2017年12月 少数精鋭でグローバル人材を育成「神戸学院カレッジ」
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2019年度から一新する共通教育科目
―先生方の研究内容についてお伺いします。
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平井 私の専門は「心理言語学」といって、文をどのように理解したり話したりするのか、そのメカニズムを研究する分野です。特に文法の理解にスポットを当て、「文のどこが難しいのか」といったことを、文を読む時の目の動きを測定したり、反応時間を計測したりする実験などを通じて解明しています。さらに最近は、言葉を流暢に話す流暢性とは何かという問題にもアプローチしています。第二言語としての英語をどう理解し、どのようにしたら上手に話せるようになるのかという視点から、英語教育を研究しています。
安田 私のメインテーマは、「協同学習」です。アメリカに留学した際に、その概念に出会って興味を持ちました。協同学習が、ペアワークやグループワークと異なるのは誰か一人のリーダーが活動を引っ張るのではなくて、一人ひとりが学びに責任を持ち、互いに援助し合いながら全員が同じ目標を達成することが求められる点です。協同学習を取り入れることで、学習者がどのような援助を互いに行い、仲間から受けた影響によってモチベーションや学習成果がどう変化するのかを研究しています。
―共通教育科目で英語を担当していらっしゃいますが、その特色を教えてください。
平井 共通教育科目は、総合大学であることの強みを生かした多彩な開講科目と学部の枠組みを超えた学びがその特長なのですが、2019年4月からカリキュラムを一新する予定です。英語においては、グローバル人材の養成をより意識したカリキュラムに改編を予定しています。1年次生の科目としては、リーディング・ライティング・リスニング・スピーキングの4技能の基礎を押さえる科目とともに、各学部の専門分野に関連した題材を選び、学部の専門学習に活かせる英語教育を行う科目を新たに設けます。
安田 例えば、薬学部で薬剤師になる勉強をしている学生に対しては、医療現場や薬局等で、海外から日本にやってきた外国人旅行者に対応する場面を想定したロールプレイングの授業を行うなど、学部の学びとリンクする実践的な英語プログラムを設計しているところです。
TOEIC800点超など高い英語力を養成
―先生方は、2016年にスタートした「神戸学院カレッジ」の立ち上げから運営までに携わっておられると伺っています。
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平井 はい。「神戸学院カレッジ」は、グローバル・コミュニケーション学部英語コースを除く全学部生を対象にした(※)英語特別プログラムです。英語力を伸ばしたいと考える学生を育成し、全学を挙げてグローバル人材の育成に取り組むことを目的としています。ポートアイランドと有瀬の各キャンパスで20名程度を定員とする少人数プログラムで、TOEIC、英検、交換留学に必要なTOEFL、IELTSなどの英語関連資格を取得したり、公務員試験や交換留学などの目標を達成できるレベルまで英語力を引き上げようというもので、具体的な目標としては、3年次生の終わりまでに全員がTOEIC600点以上取得を掲げています。毎年1年次生のみを募集し、英語力を測るテストを中心に面接なども加味してメンバーを選抜しています。
安田 プログラムのスタートは、夏休みの集中講義から。「チャレンジャー英会話」「実践英語Ⅱ」という講義で2週間ほど英語漬けになってリスニング・スピーキングの力を磨きます。後期が始まると、共通教育科目の英語2コマに加えて「英文リーディングⅠ」を1コマと、最低でも週に3コマ英語の授業を履修します。その他にも、担任のような存在である私たちが週1回から2週に1回はメンバー全員を集め、演習のような形で英語力をブラッシュアップしています。そして春休みにも「英会話Ⅰ」という集中講義を受けるといった具合で、とにかく英語に触れる機会が多いのがこのプログラムの特色です。
平井 英語に苦手意識がある学生もいますが、たくさんの課題をこなすうちに、きちんとやれば成果が出ることが分かって、自分から熱心に取り組んでくれるようになります。週に何回か、学生だけで昼休みに集まって自主勉強会をするようにもなりました。2年次生の後期の段階で、すでにTOEIC800点を超えた学生もおり、平均して1年で100点以上は英語力を伸ばしています。
安田 高得点を取得したある学生は当初、留学にはそれほど関心がなかったようですが、カレッジで勉強して自信がついたことで、新たに交換留学をしてみようという目標ができたと話しています。このように新たな目標ができたり、ビジョンがしっかりしてきた学生には、個別に対応するようにしています。少人数ゼミのような雰囲気で、一人ひとりの学習がうまく進んでいるかどうかをしっかり把握し、きめ細かなフォローをしています。学生からは「TOEICの点数が上がってきたから次は英検を受けてみよう!」や「TOEICスコアアップが自信となり、将来の目標が明確になった」などという声があがり、前向きに挑戦をする学生が増えてきていることを、とてもうれしく感じています。
平井 受講生はカレッジ生であることに誇りをもって取り組んでいます。お互いに目標を達成するためにフォローし合うなど仲間意識も大変強いようです。同じような高い目標を持つ学生とともに勉強でき、自分の居場所として充実した時間を過ごせているといった感想も聞きました。
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安田 学部の勉強やアルバイト、課外活動など忙しい毎日の中で、いかに有効に時間を使うか、折に触れてアドバイスしてきました。自分の生活を見直すことで、勉強する隙間時間を見つけ出し、しっかりと期限内に課題を提出できるようになってきました。こうして身につけた自己管理能力は、社会に出た時も大変役立つスキルになると思います。特に、栄養学部や薬学部など国家試験突破を目標にする学部生の場合は、本当に時間のゆとりがありません。カレッジの授業が受けられないようなケースも出てくるので、その場合は、代わりの課題を出してフォローするなど、きめ細かくサポートしています。社会人基礎力という意味では、マナーや礼儀にも重点を置いて、メールでの連絡の仕方から言葉遣いまでしっかり教えています。少人数の環境で距離が近いからこそできる指導を心がけています。
(※)2017年12月中にグローバル・コミュニケーション学部の英語コース以外の学生が対象になる予定です。
ニューヨーク州立大への研修プログラム始動
―「神戸学院カレッジ」の今後の展開、目標を教えてください。
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平井 カレッジ設立当初の目標として、「全員TOEIC600点以上」、「全員海外留学」、そして「地域創生に寄与するグローカルな人材を育成する」という3つの柱を立てました。1番目の英語力養成という目標が達成されてきたので、来年度は海外研修プログラムを始動させます。
安田 2018年8月に、アメリカ・ニューヨーク州立大学フレドニア校に3週間研修に行きます。単なる語学研修ではなく大学の授業も聴講できるなど、長期留学やさらに高い英語力を目指すという目標を叶えるためのトレーニング・プログラムにしています。留学者選抜では、留学に対する目標が明確であるかを基準にして、学生を選考する予定にしています。
平井 学生の学びの意欲に応え、次に考えていかなければならないのは、身に付けた英語力を使って何ができるのかを考えてもらうことです。今後は、社会防災や子育て支援など本学がこれまでに実践してきた地域連携活動の実績をベースとして、地域に貢献できる活動についてもいろいろと検討していく予定です。
安田 英語力を高めて何をしたいのかという学生それぞれの目標やニーズに応じたサポートをしていくのも今後の課題です。来年は1年次生から3年次生まですべての学年が揃うので、学部横断型だけでなく学年横断型でもあるような、例えば年齢に関係なくコミュニケーションできる対人折衝能力を身に付けていくとか、下級生が上級生から情報収集できる仕組みづくりなどにも取り組んでいきたいと思っています。
平井 神戸学院カレッジの募集は、来年も6月に説明会を行い、7月上旬には募集をスタートします。我こそはと思う学生に是非挑戦してほしいと思っています。
平井 愛 共通教育センター 准教授
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プロフィール
2007年 神戸大学大学院 総合人間科学研究科 博士課程 後期課程 修了
博士(学術)[2007年3月(神戸大学)]
2009年~ 京都精華大学 人文学部 総合人文学科 特任講師
2013年~ 関東学院大学 人間環境学部 講師
2015年~ 神戸学院大学 共通教育センター 准教授
主な研究課題
・第2言語としての英語の文の理解と産出について
・第2言語発話の流暢性
安田 有紀子 共通教育センター 講師
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プロフィール
2005年 ニューヨーク州立大学 フレドニア校 大学院 修士課程 TESOL(英語教授法)修了 修士(教育学)
2004年~ ニューヨーク州立大学 フレドニア校 非常勤日本語教師
2006年~ 栗本学園 名古屋国際中学校/高等学校 専任英語講師
2007年~ 名城大学 非常勤講師
2010年~ 神戸学院大学 法学部 講師
2014年~ 神戸学院大学 共通教育センター 講師
2015年 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 教育内容・方法開発専攻文化表現系コース終了 修士(学校教育学)
主な研究課題
・協同学習
・多読
・自己調整学習