2011年2月
ボランティアで対人関係を学び「きずな」や「コミュニティ」を作る能力を身につけてほしいin Focus

神戸学院大学のSocial in ~地域社会とともに~
ボランティアで対人関係を学び「きずな」や「コミュニティ」を作る能力を身につけてほしい。 川口謙造 学生支援グループ・ボランティア活動支援室

子どもたちとの交流がボランティアに熱中するきっかけ

ボランティア活動支援室
川口謙造 学生支援グループ・ボランティア活動支援室
川口謙造 学生支援グループ・ボランティア活動支援室

神戸学院大学に「ボランティア活動支援室」が誕生したのは2005年。社会福祉法人 大阪ボランティア協会でキャリアを重ねた川口謙造さんが、神戸学院大学の職員として着任し、有瀬キャンパスに起ち上げた。「ボランティア協会というのは市民のボランティア活動を推進・支援する組織です。そこで得た運営や事業に関する知識やノウハウを、大学という教育機関で生かし、ボランティアに対する神戸学院大生の意識を高めたいと思いました」。

川口さん自身も、大学時代はボランティアサークルに所属して熱中し、日常的に活動していたという。「僕の場合は、離島の子どもたちに図書を贈る活動が中心でした。大学周辺の小・中学校に呼びかけて学習図書を集め、それらの図書を必要としている離島の小・中学校に送っていました」。川口さんにとっては、それが人生最初のボランティアだったが、奉仕活動という堅苦しいイメージではなく、むしろ活動を大いに楽しんでいたという。「夏休みには図書を届けた離島を10人ほどで訪れて、子どもたちと交流していました。1週間の日程でプログラムを組み、子どもたちと遊ぶのですが、最初は心を開いてくれなかった子どもたちが、好きになったお兄ちゃん・お姉ちゃんのところに寄って来てくれるようになる。子どもたちと信頼関係を作っていくという、かけがえのない体験ができましたね。小さな船で島を離れる瞬間は気持ちが揺さぶられ、涙も出ました。その体験がボランティア活動に没頭していく大きなきっかけになったと思います」。

ボランティアをする人から「ボランティアを支える人」に

川口謙造 学生支援グループ・ボランティア活動支援室

もともと福祉分野を志望していた川口さんは、大学卒業時に大阪ボランティア協会に就職。「ボランティア活動をする人」から一転して、「ボランティア活動をする人を支える」仕事に携わることなる。「その頃は、ボランティア・コーディネーターという仕事があることすら知らなかったですね。新人として、最初はボランティア活動を啓発する本や情報誌を作る仕事を担当しました。やがて講座などの企画もするようになり、小さなボランティアセンターに1年間出向して、地域に密着したサポート活動に取り組んだ体験もあります」。ボランティア活動をサポートする仕事の面白さを問うと、「人との出会いでしょうね。学生から社会人まで、いろいろな立場の人がボランティアとして訪ねてきます。一緒に企画や編集をして、夜は遅くまで会議。終わるとみんなで飲みに行くわけです。週末も行事が多く体力的には大変でしたが、多様な人たちと深くコミュニケーションしながら仕事ができることが楽しかったですね」。また支援の仕事を通じて川口さん自身も大きな刺激を受けたという。「例えば重度の障がいを持つ人が、自ら積極的にボランティア活動をしていたりする。すごいですよね。これまで自分がいかに生ぬるい所にいたかを痛感しました。実はボランティア団体の人から人権に対する認識などについて厳しい指摘を受け、辞めようかなと思ったこともあります。仲間が支えてくれましたが、ボランティアの世界にも温かさと厳しさがあることを知りました」。

ボランティア活動で「受容性」と「ねばり」が培われる

新入生ボランティアガイダンス(毎年4月、たくさんの新入生が参加)
新入生ボランティアガイダンス(毎年4月、た
くさんの新入生が参加)
大学周辺清掃活動(年4回程度実施、職員有志と学生)
大学周辺清掃活動(年4回程度実施、職員有志
と学生)
明石「時のウィーク」イベント(毎年6月、雨の中で子どもたちのコーナーで)
明石「時のウィーク」イベント(毎年6月、
雨の中で子どもたちのコーナーで)

川口さんの現在の仕事は、ボランティア支援室のボランティア・コーディネーター。ボランティアを希望する学生とじっくり話し合いながら、その人に合った条件・内容の具体的なボランティア活動へとつなげていく。支援室として心がけているのは、本格的に活動している学生だけでなく、興味はあるものの、どんなボランティア活動をすればいいかわからないという初心者でも気軽に訪れることができる場づくりだという。「ボランティアは一般的にイメージされているような善意の活動というより、自分自身が楽しいと思えることをする自発的な活動です。そういうスタンスで関わると面白いし、続きますし、得るものも多い。自然にボランティア活動に熱中していくことになると思います」。

神戸学院大学は「ボランティアを神戸学院の文化に!」というキャッチフレーズを掲げており、実際、卒業までに約3割の学生が何らかのボランティア活動を体験しているという。川口さんに、大学時代にボランティア活動に関わる意味を問うと、「行った自分と、行かなかった自分は絶対に違うはず。僕自身も活動のなかで、人に対する『受容性』や『ねばり』を学びました。ボランティアの現場では相性が良くないと感じる人にも出会います。そこで逃げずに、ねばらないと本当の信頼関係は作れません。ボランティア活動を通じて得られるものは、人間関係などの『きずな』を作る能力だと思っています」。地域や家族の関係が希薄になり、人と人が支え合える地域や制度づくりが重視されている今、「ボランティア活動を通じて、密な人間関係を伴う新しいコミュニティのあり方を考え、それを実現しようとする学生が多く社会に巣立っていってほしいですね」。

プロフィール

1988年、関西学院大学社会学部卒業(専攻、社会福祉学)。88年に社会福祉法人(当時、社団法人)大阪ボランティア協会に入職。ボランティア関連のテキスト、情報誌の編集業務、研修会企画等を歴任した。2003年、大阪大学人間科学部博士前期課程修了(ボランティア・NPO論)。2005年、神戸学院大学に事務職員として着任(ボランティア活動支援室担当)。非常勤講師として帝塚山学院大学、大阪人間科学大学、神戸学院大学でボランティア論、地域学を担当してきた。

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