2010年3月
2009年度 神戸学院大学学位記授与式
2009年度 神戸学院大学学位記授与式
岡田 芳男 学長 挨拶
卒業おめでとう
本日ここに2009年度神戸学院大学学位記授与式を挙行するにあたり、ご来賓の皆様にはお忙しい中をご列席いただきありがとうございます。また、この授与式に列席していただいております保護者の方々に対しても心から感謝申し上げます。
ただいま学士の学位記、修士の学位記、法務博士の学位記および博士の学位記を授与された皆様に心からお祝いを申し上げると同時に、皆様の努力の継続に敬意を表します。また、今日まで長きにわたってお子様の成長を見守り、経済的、精神的な支援をしてこられました保護者の皆様に対してもお喜びとお祝いを申し上げます。本当にご苦労様でした。
各学部において優秀な成績をあげた学生、課外活動において全国的な活躍をした学生、さらに人命救助をした学生に対し学長賞が贈られました。また、4年間の課外活動を通して多くの成果をあげた学生に対し、教育後援会会長と同窓会会長から賞が贈られました。受賞された皆様の地道な努力と精進の継続、さらに他人を思いやる気持ちに触れ感激いたしております。また彼らとともに学び、課外活動ではともに汗を流し彼らを支えてきた学友にも心から拍手を送ります。
皆さんは「真理愛好・個性尊重」という素晴らしい建学の精神のもとで大学生活を送りました。学びや研究の中で何が真実なのか、日常の生活の中で何が真実であり、正義なのかを常に追求し、自己を主張すると同時に他人の個性を尊重するという基本的精神を培われたことと思います。きらきらと輝く自信に満ちた皆さんの顔を拝見して頼もしく思っています。また、皆さんは阪神・淡路大震災15周年の年に卒業されます。皆さんの中には震災を経験された方もいらっしゃるでしょう。あの震災の時には、自主的に助け合い、ボランテイア活動が生まれました。災害時における、お互いの助け合いや思いやりの大切さを経験しました。その経験は、日本全国に広がり、また世界にも広がっています。神戸学院大学の学生たちの活躍もしばしば報じられ、嬉しく、誇りに感じているところです。
現在本学の卒業生は6万3千人を超え、全国に17の同窓会支部が設立されています。卒業生は国内はもとより、国外でも目覚しい活躍をしています。皆さんは神戸学院大学の卒業生であることに自信と誇りを持って先輩と同様の活躍をしてください。
さて皆さん、在学中の大学生活や社会の動きを振り返ってみましょう。全国から集まっている皆さんは入学の時から日を増すとともに友人の数も増え、彼らと苦楽をともにしてきました。日々の講義はもとよりゼミでの討論や、卒業論文作成のための研究に時間を費やしたこともあったでしょう。課外活動における先輩や後輩との付き合い、自己の力の限界を乗り越えるための日々の修練を思い出すでしょう。入学時の自分と比べて人間的成長を自分に見つけることが出来ると思います。入学以来自分探しをしながら、自己を研鑽し就職活動にも力を入れてきたことと思います。
また、大学卒業後大学院修士課程や博士課程に進学し、自分で課題を見つけ関係論文を読み、厳しい研究活動に没頭したことを思い出すことでしょう。これからはそれぞれの分野で培った力を発揮して活躍し、更なる知の発見と創造に努めてください。実務法学研究科を修了された皆さんは司法試験に向けて頑張ってください。そして、法を守り、人権を守る活動に貢献してください。
皆さんにとって忘れられないことは新型インフルエンザの発生です。2009年5月神戸市に新型インフルエンザ患者が発生しました。国内初の発生でもあり、厳しい対応が迫られました。1週間の休校、課外活動の自粛などがありましたが、皆さんの冷静な対応のおかげで、大きな混乱もなく、今収束に向かっていることは喜ばしいことです。
例年になく厳しい問題が皆さんにのしかかってきております。2008年にアメリカで発生した経済不況は瞬く間に世界に波及し、日本もそれに飲み込まれてしまいました。世界的な雇用の不安定さは日本もその例外ではありません。今春卒業の大学生の就職内定率は就職氷河期と呼ばれた2000年の率を下回っていると報じられています。皆さんや大学に課せられた大きな試練ですが、立ち向かっていかなければなりません。大学はその試練の打開に努力を続けています。皆さんもその打開に努力してください。双方が努力することにより成果は大きくなることでしょう。いまだ就職内定が得られていない方は卒業後も大学、特にキャリアセンターを訪ねてください。諦めず、粘り強くともに行動しましょう。
同様に国内外に大きな動きがありました。2009年1月にアメリカではオバマ大統領が就任しました。彼は就任演説で「Change」を強調しました。彼がプラハ演説で、世界の「核廃絶」を訴えたのも「Change」のひとつでしょう。現在世界的な核の脅威を抑止しているのは核の力であることは否定できません。世界の「核廃絶」の道のりは遠いかもしれませんが、まず一歩を踏み出すことが肝心ではないでしょうか。
2009年8月に行われた衆議院選挙において民主党が第一党になり政権交代が実現しました。皆さんを含めた国民の力が政権交代を実現したのです。皆さんは1票の権利を持つとともにその結果に責任を負わなければならないことを実感したことでしょう。鳩山首相は施政方針演説の中で「命を守る」ことを繰り返し述べています。掛け声だけに終わるのではなく実現させなければなりません。やるのは鳩山総理ではなく国民であることを自覚して下さい。
今、私たちは程度の差はあるものの、安心して豊かな生活を送っています。ここに到達するまでに先人たちの並々ならぬ苦労がありました。第二次世界大戦では多くの若者の尊い命を犠牲にし、敗戦で幕を閉じました。荒れ果てた戦後の復興は日本人の勤勉さがそれを可能にし、豊かな日本を作り上げ、私たちに残してくれました。少ない食料を分け合い、お互い助け合ってきたのです。豊かな日本を受け継いだ私たちは世界から尊敬される重厚な日本を後世に残さなければなりません。そのためには日本人一人ひとりが日本人としての誇りを失うことなく身の回りから、基本的マナーを守りモラルの向上に向けた行動をとらなければなりません。しかし社会の動きに目を向けると、自己の利益や幸せのみを追求するあまり、種々な問題が生じています。法の目をくぐりぬけ臓器移植に必要な臓器売買が行われています。いろいろな分野で偽装問題が発生しています。最近、若い両親による児童虐待や、病院でのお年寄りに対する虐待が報じられています。大麻などの薬物乱用事件も後を絶ちません。しかし、暗い出来事だけではありません。JR駅での身を呈しての人命救助が報じられました。今日表彰されました池山諒太君の行動も勇気あるものです。先日開催された冬季オリンピックにおける主役は、はつらつとした若者でした。若者の力なくして社会は成り立ちません。皆さんが進む社会の各分野で皆さんの力が期待されています。グローバル化社会の中の日本は伝統的な文化を守りながらも新しい社会に適応していかなければなりません。日本人もまた、毅然とした伝統的精神を受け継ぎつつ、国際人へと変わっていかなければなりません。皆さんの力がそれを成し遂げるでしょう。いつの世にも「我々の若いころは今の若者に比べてもっとしっかりしていたのに」という言葉がささやかれます。2500年前もそうだったのでしょう。「論語」の中に「子曰く、後世畏るべし。いずくんぞ来者の今に如かざるを知らんや。」と言う一節があります。「若者を侮ってはいけない。これからの人が今の自分たちに及ばないなどと、どうしてわかるものか。」という意味です。皆さんの力は無限です。先輩の力を追いこし、社会に貢献し美しい地球を子孫に残してください。
2007年4月にポートアイランドに新キャンパスを開設し、法、経済、経営学部の3、4年次生、薬学部2年次生以上が学んでおります。神戸学院大学はマザーキャンパスであり、地域コミュニティ型キャンパスである有瀬キャンパス、都市型のポートアイランドキャンパス、法曹人を養成する長田キャンパスの3キャンパスで教育研究活動を展開する「新生神戸学院大学」が発足して満3年が経過しました。それぞれのキャンパスの特徴を生かし、連携しながら神戸学院大学を発展させていきたいと考えています。そのひとつとして今年4月から薬学部では1年次生からポートアイランドキャンパスで学ぶことになります。君たちの母校、神戸学院大学は休むことなく前進していきます。
いよいよ大海原への船出です。日々平穏であるとは限りません。卒業後も神戸学院大学を利用してください。そして、神戸学院大学の発展に向けて忌憚のない意見をお寄せ下さい。皆様の健康と発展を祈念して告辞といたします。