―2022年の年頭にあたって―フロントライン

学長からの新年のメッセージ 社会から必要とされる存在価値の高い「後世に残る大学」を目指して 神戸学院大学 学長 佐藤雅美

年頭にあたり、謹んで新春のお慶びを申し上げます。
本年もコロナ禍の影響により、先行きがなかなか見通せない状況の中で新年を迎えることになりましたが、皆様にとりまして本年が素晴らしい1年となりますことをお祈り申し上げます。
この2年近くの間、コロナ禍の影響によって、高等教育の意義や大学の存在価値が問われてきました。本学があるべき姿として掲げている「学生が成長を実感できる大学」は、神戸学院大学の存在価値を示す重要な指標となります。コロナ禍において、オンライン授業を活用しながら各学部の学びを維持してきましたが、今後はポストコロナに向けて、さらに教育の質が問われてくることになります。
昨年は大学が55周年を迎え、本年は学校法人神戸学院が110周年を迎える中、今後も「社会から必要とされる存在価値の高い大学」、初代学長・森茂樹博士がモットーとして挙げた「いつの世にも後世に残る大学」を目標に、さらなる進化を目指してまいります。
なお、3月末をもって2期目の任期満了となるため、私がこのような形で新年のご挨拶を申し上げるのは、今回が最後となります。大学を進化させるために、今年度内に実行すること、この5年余りの間に進めてきた施策や策定してきた方針などを基に、次期学長に引き継ぐべき事項の主なものを示しておきたいと思います。

1 「第2次中期行動計画」から「第3次中期行動計画」へ

本学が社会から信頼されるうえで重要な中期計画として、2018年度から実行に移してきた「第2次中期行動計画」が2022年度をもって最終年度を迎えます。この中期計画は学校法人神戸学院として実施しているものですが、神戸学院大学では「教育」「学生支援」「研究」「社会貢献」「大学運営」という五つの柱についてそれぞれ中期計画を詳細に定め、PDCAサイクルを回しながら不断の改善を重ねることによって着実な進化を図っています。本年は、この「第2次中期行動計画」の仕上げの年になるとともに、次期中期計画である「第3次中期行動計画」を策定する年にもなります。
また、次回の大学基準協会による認証評価に向けて、大学としての質保証システムの方針・体制・手続きについて年度内に規則整備を完了します。次年度からはこれを実施に移し、実績を作っていく必要があります。
なお、「長期ビジョン策定ワーキンググループ」の議論を踏まえて、法人130周年、大学75周年を迎える時期となる2040年ごろを見据えた長期ビジョンを年度内に策定する予定です。これは、「第3次中期行動計画」の策定にあたっても指針になるものと考えています。

2 大学創立60周年に向けた有瀬キャンパスの整備について

大学の進化にとって、キャンパス環境の整備は重要な柱です。「神戸学院大学キャンパス整備基本計画2018-2028」に基づき、2019年9月にポートアイランド第2キャンパス(KPC2)を開設しました。同基本計画に基づき、大学創立60周年の2026年完成を目指して、有瀬キャンパスの老朽化した複数の校舎に替わる新館(仮称:新1号館)の検討・基本設計が今年からスタートします。計画の確実な実現に向けた重要な年となります。

3 学生支援の強化と連携について

多様な問題を抱える学生の相談窓口として、コロナ禍の中で重要な役割を担っている「学生の未来センター」、障がい学生支援体制検討ワーキンググループの答申をもとに設置した「障がい学生支援室」、従来から重要な機能を果たしている「学生相談室」などによる学生支援の強化を図ります。そして、これからのキャンパスの多様性に対応するためには、これらの部門間の実質的な連携を図ることが重要になります。

4 データサイエンス教育プログラムのスタートに向けて

いわゆるSOCIETY5.0時代に向けての教育プログラムとして、2023年度には全学的なデータサイエンス教育がスタートします。2022年度から共通教育科目としてデータサイエンスの基礎科目を開設して文科省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」認定を目指します。2023年度には経営学部に「データサイエンス専攻」を設置し、データサイエンスを駆使できるビジネスパーソンの育成を目指します。また、いくつかの学部では、データサイエンスに関する単位取得の認定制度を導入する予定です。

5 ポストコロナに向けた国際交流の推進

コロナ禍によって最も甚大な影響を受けた国際交流ですが、学生の成長には重要なプログラムです。厳しい環境の中で、「オンライン留学」や「オンライン・グローバルセミナー」など、新たな交際交流の手法も生み出されました。しかし、今後は、コロナの収束に向けて、交換留学などの長期留学や短期の海外研修のプログラムの再開を図る必要があります。

6 学生参加型の社会連携・地域貢献活動の推進

本学では学生の成長のためのプログラムとして、自治体、企業、地域などとの連携のもとに多種多様な社会連携・地域貢献活動を展開してきました。コロナ禍の中で制限されてきた活動の再開やポストコロナに向けて新たなプログラムの開発を推進することは、本学の存在価値を高めるうえで重要です。
また、高い評価を得ている本学のボランティア活動もコロナ禍の中で大きな制限を受けてきました。学生の活力を適切に活かすように「知恵と工夫」によって推進する必要があります。

7 社会や地域の課題解決に向けた研究の推進

本学では三つの寄付研究講座はもとより、社会や地域の重要課題に取り組む研究において、学会での受賞、外部競争資金の獲得などで成果を上げています。本学の存在価値を高めるうえで、社会的に注目度の高い研究の推進や研究内容の社会への発信にも力を入れていく必要があります。

8 男女共同参画のさらなる推進

今年は「神戸学院大学男女共同参画推進宣言」の公表から5年となります。また、「神戸学院大学男女共同参画推進計画2018-2022」の最終年度を迎えます。この間、推進計画に基づいて、多様な取り組みを展開してきましたが、推進計画の検証と新たな推進計画の策定は重要な課題となります。

9 ブランド力醸成に向けて

本学が「存在価値の高い後世に残る大学」となるには、「神戸学院ブランド」の醸成が必要です。2019年度から広報委員会の下に「ブランド力醸成ワーキンググループ」を設置し、構成員による本学の社会的評価の共有、本学の歴史と現状についての共通認識の醸成、各学部の強みと課題の共有などの施策を進めてきました。これに関連して、本年3月には校祖・森わさの生涯、初代学長・森茂樹博士の歩みなどを中心にした『神戸学院物語』を法人110周年事業の一つとして神戸学院出版会から公刊する予定です。

以上は、本年に推進すべき課題の一部です。これらについては中村恵新学長に丁寧に引き継ぐとともに、新学長が「社会から必要とされる後世に残る大学」に向けて新たな施策を展開されることを期待したいと思います。
本年も、皆様のご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

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