薬学部長・薬学研究科長・食品薬品総合科学研究科長 福森 義信
薬学部長・薬学研究科長・食品薬品総合科学研究科長 福森 義信
臨床薬学の新しい展開
2009年の迎春、謹んでお祝い申し上げます。
神戸学院大学薬学部が開学してまもなく37年になります。今日まで充実した歴史を刻むことができたのは、大学関係者、諸先生方や卒業生のご尽力とご支援のおかげと感謝しています。創設期からアメリカの臨床薬学の新しい展開に着目し、その紹介と日本での実践に勤めてきた本学としては、薬学部6年制への移行は大いに歓迎すべきものと考えています。
この23年の間に薬学部は大きな変革の時代を迎えました。薬学教育6年制への移行、ポートアイランドへの移転、教育研究組織の改変です。この10年来の薬学の教育や研究への関心から薬学部や薬科大学の新設が加速し、過当競争の中での新たなスタートとなりました。
質の高い臨床薬剤師の育成を目指して、本学薬学部も2006年度入学生から1学科6年制へと移行しました。これに伴い、教育内容の全面的な改革を行い、教育方法の見直しや、ヒューマニティ教育、臨床実務教育の強化を、ポートアイランドキャンパスで開始しました。本年はその1期生が4年次生になり、基礎教育や事前実務実習の成果が試されるCBT(コンピュータ利用試験)やOSCE(オスキー:技能・接遇能力試験)といった共用試験を受けることになります。この2年間は、新しく整備された薬学部の教育施設で、それらのトライアルを重ねて準備をしてきました。今年はそれらの成果が試されるときです。
この6年制移行に加え、ポートアイランドへの移転、薬学部組織の講座制から部門制への改組を行ってきました。新体制でのポートアイランドでの教育研究活動は、当地での新たな文化基盤の構築に貢献できるものと考えています。これまで、あまりに急激な変化が一度に訪れたための混乱は避けがたいという側面もありましたが、本年は、これら3つの大変革のメリットを最大限に引き出し、将来に向けた調和のある発展をはかる最初の年としたいと考えています。
日本の薬学は、研究のみならず教育においても基礎に傾きすぎていたことは久しく指摘されてきたことです。しかし、これが日本の薬学の持ち味でもあります。ただ、薬学の社会的な役割に対する期待やその研究領域としての関心は、今日、かつてなかったくらい膨らんできています。それらの期待に応えるには、出口である現場を見据えた、基礎力があり、かつ現場で役立つ人材を教育・研究の両面から育成していくことだと考えています。
薬学部の新たな発展にご期待ください。