―2021年の年頭にあたってのご挨拶―フロントライン

学長からの新年のメッセージ 「成長を実感できる大学」「存在価値の高い大学」を目指して~ニューノーマル時代の大学の在り方を追求しつつ~ 神戸学院大学 学長 佐藤雅美

2021年の年頭にあたり、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年、2020年は、コロナ禍に翻弄された1年でした。本学においても2月20日に危機管理対策本部を立ち上げ、それから昨年末までに42回の会議、120時間を超える時間を新型コロナ対策に費やしてきました。大学創立55年目にして初めて、学位記授与式、入学式が中止になり、2020年度前期はほとんどが遠隔形式(オンライン授業)、後期は対面と遠隔の組み合わせによるハイブリッド形式の授業によって学びの継続を実現してきました。しかし、交換留学や長期留学などの国際交流はストップ、本学の特色である課外活動、ボランティア活動、社会連携活動なども思うようにできない歯がゆい日々が続きました。
そのような中、世界で日本語を学ぶ学生のための「神戸学院大学グローバルセミナー2020」をオンラインで開催するなど、ハイブリッド環境を活かした活動も増えてきています。また、長年の念願とされてきた「神戸学院大学出版会」が11月に設立され、2020年度内には9冊の研究書、教科書、教養書などの書籍が公刊されます。
本年もウィズ・コロナ、アフター・コロナのニューノーマル時代に向けて、大学の存在価値が問われ続けることになります。私の任期は2021年度が最後になりますが、コロナ禍への対応に追われて思うように進展させることができなかった課題を含め、次期に引き継がれるべき課題を着実に進めていきたいと考えています。

1 長期ビジョンの策定

昨年は十分に進めることができなかった課題ですが、現在、将来ビジョン担当副学長を中心に「素案」から「原案」への作成作業を行っています。原案が固まり次第、時機を見て中堅・若手世代の教職員の参加を得て、練り上げていき、9月ごろには中教審の答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を意識しつつ、大学創立75周年と法人設立130周年が交錯する2040年ごろを見据えた将来ビジョンを策定する予定です。次期中期行動計画の策定や今後の具体的な施策を考える上での道標として、次期学長に引き継いでいきたいと考えています。

2 キャンパス整備基本計画2018-2028の推進

この基本計画に基づき、ポートアイランドキャンパス(KPC)については2019年9月にポートアイランド第2キャンパス(KPC2)が開設されました。KPC2には、課外活動の新たな拠点、広報・社会連携の拠点、学生の未来センター、教職教育関係施設、神戸学院大学出版会事務室など、多様な機能が盛り込まれました。有瀬キャンパス(KAC)の整備については、コロナ対応での財政状況も再確認しながら、基本計画の枠組みの中でニューノーマル時代にふさわしい教育施設の建設計画を進めていくことになります。本学発祥の地であり、三宮以西では県内最大規模の大学キャンパスであるKACの存在感を高めて、その魅力の強化に寄与していくこととなります。これについては早急にKAC所在の学部を中心に具体的検討に入ります。

3 ハイブリッド教育環境の整備

2020年度の授業運営で最も苦労したのが、ネットワーク環境の脆弱性でした。これは本学に限ったことではなく、全国の多くの大学が直面した悩みでもありました。本学では 2021年度の授業方針について、対面授業を基本に組み立てることにしていますが、大規模講義や教育効果が期待できる科目は遠隔形式で実施されます。また、対面授業においても LMS(オンラインでの学習支援システム)の活用が推進されることになり、ネットワーク環境の整備はニューノーマル時代においてますます重要になってきます。合わせて、Wi-Fi環境やLMSの充実も進めていきます。

4 5つのワーキング・グループ

2020年には以下の5つのワーキング・グループの作業が進められてきました。すなわち、①大学院再編検討ワーキング・グループ、②データサイエンス教育プログラム検討ワーキング・グループ、③障がい学生支援体制整備ワーキング・グループ、④リカレント教育検討ワーキング・グループ、⑤ブランド力醸成ワーキング・グループ、です。
このうち、①と②はまもなく答申が出され、③と④は年度内に答申が出される予定です。⑤については、全学の広報委員会の下で活動を継続していく予定です。
これらのワーキング・グループのテーマはいずれも今後の本学の発展にとって重要なものばかりです。それぞれの答申の内容を精査しつつ、実行できることから実現していきたいと考えています。

5 神戸学院大学出版会の設立、研究支援の推進など

前述したように、本学の新たな研究・教育成果の発信拠点として、昨年11月に神戸学院大学出版会を立ち上げました。年度内に出版される9冊の書籍に加えて、2021年度にも少なくとも数冊の研究書、テキストなどを発行できるように事業を推進します。
大学ホームページで「神戸学院大学の研究力」として紹介された三つの寄付研究講座をはじめ、本学では社会に貢献する研究が数多く推進されています。これらを支えるためにも科研費の申請にかかわる支援、私学助成などの獲得、新たな研究プロジェクトの発掘などを進めていきます。

6 学生の成長に繋がる学部横断的な「教育」の推進

神戸学院大学は文理10学部を擁する総合大学です。その強みとして、学部の枠を超えた学びや活動のステージがあることが、総合大学ならではの学生の成長の場となっています。医療福祉系4学部6学科による「専門職連携教育(IPE)」、文系5学部対象の「スポーツサイエンス・ユニット」、全学部対象の「神戸学院カレッジ(スーパー・イングリッシュ・クラス)」などは学部横断型の正課のプログラムとして今後も推進していきます。
他方、「授業は大学教育の一部である」といったフレーズを多くの大学人から耳にします。すなわち、正課授業だけでなく、国際交流、ボランティア活動、課外活動、社会連携活動など、多様な学部の学生が交流するプログラムが広い意味での大学「教育」にとって重要な意味を持つということです。文理総合大学である本学でも、これらのプログラムをハイブリッド環境の中で「知恵と工夫」によって推進していくことが学生生活の充実を図るうえで重要な意義を持つと考えています。

7 学生の成長を支える「三つの協働」と建学の精神

これまでの常識だけでは通用しないニューノーマル時代において、本学が真の意味で「学生が自らの成長を実感できる大学」であるためには、「教職協働」(教員と事務職員の協働)、「学部間協働」、「部署間協働」の「三つの協働」の実践が不可欠です。大学全体で学生の成長を支えるには、あらゆる壁を乗り越えて連携・協働する必要があります。そして、建学の精神「真理愛好・個性尊重」を再認識して、その実践を「学生の成長」につなげるには、職種、学部、部署の壁を乗り越える必要があります。本学が「存在価値の高い大学」として、「後世に残る大学」(初代学長・森茂樹博士のことば)になるには、「三つの協働」の実践は欠かせないと考えます。

8 男女共同参画推進計画の継続実行

2018年から実行に移している「神戸学院大学男女共同参画推進計画2018-2022」の継続的実行も重要な課題です。それは、男女が共に快適な学修環境、職場環境の実現に向かうことを意味します。働き方改革の実践も課題となりますが、学生と教職員が共に男女共同でモチベーションを保てる環境を整備していくことが肝要であると考えています。

以上に挙げた項目以外にも、課題は多数残されています。コロナ禍を通じて全国の大学が大きな変化の中に置かれており、本学も例外ではありません。また、すでに進行している少子高齢化、グローバル化、AIやIoTなどの技術革新による社会の変化への対応も求められています。そのような状況を「知恵と工夫」によって乗り越えつつ、「成長を実感できる大学」「存在価値の高い大学」そして「兵庫・神戸を代表する大学」として評価されるように地道な努力を積み重ねることが本年においても重要な課題であると認識しています。
なにとぞ本年も神戸学院大学へのご理解・ご支援を賜り、よろしくご指導、ご鞭撻のほどをお願いいたします。

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