2014年12月
地域社会でも世界でも活躍できる
柔軟な人材を育てたいin Focus


神戸学院大学のSocial in ~地域社会とともに~
地域社会でも世界でも活躍できる柔軟な人材を育てたい  岡部芳彦 経済学部 准教授

ウクライナ農業科学アカデミー・アグロエコロジー・
環境マネジメント研究所と学術協定を締結

岡部芳彦 経済学部 准教授
ウクライナの首相官邸でシチ副首相と会談する岡部准教授

ウクライナの首相官邸でシチ副首相
と会談する岡部准教授

神戸学院大学経済学部は本年9月にウクライナ国立農業科学アカデミー・アグロエコロジー・環境マネジメント研究所と学術協定を結びました。同研究所は農業技術研究・農業経済の教育機関で、日本の大学院大学にあたるところです。私はソ連崩壊6年後の1997年にロシアに留学し、その縁から日露交流団体の日本・ロシア協会の理事を務めています。ロシア経済の研究者には専門的な知識を持つ方が多くとても太刀打ちができないのですが、旧ソ連第二の大国としてウクライナに興味を持ち、7年ほど前から度々訪れるようになりました。私がウクライナで講演した際に同研究所のオレスト・フルディチコ所長が聴講に来られ、「同じ教育者として協力し合いたい」と語り合ったことが今回の学術協定へとつながりました。

協定は4項目からなり、広範な学術・人的交流を目的とした内容です。過去にも在日ウクライナ人やウクライナの政治家を本学に招いてフォーラムを開催しましたが、来年度は本学経済学部の教員・スタッフがウクライナへ出向き、シンポジウムを開催する予定です。来年度は本学にグローバル・コミュニケーション学部が発足する年でもありますので、学術協定が研究者間の交流やウクライナの若者が本学に留学するための道筋にできればと考えています。

「遠く離れた国」と思われがちですが、ウクライナと日本はロシアを間に挟んだ隣の隣の国であり、文化的な共通点が多く見られます。ウクライナ国内の地下鉄開通や下水道建設に日本企業が参画する一方、畜産飼料となる小麦やトウモロコシをウクライナから輸入するなど、深い交流があります。今回の学術協定で交流をさらに深め、学生たちにも親しみを持ってほしいと思っています。

地元企業の社長から野田前総理まで
多彩な人材を招いて実践的な対話を学ぶ



リラックスした雰囲気で語り合う
野田前総理と岡部ゼミの学生

私が担当するゼミでの学習はアメリカ経済班・ヨーロッパ経済班・日本経済班・ロシア経済班・中国アジア経済班などに分かれたグループワークが中心で、日頃から自由闊達にディスカッションをし、ディベート大会などを行っています。各学期に二度、学外からゲストスピーカーを招いての講演会を設けていますが、日常生活では出会うことのない方々との交流はグループワークで培った話術を試す絶好の機会であると思います。これまで野田前総理やモデルの押切もえさんなどの著名人・経済学者・地元企業の社長など、硬軟取り混ぜた方々に講演をしていただきましたが、有名無名は重要視せず、幅広く学生が興味を持てる方をお招きするのが理想です。

野田前総理には日本経済班の学生たちが「アベノミクスと野田財政」について学んでいることから特別講演のお願いをし、実現することになりました。講演会では緊張感漂う中にも活発な質疑応答があり、非常に意義のある会になったと思います。

学生たちには地域社会でも世界でも活躍できる柔軟な人材になってほしいと考えています。最近は「生まれ育った地域を離れたくない」という地元志向の学生が増えているように感じますが、各界で活躍するゲストの話を刺激に積極的に視野を広げて、幅広く活躍してほしいと願っています。

恩師との出会いで学ぶ楽しさに目覚め、
ロシア留学。研究の道へ進む

私のゼミの進め方は私自身の恩師のゼミのスタイルの影響を大きく受けています。学生時代の私は馬術部の活動に熱中し、あまり勉強熱心な学生ではなかったのですが、先生と出会ったことで学ぶ事の面白さに気づくことができたと思っています。

ロシアへの留学は、大学の掲示板で偶然にロシア留学生の募集を見つけたことがきっかけです。阪神淡路大震災から2年後のことで、倒壊した実家の近くで家族と仮住まいをしていました。環境的な要因もあり、当時は「どこかに行きたい」という気持ちが強かったことを覚えています。

留学当初はロシア語のアルファベットが読める程度の知識しかなく、初日に先生から「(そんなにできないのなら)あなたは明日から来なくていい」と言われるほどでした。ロシアの語学学習システムは非常に優れていて、1年間学べばロシア語で大学の授業を受けられるというくらいのスパルタ式でした。先生は大変熱心な方であると同時に厳しくもありましたが、そのおかげでロシア語が話せるようになったと思っています。

ロシア留学で学んだ語学の習得法は次の語学を学ぶときにも大いに役立ちました。外国研究をするには語学が必須ですから、語学習得のノウハウを学ぶことができたのは非常に有益だったと思います。

これまでの研究成果をまとめた
『イギリス検認遺産目録研究』を刊行


約200年前、
英国の船員の遺産目録の複写。

私の研究課題は消費社会誕生の経済学的考察、企業家研究、イギリスやウクライナなどの地域経済研究ですが、中でも力を入れているのが200年程前のイギリスの遺産目録研究です。遺産目録には故人の持ち物すべてが部屋別に記録されており、当時の住宅の構造や生活様式はもちろん、例えば船員の遺産目録であれば乗船した船や寄港地、どんな品物を輸出入していたかまで知ることができます。これまでの研究をまとめた『イギリス検認遺産目録研究』が来年刊行の予定ですが、イギリス国内にはまだ未整理の遺産目録が100万件ほど残されていると言われています。引き続きこの研究に取り組んでいきたいと考えています。

プロフィール

1999年、関西学院大学 経済学部卒業。97年、モスクワ国立総合大学 国際教育センター 留学。2009年、大阪大学大学院 経済学研究科 博士課程 満期退学。経済学修士(大阪大学)。09年、神戸学院大学 経済学部 講師(現在は准教授)。12年~13年、英国ブリストル大学 visiting research fellow。

主な研究課題

  • 消費社会誕生の経済学的考察(キーワード:消費社会, イギリス検認遺産目録)
  • 企業家研究(キーワード:アントレプレナーシップ, M・ボウルトン)
  • 地域経済研究:イギリス(ブリストル、バーミンガム)
  • ウクライナ研究

Information

ウクライナ研究会 第32回定例研究報告会のお知らせ

日 時 2014年12月13日(土) 14:15~
場 所 神戸学院大学ポートアイランドキャンパスA号館 4階 第2中会議室
内 容
14:15
報告1:イーホル・ダツェンコ(言語学者)
「ウクライナ語を愛でることはロシア語を護ること
-ウクライナにおけるバイリンガリズムの問題に寄せて」
15:30
報告2:天江喜七郎(元駐ウクライナ日本国大使、元国立京都国際会館館長)
「オレンジ革命がウクライナ情勢に及ぼした影響」
16:30
閉会の言葉

※入場無料、一般参加可
詳細はこちら

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