(岩波書店) (4)山崎広明、橘川武郎編著『日本経営史4-「日本的」経営の連続と断絶』(岩波書店) (5)森川英正、米倉誠一郎編著『日本経営史5-高度成長を超えて』(岩波書店) |
参考図書 /Reference Books |
No. | 回 /Time |
主題と位置付け /Subjects and position in the whole class |
学習方法と内容 /Methods and contents |
備考 /Notes |
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1 | 江戸期-1880年代/商人の富の蓄積と企業形態 | 幕末の開港からわが国経済の近代化と経済発展、経営発展が始まるが、それが成功するかどうかは、近代化を開始する際の初期条件による。そこで、第1回では、近代化の準備期間としての江戸時代の経済システムとそこでの経営発展、とりわけ都市大商人の出現と商家経営について学ぶ。 | ||
2 | 経営組織と経営管理 | 近世の都市商家が大きく成長することによって経営規模が大規模化し、そこに近代以降の会社制度につながるような経営諸制度が形成されていく。そこで第2回では、そうした近世都市商家の経営組織や経営管理技術について学ぶ。 | ||
3 | 雇用制度と労務管理 | 第3回は、近世都市商家における雇用制度と労務管理制度について学ぶ。これも近代以降の企業における雇用制度、労務管理制度との連続性がみられる。 | ||
4 | 会計組織と簿記技法 | 商家の規模が大きくなり、取引高・頻度も著しく増大すると、大福帳的な原始記録では経営状態を把握できなくなる。そこで、整理記録としての会計システム、簿記技法が発達した。第4回では、そうした商家の会計システムについて学ぶ。 | ||
5 | 経営理念の近世的特色 | 近世の商家には「家訓」と呼ばれる、経営方針を明文化した冊子がある。近世商家の当主たちは、この家訓に書かれた経営方針の遵守を求められた。そこで第5回では、そうした家訓書に見られる近世商家の経営に対する考え方や経営思想について学ぶ。 | ||
6 | 近世的パラダイムの転換と経営 | 幕末にかけて、経営環境としての幕藩制的経済構造の大きな変化が生じたが、それに各経営がどのように対応したのかを、各地の事例研究を通じて学ぶ。 | ||
7 | 概説1880年代-1915年/経営発展の基盤整備 | 開港後の工業化開始とその後の推移、近代工業の経営に不可欠な社会資本の整備過程について学ぶ。 | ||
8 | 企業勃興と近代経営・在来経営 | 明治初期から中期にかけ、近代産業分野の企業が多数設立されたほか、近世から続く在来産業の分野でも、技術革新や企業形態の変更、会社制度の急速な普及が見られた。第8回では、地方における資産家であり企業家でもあった地方名望家と彼らの投資・企業者活動を通じて、企業勃興期における地方経済の変容について学ぶ。 | ||
9 | 工業化と商社・海運・金融 | 近代産業や輸出産業の発展を支えたインフラとして、商社、近代海運業、銀行をはじめとする近代的金融システムの発展について学ぶ。 | ||
10 | 重化学工業化と技術者 | 西欧諸国より遅れて近代化を開始したわが国では、特に近代産業は江戸時代に経験のない技術を使用する分野であることから、技術移転の問題を解決する必要があった。そこで、技術移転・定着・普及・発展の担い手である技術者の育成と彼らが果たした役割について学ぶ。 | ||
11 | 明治の資産家と会社制度 | 株式会社制度の普及と発展を支えた投資家には、どのような人物がいたのであろうか。第11回では、そうした投資の担い手である資産家の実態と、会社制度の普及、そこでの所有と経営の関係について学ぶ。 | ||
12 | 工場制度の定着と労務管理 | わが国における工業化の進展とは、すなわち工場という作業単位の導入、普及と、そこでの労務管理の技術の導入、普及が進んでいくことを意味する。そこで、近代にわが国で発展した工場制度と工場労働者の発生、定着過程について学ぶ。 | ||
13 | 概説1915-37年/大企業の構造と財閥 | 開港から進められてきたわが国の工業化は、第1次大戦ブーム期にさらに著しく進展する。そこで、第13回では、第1次大戦ブームとその後の昭和初期における工業化の進展、変化について学び、財閥の成立と大企業の出現、その構造について学ぶ。 | ||
14 | 技術導入から開発へ | 第1次大戦期以降には、それまで西欧先進諸国からの移入に依存していた近代産業における製造技術の開発・発展は、技術者育成の進展とともに、次第に独自の国産技術の開発が可能になっていった。そこで、第14回では、技術移転問題のその後として、国産技術開発を可能にした条件は何かについて学ぶ。 | ||
15 | 工場管理システムの近代化と組織能力 | 工場制度の普及と発展に伴い、工場における労務管理技術や近代的工場管理法の導入と普及、労使関係管理の新たな展開がみられた。第15回では、第1次大戦期以降の電気メーカー各社における工場管理と工場内の労務管理、労使関係の変化について学ぶ。 | ||
16 | 戦間期のマーケティングと流通機構 | 近代産業における製品は、近世のわが国ではまったく普及していなかった製品であることから、その流通やマーケティング技術も新たに構築、確立しなければならなかった。そこで、西洋紙の製紙業、製薬業、耐久消費財(ミシン)を事例に、戦間期わが国近代産業企業における新たな流通機構の確立や革新、マーケティングのあり方について学ぶ。 | ||
17 | 大企業の資金調達 | 第1次大戦ブーム期以降に、わが国の近代産業、重化学工業分野の諸企業は急速に発展した。そのことは、それら各企業に対して、金融システムが経営資金を供給して経営発展を資金面で支えたことを意味する。ここでは、企業の財務、資金調達の問題を各企業がどのように解決したのかについて学ぶ。 | ||
18 | 経営者の企業観・労働観 | 企業経営においては、経営者、企業家がどのような経営理念を持ち、どのように良好な労使関係を築くのかが、その企業の発展を大きく左右する。そこで第18回では、戦間期のわが国大企業において、経営者がどのような経営理念を持っていたか、労使関係がどのようなものであったかについて学ぶ。 | ||
19 | 概説1937-55年/専門経営者の制覇 | 開港以来のわが国の経済発展と経営発展の内実は、世界恐慌期とそこからの脱出過程、そしてその後の戦時統制経済期に大きく変容した。そこで、第19回では、まず背景として昭和初期から第2次大戦期の戦時統制経済について学び、さらに戦中戦後のコ-ポレートガバナンスの変容について学ぶ。 | ||
20 | 日本的生産システムの形成 | 戦後わが国経済の高度成長期に、トヨタ自動車をはじめ重化学工業企業を中心に、わが国企業の国際競争力を大きく高める生産方式、いわゆる「日本的生産システム」が形成された。そうした優れた生産システムは、どのようにして形成され、変容してきたのか。それは戦中戦後の各企業の生産システムに源流がある。そこで今回は、重化学工業企業における戦中戦後の生産方式が戦後の日本的生産システムにどのように変化していくのか、について学ぶ。 | ||
21 | アメリカ経営管理技法の日本への導入と変容 | 前回学んだように、戦後わが国の重化学工業企業は、品質、価格とも高い国際競争力を持つに至ったが、それらは戦中戦後にアメリカからの近代的経営管理技法の導入が寄与している。そこで、今回は、各企業におけるアメリカ型経営管理技法の導入と変容について学ぶ。 | ||
22 | 日本的雇用関係の形成 | わが国大企業の高い国際競争力の源泉とされたいわゆる「日本的経営」のひとつに、企業別労働組合を通じた良好な労使関係もあげられる。そこで今回は、戦間期、戦時期の労使関係のあり方を学び、その連続性について理解する。 | ||
23 | 中間組織の変容と競争的寡占構造の形成 | 戦後の日本経済では、競争的寡占構造と呼ばれる、各業種ごとに一部の大企業が競争しつつも、それら数社の大企業による市場の寡占構造が形成されて来たと言われる。その形成過程には、市場と組織の中間に位置する、いわゆる「中間組織」(財閥→企業集団、融資系列、業界団体など)が果たす役割が、そうした競争的寡占構造の形成に寄与したと言われている。そこで今回は、そうした中間組織と経営発展との関係について学ぶ。 | ||
24 | 戦後型産業政策の成立 | 戦後わが国重化学工業企業の成長は、政府の各種産業政策が後押しした。そこで、戦中戦後から高度成長期にかけて、政府がどのような産業政策を展開し、それがどのように経営発展に寄与したのかについて学ぶ。 | ||
25 | 概説1955-90年代/長期相対関係と企業系列 | 戦後わが国企業は著しく国際競争力を高めて大きく成長し、わが国経済の高度成長をもたらした。そこで今回は、高度成長期の内容と、高度成長期わが国企業の国際競争力の源泉はどこにあったかについて学ぶ。 | ||
26 | 戦後日本のトップマネジメント | 戦後わが国経済の高度成長期に大きく成長した企業では、どのようなビジネスリーダーがどんな経営活動を行ったのか。今回は、高度成長をもたらした大企業のリーダーたちの動向について学ぶ。 | ||
27 | 戦後日本の金融システム | 高度成長期における企業の大きな成長は、各企業における積極的な設備投資によってもたらされた。そこで今回は、そうした企業の活発な設備投資の資金はどのようにして供給されたのか、金融システムが企業の資金調達面で経営発展に果たした役割について学ぶ。 | ||
28 | 国際化と日本的経営 | わが国経済の高度成長と企業の経営発展は、輸出の急増をもたらし、各国で貿易摩擦を生んだ。そこで、輸出産業企業においては、そうした貿易摩擦を回避するためにも、国際化を推進した。今回は、そうしたわが国大企業の高度成長期における国際化の推移について学ぶ。 | ||
29 | 企業と政府 | 高度成長期における政府の産業政策は、どのように産業界のニーズを把握し、どのように形成され、どのように実施され、どのような効果がもたらされたのだろうか。今回は、わが国政府の戦後の産業政策の形成方法と、その下での企業行動について学ぶ。 | ||
30 | 共通幻想としての日本型システムの出現と終焉 | 高度成長期におけるわが国経済の発展と企業の成長をもたらしたいわゆる「日本的経営システム」は、優れた面もあるが、不合理な面もあった。その後の円高等マクロ経済の変化に際して、そうした日本的経営システムの不合理な側面が、1990年代の不況期にむしろ経営桎梏になったと言われている。そこで今回は、「日本的経営システム」の合理性と非合理性が、高度成長期から90年代の経営環境の変化に際して、企業経営にどのようにプラスに働き、どのようなマイナスをもたらしたかについて学ぶ。 |